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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 昏迷胎動
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食事会の後

2026年(令和8年)12月10日【地球北米大陸 ユニオンシティ(旧アメリカ合衆国)所属 復興都市『ネオ・ロサンゼルス』(旧カリフォルニア州ロスアンゼルス)】


 オンライン食事会後、ロイド提督とジョーンズ中将は先ほどの大月家とのやり取りについて話し合っていた。


『……やはり、大月夫妻が日本の新政権から妨害工作を受けているのは明らかな様です。コミュニズムの影響を強く受けた新政権のイデオロギー中心主義は異常と言わざるを得ない』


 紅茶片手に憂い顔のロイド提督。


「代々木に巣食う時代遅れのコミュニストにとって、科学文明社会の著しい発展は従来の政治的価値観を過去の物へと追いやり、自らの統治基盤を揺るがす脅威だと本能的に認識しているからでしょう」


 ロイドに応えるジョーンズ中将。


『大月家と縁の深いマルス・アカデミーをも敵に回すとは、新政権の傲慢というか、無知ぶりがうかがえますね。

 しかも新政権は、太陽光発電システムを大量破壊兵器に転用してアルテミュア大陸の未公認都市部に使用した様です。ユーロピア共和国空軍がジャンヌ首相と共に目撃しています』

憂い顔のロイド提督。


「未公認都市を5万人の中国系住民ごと焼き尽くしたそうですね……なんておぞましい事だ!」


 強烈な嫌悪感から、無意識に両手で自らの身体を抱き締めてしまうジョーンズ中将。


『新政権の人道に対する罪は、いずれ白日の下に晒され弾劾されるでしょう』

ジョーンズに同意するロイド提督。


『佐世保とニューガリアの首脳が黙んまりを決め込む事はないでしょう。恐らく公表のタイミングを見極めているだけでしょう』


「しかし一番憂慮すべきは、日本の新政権を裏で操る存在ですな」


『イスラエル連邦共和国ですか……生き残った人類国家で日本国に次ぐ勢力。……やっかいですな』


 最近では、火星日本列島やアルテミュア大陸東海岸『人類都市ボレアリフ』に避難していた旧合衆国国民が少しずつ地球北米に帰還する動きが出ており、イスラエル連邦が火星から地球への移動を物資や資金面で支援していた。尤も、物資や資金はイスラエル連邦へ日本国政府が行った支援から出ており、う回支援とも言える。


「政治的熟練度と強気の外交に長けたイスラエル連邦にとって、冷戦時代思考の政治素人が集まった日本新政権は与し易いでしょうな。今回の地球来訪で我妻は日本国にとって悪魔の契約を結ぶことに成るかも知れませんね……」


 黒幕とも言えるイスラエル連邦の動向に憂慮する二人だった。


          ♰          ♰          ♰


――――――同日夕刻【地球極東地区 人工日本列島『タカマガハラ』エリア・フジ イスラエル連邦共和国首相官邸】


「日本のアガツマ総理大臣が月面都市『ユニオンシティ』に到着しました。我々との会談準備に10日ほどかけて、此方へ来訪するようです」


 モサド長官がニタニエフ首相に報告する。


「悠長なものだ。地球も火星も日々激動の情勢だというのに。彼はこの情勢について来れるのだろうか?」


 人工富士の5合目に建てられた首相官邸から、トラクターで畑を効率的に耕していく国民と土埃に塗れて鍬を振るう”準国民”扱いの中東各国避難民を見下ろしながら鼻を鳴らして肩を竦めるニタニエフ首相。


 かつての日本列島と同じ緯度に位置している為、人工富士から吹きつける風は冬将軍の到来を告げている。


「さあ?全てはヤハウェイ神のお導きのままでしょう……」


 同じく肩を竦めて応えるモサド長官。


「冗談はさておき、神に全てを委ねるのは人類を導く指導者の怠慢と言うものだ。

 自らの才覚で立たねばユダヤ民族が先導する地球復興と新世界秩序は成し遂げられん。ミスター・アガツマに地球を救う度胸と覚悟があるのか、試させてもらうとしよう。

 日本のシャトルが飛ぶ航路はどうなっている?」


 ニタニエフ首相に訊かれたモサド長官が、執務室のテレビ画面にユニオンシティ宇宙ターミナルに申請された日本国シャトルの航路データを表示してニタニエフに説明する。


「……ミスターアガツマには、この地が未だ戦争と復興の最前線だということを身に染みてもらうとしよう。ルート沿いの敵対勢力は?」


「シャドウ帝国残党の人類統合第11都市『成都』です。真世界大戦では主に宇宙迎撃部隊の発進基地の役割を果たしていました。地上部隊も若干配備されていますが、我が特殊部隊が都市近郊の地下水脈に成長促進剤を投入した為、都市住民のクローン細胞は酸化作用が進行して衰弱しております。迎撃機能は最小限でしょう。

 我々の善意である『成長抑制ワクチン』提供の申し出を拒絶した為とも言えますが……」


「クローン人間の分際で支配者である我らイスラエルに仕えぬから、助かるものも助からんのだ。

 ……シャトル航路はこの都市を掠める様に変更しよう。アガツマにサプライズといこうじゃないか!」


 ニヤリと微笑むニタニエフが、モサド長官にシャトル航路を人類統合都市寄りへと変更させる指示を出す。


 15分後、急遽変更されたフライトプランが、イスラエル連邦軍司令部からユニオンシティ航宙管制室のイスラエル連邦軍将校に代理提出されるのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・大月満=ディアナ号船長。元ミツル商事社長。

・大月ひかり=ディアナ号副長。満の妻。元ミツル商事監査役。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 七七七 様です。


・大月 美衣子=マルス・アカデミー・日本列島生物環境保護育成プログラム人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストは絵師 里音様です。


・大月 結=マルス・アカデミー・「尖山基地」管理人工知能。マルス三姉妹の二女。

挿絵(By みてみん)

*イラストは絵師 里音様です。


・大月 瑠奈=マルス・アカデミー・地球観測天体「月」管理人工知能。マルス三姉妹の三女。

挿絵(By みてみん)

*イラストは絵師 里音様です。


・東山 龍太郎=日本国地球方面特命全権大使兼ミツル商事地球方面支社長。

挿絵(By みてみん)

*イラストレーター 更江様の作品です。


・ジョーンズ=ユニオンシティ(旧アメリカ合衆国)義勇軍司令官。中将。旧合衆国海兵隊司令官。

・ロイド=英国連邦極東軍地球派遣軍司令官。

・ベンジャミン・ニタニエフ=イスラエル連邦共和国首相。

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