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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 変わる世界
244/462

大八車

【地球ユーラシア大陸 旧ロシア連邦 カムチャッカ地区】


 2021年に起きた日本列島の火星転移と、2026年の人工日本列島『タカマガハラ』極東着床で二度に渡って発生した地球規模の地殻変動と天変地異『大変動』に見舞われたカムチャッカ半島は、幾つもの巨大火山が連鎖的に大噴火して到るところで地盤が陥没又は隆起し、第三次世界大戦前の市販地図とは異なった歪な地形になっている。


 故に同半島に点在していたロシア連邦の港湾都市や海軍基地は大地震と大津波、火砕流、火山性有毒ガス、大量の火山灰に覆われて住民は死に絶えて跡形も無いほどに壊滅していた。


そんな変わり果てたカムチャッカ半島中央山脈の険しい斜面を、所々が欠けた巨大なピラミッドを中心とした半径10kmに広がる都市=人類統合第2都市『バンデンバーグ』がゆっくりと西へ移動していた。


――――――一人の少女らしきモノが引く大八車に載せられて。


「ふぃー。守姉!そろそろ交替して欲しいのだぞっ!」


 ”都市1つ分が載った大八車”を引きながら、輝美が額に浮かんだ汗を拭いながら都市中心部に向かって呼び掛ける。


「えー。まだ交替まで30分はあるのですぅ~」


 都市中央部に聳え立つ欠損したピラミッド型建造物の先端付近でゴロ寝していた守美がそのままの姿勢で薄目を開けて応える。


「……ゼエゼエ。だけど守姉、此処は山の斜面がキツイし山頂から噴石やら有毒ガスが流れてくるのを電磁シールドでガードするのとかで消耗してしまうのだぞっ……」


 あえぐように舌をだらりと出しながら守美に訴える輝美。


「もぅ。輝美ちんはまだまだ修行が足りませんねぇ~。仕方ない、ちょっと本気を出すとしますか―――」


 渋々と起き上がりながら文句を言いつつも、腕まくりをしてピラミッドから降りようとした所で、急に動きを止めて灰色の遥か上空を睨む守美。


「守姉!」


 大八車を引いていた輝美も思わず足を止めて空を見上げる。


「……四番目の星で”新たな種”が目覚めたのですぅ」

「……図書室で視た”ワニっぽい”のだぞっ」


 どんよりとした灰色の空の彼方を見つめながら守美と輝美がぼそりと呟く。


「……新たなる試練が四番目の星で起きたね、っと」


 上空から呟きと共に、2対の輝く羽をはためかせて守美の傍ヘふわりと降り立つ黄星 舞。


「「舞姉!」」


「私達も先を急がないといけないのだぞ!っと」


 独特の話し方で呼び掛ける守美と輝美に応えると、足元をとんっと蹴って遥か地上で大八車を引く輝美の元へ移動する。


「お疲れ、輝美ちん。一緒に引けば楽になるのだぞ!っと」


 瞬時に輝美の傍らに現れる舞。


「舞姉ナイスタイミング!」


 思わぬ助けに歓喜する輝美。


「それじゃあ、レッツらゴーだぞ!っと」


 独特の掛け声で大八車を軽く引く舞。


 舞は軽く大八車の引き手に手を添えただけなのだが、巨大な都市を載せた大八車はズズズズと地鳴りを響かせながら火山灰を巻き上げて険しい山の斜面を移動していく。


「わわわ!?」


 建物から降りようとしていた守美が急発進で揺れる都市建物の先端に慌ててしがみ付く。


「守美はそのまま其処でシールドと外敵警戒、それと、突然の揺れに怯える住民のフォローもよろしくだぞ!っと」


 輝美と共に大八車を引く舞が建物にしがみ付く守美に指示する。


「輝美ちんを手伝うよりも面倒くさいですぅ~」


 うんざりとした顔をしつつも、欠損したピラミッドの先端から掌をメガホンのようにして地上へ向けて呼びかけをする守美。


『あ~。あ~テス、テス。

 バンデンバーグ住民の皆さま~。足元が揺れていますが、危ない火山が近くに在るので急いでいるところです。ガードはバッチリ!なので、大船に乗った感じでよろしくですぅ~』


 突然足元が揺れて何事かと住居の外へ飛び出した住民に向け、のんびりとした守美のアナウンスが響きわたる。

 頭上を見上げた住民の目に、ちょうどカムチャッカ最大の火山から噴出した溶岩交じりの噴石が空から降り注ぐ光景が入る。


「うわっ!」「火の玉が降ってくるぞ!」


 思わずその場に両手で頭を守ってその場で蹲る住民達。


 だが、一向に噴石が落下した衝撃や建物に衝突する音が聴こえてこない。恐る恐る両手をおろして再び見上げると、建物の少し上空に薄い緑の幕が都市全体に展開されて落下する噴石をはじき飛ばしている。


「電磁シールド!?なんて強力な……」


 唖然とする黄少佐と住民達。


「ハイホー!今の内に通り抜けるのだぞっ!と」「急ぐのだぞっ!」

駆け足で大八車を牽引する舞と輝美。


 未だ激しい噴火を続ける火山の山腹を見事に通過する事に成功する輝美&舞が引く大八車『バンデンバーグ』だった。


「守姉、そろそろ休憩しよ?お腹減ったのだぞっ!」


 シールドで火山灰に塗れることを防いでいるものの、バテてきた輝美。


「もう少し、あと6日頑張ればオホーツク海を渡りきれるから、ねっ?」


 ニコリと素敵な笑顔で励ます舞。


「う~」「此処を抜ければ何とかなるのだぞっ!と」


 渋々再び前を向いて大八車を引く輝美と舞。


 こうして訪問者三姉妹によって北米大陸西海岸で保護された人類統合第2都市『バンデンバーグ』はユーラシア大陸東部、人類統合第12都市『ハルピン』目指し荒野を進んでいくのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】


・黄星 舞=訪問者。神聖女子学院小等部新任教師。黄星姉妹の姉的ポジション。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様に描いて頂きました。


・黄星 守美=訪問者。神聖女子学院小等部教育実習生。輝美の姉的存在。北米攻略作戦では協力者として参戦した。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター しっぽ様です。


・黄星 輝美=訪問者。神聖女子学院小等部6年生に転入。守美の妹的存在。北米攻略作戦では協力者として参戦した。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター しっぽ様です。

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