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転移列島  作者: NAO
混沌編 人類反攻
204/462

マリネ進撃

。2026年(令和8年)8月17日23時【北米大陸 旧アメリカ合衆国ネバダ州 モハーベ砂漠】


「はいなっ!」


 暗闇の中、背中の羽根を明るく瞬かせながら、与呼島 舞が足元の相棒に合図を出すと、八つの頭を持つ相棒(マリネ)の口から光り輝く図太い荷電粒子の束が吐き出され、此方に向けてレールガンの砲口を向けていた陸上戦艦の横腹を貫く。


 8本の極太な荷電粒子の束に貫かれた陸上戦艦は、水素燃料タンクごとエンジン部分を艦外まで吹き飛ばされると、動力を失ってその場で停止した。

 奇跡的に弾薬庫への誘爆は避けられた様だった。


「あらら、やり過ぎて仕留めそこなったのだぞ!っと」

挿絵(By みてみん)

 てへぺろと舌を出して自分の頭を小突く舞。


「スネイクさん。後は任せたのだぞ!っと」


 後方からついて来ていた、自衛隊偵察警戒車の方を向いてOKサインを出す舞。


 気持ちを切り替えた舞は、八つの頭を持つ"相棒"のマリネと共に、擱座した陸上戦艦の脇を通り過ぎると更に前進し、後退するシャドウ帝国軍防衛部隊を追撃していくのだった。


「こちらライチョウ。"訪問者"の助力に感謝する。後は任された!」


 陸ガメと形容される車体に幾つもの貫通痕を晒し擱座した陸上戦艦にゆっくりと接近する、陸上自衛隊第7師団の87式偵察警戒車。


 偵察警戒車の後方には、89式装甲戦闘車が散開して陸上戦艦の砲台に30mm機関砲の狙いを定めて警戒している。


 やがて89式装甲戦闘車の後部扉が開くと、完全武装のレンジャー部隊が素早く降車し、陸上戦艦へ駆け寄る。


 先頭の兵士が陸上戦艦の横腹に空いた貫通痕から内部を伺うと、後方の仲間に問題無いとの合図を出す。隊員が貫通痕内部へ閃光手りゅう弾を投擲すると、眩い閃光と共に聴覚を麻痺させる轟音が陸上戦艦内部から響く。


『こちらミミズク。これより陸ガメに突入する』


 貫通痕から次々と陸上戦艦内部へと突入していくレンジャー部隊隊員。 

 

 陸上戦艦内部へ突入したレンジャー部隊は、手筈通りに艦橋、機関室、レールガン砲台へと分かれると暗闇の中、非常用の赤色灯が弱々しく灯る艦内通路を突き進む。


「こちらライチョウ。ミミズク、状況を報告せよ」


偵察警戒車の車長が、陸上戦艦内部に突入したレンジャー部隊へ呼び掛ける。


『こちらミミズク。通信状態良好。陸ガメ内部—――—――機関室、砲座、格納庫、艦橋を含む大部分の調査を終えた。生存者は、居ない。どうやら、全員溶解したようだ……』


 ミミズク部隊員のヘルメットに装着した赤外線カメラが、陸上戦艦内部の床に点々と拡がる水溜りと、そこに散乱する濡れた軍服を映した画像をライチョウへ転送する。


「……了解した。戦艦内部の操作機器からシステムへの侵入は可能か?」


『此方の装備では不可能だ。単純な電子システムだけで構成されていないと思われる。おそらく、マルス・アカデミーも関係していると思われる』


 艦橋の制御卓を調べていた、ミミズク隊員が応える。

 

「マルス・アカデミーだと!?どういう意味だ?」


『此方の制御卓に表示されている文字はおそらく、地球人類のものでは無いと思われる』


 ミミズクのカメラが、陸上戦艦内の端末画面を映し出す。

 87式偵察警戒車の車長が陣取るモニターには、およそ地球人類の物とは思えない、文字でも数字でも無い、不可思議な幾何学模様としか表現出来ない文字列が表示されていた。


「お手上げだな……。戦艦の機能を何とか再稼働できないか?」


『機関部と思しき場所が、ヤマタノオロチが派手に撃ち抜いたせいで動力炉が消滅している。しこたま電源車を用意しない限り、再稼働は不可能だ』


「ミミズク、ご苦労だった。これから本隊が進撃を再開する。此方へ戻って次の任務に備えてくれ」


『ラジャ、ライチョウ』


「司令部へ、こちらライチョウ。陸ガメの無力化を確認。繰り返す、陸ガメの無力化を確認した」


 偵察警戒車の車長が鷹匠少将の居る司令部へ報告する。


『こちらロッキー1。ライチョウの報告を確認した』


『ロッキー1から全部隊へ。進撃を再開せよ!』


 鷹匠少将が第7師団の進撃再開を指示する。


 黄星 舞&マルス生物"マリネ"に機関部を破壊されて沈黙した陸上戦艦の脇を、振り積もった火山灰を巻き上げながら、10式改戦車や21式電磁戦車が次々と通り過ぎて行く。


†††


――――――同23時30分【人類統合第1都市『エリア51』地下司令部】


 薄暗い地下司令部内の戦況を映すモニター画面が、自陣営を護る様に展開した青色の味方部隊を示す光点が次々と消え、代わりに敵を示す赤色の光点の群れが、じりじりと自陣営に迫る様子を刻々と表示している。


「反乱軍部隊、間もなく都市外郭防衛線を突破します」

「第7都市『フェニックス』の全部隊を北上させて此方へ回すんだ」


 サングラスをかけた防衛部隊司令が爬虫類兵士へ指示する。


「司令。第7都市との通信回線が途絶しています」

「地中ケーブルは?」


「応答有りません」

「第7都市所属部隊へ直接連絡出来んのかね?」


「五大湖方面から侵攻した反乱軍の電波妨害が酷く、通信不能です」

「致し方ない。直ちに統合第1都市学徒部隊を敵正面に投入して時間を稼げ。

 その間に最終防衛拠点はBC兵器弾頭を準備。そして、ニュートロン施設のダグリウス主席に連絡を」


 エリア51攻防戦は佳境を迎えようとしていた。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました


【このお話の登場人物】

・黄星 まい=訪問者。神聖女子学院小等部新任教師。黄星姉妹の姉的ポジション。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様です。


・鷹匠=地球連合防衛軍 北米大陸攻略作戦司令官。日本国自衛隊地球派遣群司令。准将。

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