表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移列島  作者: NAO
混沌編 人類反攻
201/462

学徒出陣【後編】

2026年(令和8年)8月17日【北米大陸カリフォルニア 東方沖50km 地球連合防衛軍 欧州抵抗派遣部隊 旗艦『レナウン』CIC】


「海岸防衛線の抵抗激烈」

「思った以上に対空兵器を所有していますね」


「海岸拠点後方から敵増援が出現」

「これが基地に居る敵戦力全てでしょうか……対空陣地の目を引きつける事には成功したみたいですね」


「よし、WB21は海岸線から撤収!VLS(垂直発射筒)開け!巡航ミサイル全弾発射!」


 対空陣地の注意を充分引きつけたと判断したロイド提督が巡航ミサイル攻撃を命令する。


 マンスフィールド級空中戦艦の艦隊がミサイルの一斉発射で白煙に包まれ、白煙の帯がバンデンバーグに向かって伸びていく。


          ☨          ☨          ☨


【人類統合第2都市『バンデンバーグ』 防衛軍司令部】


「敵艦載機撤退していきます」「やったぞ!撃退した!」


 縦長の瞳を細めて敵機後退に歓声をあげる司令部要員。だが、つかの間の歓声を打ち消す様にミサイル警報が司令部に鳴り響く。


「洋上の敵艦隊がミサイル攻撃!数400!」

「全防衛部隊はミサイル迎撃に専念せよ!」


「学生諸君。ボーナスイベントだ。ミサイル全弾撃破に成功したら本日の夕食は食べ放題だ!」

教師役だった少佐が学徒兵を煽る。


『よし!乗った!』『最近食事の量が減っていたから第2都市大丈夫かなと心配していたけど、この訓練の為にわざわざ仕込んでいたなんて、先生も良い性格しているわ』


 歓声を上げる学徒兵達。


「敵ミサイル最終フェーズに入ります!」


「生徒諸君。ミサイルはポップアップ(命中直前に上昇する事)するのでこちらの射撃をかわす事が多い。最初の照準で当たらなければ、弾幕を張るとでも思ってそのまま撃ち続けろ。少なくとも後続ぐらいは防げるだろう」


 海岸砲台とその背後に展開する学徒部隊から対空ミサイルや30mmバルカン砲が打ち上げられて上空から第2都市目がけて飛来する巡航ミサイルを次々と撃墜していく。


「ミサイル撃墜数150!」

「油断するな!まだ残り250!」


 都市に落下するミサイルに搭載する対空ミサイルを全弾尽きるまで撃ち続ける学徒兵の操る対空戦車。


 次々と撃墜されるロイド艦隊のミサイルだったが、その内の数発は都市ではなく、防衛陣地を直接狙ったものだった。

 そのため、夢中で都市上空に弾幕を張る学徒達は、自らの頭上に飛来する巡航ミサイルに気付く事が出来なかった。


 1発の巡航ミサイルが学徒兵部隊が展開する場所の20m上空で炸裂すると、直径10m程の小さな太陽が出現した。

挿絵(By みてみん)

 炸裂した弾頭に搭載されていた燃料が化学反応を起こし急速に膨張、秒速2000メートルの速さで周囲へ拡散していく。


 一瞬の後、噴霧状に拡がった気化燃料が加圧蒸気爆発を起こし、2000度の熱と通常の12倍にもなる猛烈な空気圧が衝撃波となって周囲の全てを薙ぎ倒して焼き尽くしていく。


『やったか!?』

「馬鹿野郎!総員対閃光、対衝撃態勢を――――――」


 教師からの警告が伝え終わる前に、上空から火炎を含んだ通常の12倍に達した空気圧が衝撃波となって学徒兵部隊に襲いかかり、対空戦車のセンサーは焼け焦げて噴き飛ばされ、水陸両用機動戦闘艇や兵員輸送装甲車等軽度の装甲しか持たない兵器は、紙で出来た玩具のように噴き飛ばされて海岸に打ちつけられ、グシャグシャに潰れてしまう。


『メイデー!こちら69034水陸両用機動飛行艇。ダメージを受けて墜落。戦術システムダウンしました……。先生……墜落の衝撃で何かが身体に突き刺さっている様な感覚です……』

ショック状態と思われる女生徒が教師に報告する。


 気化爆弾の衝撃波で墜落した水陸両用戦闘機動艇コクピットが衝撃でひしゃげ、操縦桿が女生徒の腹部を貫通して背中側へ飛び出していた。


「気にするな69034。負傷した時を想定して、脳に微弱な電流を流して腹が負傷した様に痛覚を錯覚させているのだ。

 "そんな事より"機体の兵装を使用する事は可能か?」


 何気ない感じで応答する教師。


『ロケットエンジンは奇跡的に無事ッ……ですが、燃料系統が損傷……燃料が漏れていますッ……』


 痛みに耐えながら報告する生徒。


「……そうかぁ。燃料に電気系統の火花が点火すると”ゲームオーバー”になってしまう。残念だが、ここは一旦電源を落としてリセットだ。回収部隊が到着するまでその場で待機せよ」


 他人事の様な対応の教師。


『……先生。救助部隊が到着するまでの時間は?』

息も絶え絶えに尋ねる生徒。


「回収部隊到着まで30分だ。ミサイルを撃ち漏らしたお前達と同じ様に"ヘマ"をやった者が多数出ている。連帯責任だ。回収されるまで少しの時間その場で反省して過ごせ。通信終わり」


『……』


 腹に操縦桿が刺さった女生徒は、出血が止まらず、急速に顔から血の気が失せていく。


「寒くてだるい。……先生。なんか酷い夢を見ているようです。……シミレーター内の気温もペナルティで下げているのですか?」


 チアノーゼが出ていた生徒は、小さく呟くとVRゴーグルを付けたまま息を引き取るのだった。


 30分後、ピラミッドから飛来した1機のドローンが墜落した水陸両用機動戦闘艇コックピットで死亡していた女性学徒兵の脳髄から戦闘記録と記憶が収められたマイクロチップを取り出して回収すると、墜落した機体から漏れ出る燃料にレーザー光線を当てて発火させて機体を爆破する。


 通信機器やフライトレコーダー等の精密機器が完全に破壊された事を確認したドローンは、次のチップを回収すべく、隣で大破横転している対空戦車の搭乗口へ向かうのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ロイド・サー・ランカスター=地球連合防衛軍欧州抵抗部隊指揮官。英国連邦極東軍中将。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ