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転移列島  作者: NAO
混沌編 人類反攻
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ロッキー

挿絵(By みてみん)


2026年(令和8年)8月16日 2時17分【北米大陸 カリフォルニア沖 マンスフィールド級空中戦艦『播磨』】


「鷹匠司令。北米大陸上空の衛星軌道において『そうりゅう』『サラトガ』『ヴェンジェンス』『ドゥ・リシュリュー』がシャドウ帝国軍と交戦状態に入りました」

通信オペレーターが報告する。


「我々の作戦計画が敵に漏れているのではないでしょうか?作戦の延期を検討すべきでは?」

副官のマードック大佐が具申する。


「いや、この期に及んで延期をするのは意味が無い。我々はあらゆる手段を使ってエリア51を叩かねばならんのだ。これ以上の時間的猶予は、敵に戦力結集を許すだけで益はない」

鷹匠が応える。


「司令。『ドゥ・リシュリュー』『ヴェンジェンス』から、MOAB(大規模爆風爆弾)弾投射準備完了との事です!」


「Z旗掲揚!全攻略部隊に作戦名"ロッキー"を通達。作戦変更なし。全軍予定時刻に行動せよ!」


「了解しました。カウントダウン開始します」


 『播磨』の艦上に”地球人類の興廃この一戦に在り”を表すZ旗が掲揚され、空中戦艦を先頭にした攻略部隊が高度を下げながら、ロサンゼルス沿岸へ向けて前進していく。


          ☨          ☨          ☨


――――――【北米大陸 五大湖沿岸 旧シカゴ付近 マンスフィールド級空中戦艦『マンスフィールド』】


「ジョーンズ中将。攻略作戦司令部から"ロッキー"発令されました」


「よし。オンタリオ湖に潜っている戦略原子力潜水艦『オリバー』に通達、電子戦闘開始!」

挿絵(By みてみん)

 ジョーンズ中将が原子力潜水艦を使って広域電子妨害を作動させる。


「我がユニオンシティ防衛軍上陸部隊を乗せた輸送艦は高度50mまで降下。各艦ワームバスターを発進させて輸送艦を防護せよ!」


 マンスフィールド級空中戦艦から、ロンドン防衛戦やオーストラリア防衛戦で活躍したWB21ワームバスター空中砲台が発進して、上陸部隊を載せた空中輸送艦の前方や側面に展開する。


「諸君。偉大な合衆国ステイツ出身である我々が、偉大な祖国を取り戻す一番手になろうではないか!」


 ジョーンズ中将は五大湖陽動部隊に呼び掛けて拳を握りしめるのだった。


          ☨          ☨          ☨


2026年(令和8年)8月16日午前8時17分【神奈川県横浜市神奈川区 NEWイワフネハウス 大月家】


 朝食後のひと時、リビングでまったりする大月家一同。

 美衣子と結、瑠奈はデザートの黄桃缶詰にかぶりついていた。


「ん~。この甘酸っぱい味とシロップは、良く冷えた黄桃缶ならではの豪華さなのです」

満の隣に座るひかりも満足そうに黄桃にかぶりつく。


 リビングの壁に掛かる薄型テレビではNHK朝の連続テレビ小説が流されていたが、不意に画面が報道スタジオに切り替わった。


『地球連合防衛軍司令部発表。本日未明、日本国自衛隊は地球北米大陸に於いて、反攻作戦に入れり――――――』


 既にこうなる事は分かっていた満は他の他の番組を見ようとチャンネルを民放に切り換える。


『—――—――この最終作戦に参加している陸上自衛隊北部方面隊第7師団第2特科大隊は、北海道苫小牧市に駐屯地を拠点とする精鋭部隊であり、隊員の大部分は地元苫小牧出身で—――—――』


 スタジオのアナウンサーが資料映像と共に、作戦参加部隊の情報を伝え始める。

 隊員の出身地情報の他にも地元の観光名所や特産物等、もはや戦争行為とは程遠い情報を視聴者に提供していた。


 別の民放チャンネルでは、興奮した様子の軍事ジャーナリストを自称する男性が得意満面な笑みを浮かべながら第7師団の装備である戦車や重砲、携行兵器を専門用語を交えながら延々と説明していた。


「なんだこれは……これが戦争報道なのか?」

不快な表情で眉を顰める満。


「もきゅ。……戦争をバラエティにするなんて、この列島に住まうヒトは逞しいと言うべきか、平和ボケここに極まるかコメントに困るわ」


 口の中に残る黄桃をもきゅもきゅ味わいながら美衣子が皮肉気に指摘する。


 微妙な表情でテレビを視ていた大月家一同の中で、現在放送中の番組構成を担当した大月家二女の結は部屋の片隅で冷や汗を流しながら桃缶を黙々と食べていた。


「……えっ?これダメなやつ?どうしてこうなった!?」


 火星日本国に溶け込めたと思っていた自分やテレビ局員の感覚が視聴者と異なる事にようやく気付いて愕然とする結だった。

 

          ☨          ☨          ☨


――――――同時刻【地球アジア地区 旧中華人民共和国四川省西部 龍門山脈】


 旧中華人民共和国四川省西部、標高7000m級の山々が連なる高山地帯に開けた僅かな平地にイスラエル連邦軍シェフィールド級空中輸送艦がホバリングしながら舷側のハッチを開放すると、ハッチから垂らされたワイヤーロープを伝って十数名の特殊部隊隊員が機材を背負って地面に降下する。


「急いで降下しろ!あまり時間がかかるとホバリングの振動で雪崩が起きかねん」

アシュリー中尉が部下に降下を急がせる。


 数分で全員が降下すると、空中輸送艦は山脈の西側に沿って西安方面へ離脱していく。

 アシュリー中尉が部下の特殊部隊隊員を岩場の陰に集めると指示を出していく。


「よし。全員分担して運んだ機材は此処に集めろ。1班は巨大ワームを警戒。2班はボーリング機器の組み立て準備を」


「軍曹。衛星からの赤外線レーダーで観測された地下水脈を地中レーダーを使って照合だ。少尉は持ってきた”薬剤”をカプセルにセットしろ」


 1個分隊を引き連れた軍曹がタブレット端末片手に、地雷探知機の様な地中レーダーを操作しながら岩場から移動する隊員について行く。

 別の分隊を指揮する少尉は、背負ってきた小型トランクから薬剤の詰まった容器を別のトランクに入っていたカプセルに注入していく。


「輸送艦が次に戻って来るのは12時間後だ。それまでに地下水脈を探し出してカプセルを設置するのだ!」


 岩場から部下がそれぞれの作業を進めていくのを見守りながら、アシュリー中尉は岩場から眼下の東側50Km先の四川盆地に拡がる中心部にピラミッドを擁した真新しい都市を双眼鏡で観察する。

 龍門山脈から流れ出た雪解け水や地下水が、3つの河川となって都市近くを流れていた形跡が確認できる。地上の河川は大変動で枯れた様に見えるが、地下水脈が存在しているのは衛星調査で判明している。


「山脈の地下水脈が人類統合第11都市『成都』の至近を流れているのならば、此方もやりようは有るという事だ……」


 モサード(諜報特務庁)長官から直接渡された命令書を一瞥したアシュリー中尉は小さく呟くと、更に成都周辺の状況をつぶさに偵察していくのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・大月 満=元ミツル商事社長。

・大月 ひかり=元ミツル商事監査役。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 七七七 様です。


・大月 美衣子=マルス・アカデミー・日本列島生物環境保護育成プログラム人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストは絵師 里音様です。


・大月 結=マルス・アカデミー・尖山基地管理人工知能。マルス三姉妹の二女。

挿絵(By みてみん)

*イラストは絵師 里音様です。


・ジョーンズ=ユニオンシティ軍司令官。中将。

・鷹匠=地球連合防衛軍 北米大陸攻略作戦司令官。自衛隊地球派遣群司令。少将。

・マードック=ユニオンシティ防衛軍大佐。北米大陸攻略作戦における鷹匠准将の副官。元在日ユニオンシティ防衛軍横田基地司令官。

・アシュリー=イスラエル連邦軍特殊部隊中尉。

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