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転移列島  作者: NAO
混沌編 人類反攻
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陸上戦艦

2026年(令和8年)8月15日【北米大陸上空 高度500Km】


 灰色の火山灰に覆われた北米大陸上空を、2機のパワードスーツが地上のシャドウ帝国軍の動きを探るべく偵察飛行を行っていた。


「大尉。ユカタン半島北東を見ろ、海上に大規模な機動部隊が移動中だ。ズームして確認しろ」


「ラジャ。なんですか、あれは?……航空母艦ではないですね。……船?巨大なホバークラフト?」


 ソフィー大尉が地上観測モードで指定された場所をコックピットのモニターに表示する。海上を浮島の様な物体が5~6隻とその周囲に小さな浮遊物体が多数展開している。


「どうやらホバークラフトタイプの陸上戦艦だ。バイコヌール郊外でワイズマン中佐や瑠奈嬢が遭遇したタイプだろう。

 ホバークラフトは海岸上陸に適している事を考えると、メキシコ湾を横断してニューオーリンズに上陸し、ネバダのエリア51支援に向かうかもしれん」

高瀬が陸上戦艦について分析する。


「陸上で巨大戦艦なんて時代遅れもいいとこでは?誘導ミサイルの良い的になりませんか?」


 カリブ海の島々の間を高速で北上する大型戦艦の映像をしげしげと観察しながら、ソフィーが感想を述べる。


「いや、それが意外と有りなんだな。地殻変動と巨大ワーム群の襲撃で荒廃した地上では、固定基地や補給ポイントはもはや数える程しか残っていない。だからといって、大規模な補給車両のキャラバンは非効率そのものだ。

 そこで、補給基地を巨大な移動式プラットホームとして運用し、充分な防御火力を付加すれば、陸上戦艦の出来上がりと言う訳だ」

高瀬が説明する。


 高瀬がソフィー大尉に説明をしていると「サキモリ」AIのパナ子が会話に割り込んだ。


『マスター。お話し中失礼しますですの。広域索敵システムに反応有りですの。

 ユーラシア中央部バイコヌール、南米大陸ナスカからシャドウ帝国宇宙部隊が発進中ですの。軌道計算によると、30分後に北米上空に到達する予定ですの』


「了解。敵宇宙部隊をズームしてちょうだい。んん?……ひっ!?戦闘機に人が憑りついてる!?」


 発進するシャドウ帝国軍宇宙機動部隊の画像を見たソフィーが悲鳴を上げる。ミグ98宇宙戦闘機の操縦席後方と機体中央下部に抱き着く様に装着している人影が確認出来る。


『否定ですのマスター。あれは武装したアンドロイドですの』

冷静な声でパナ子が説明する。


「成る程。戦闘機を改修するよりは、空気抵抗のない宇宙空間で武器を持たせたアンドロイドをパーツとして取り付かせるのは、悪くないアイディアだ」

高瀬が感心する。


「敵を褒めてどうするんですか!?やっぱ、あり得ない装備です。ないわー……」


「……それにしても、攻撃出来ないのがもどかしいですね。自分からみすみす攻略のハードルを上げるなんて、司令部はMっ気が多いにも程があると思いませんか!?」

憤るソフィー。


「下品な発言は慎め大尉。

 作戦の発動命令は出されていない。全軍が同時に行動しないと効果が無いのは分かる筈だ。

 しかし……このままなす術もなく敵の戦力集中を許せば、ソフィー大尉が言う様に、此方の攻略に支障が出かねないな」


 カリブ海を北上する陸上戦艦群がメキシコ湾で新たな陸上戦艦の”群れ”に合流するのを視ながら思わず呟く高瀬中佐だった。


「帰還するぞソフィー大尉。ホワイトピースに緊急通信『バイコヌールとナスカから敵機動部隊が接近中。会敵予想時刻は30分後』」


 背面の水素バーニアを最大出力で噴射して母艦へ帰投する高瀬中佐とソフィー大尉だった。


          ☨          ☨          ☨


【中国東北部 第12人類統合都市(旧中華人民共和国 黒竜江省 ハルピン市)】


 黄少佐はいつも通り、基地手前の屋台で統合人民日報を読みながら朝粥をかき込んでいた。

 統合人民日報は今時珍しい紙媒体である。


「親父、最近粥の塩気が足りない様な気がするが?」

黄が訊く。


「そらそうだよ軍人さん。敵の超巨大要塞が東の海上に着水した影響で、復興途中の上海が大津波に呑まれて壊滅したんでさぁ。おかげで塩を含む海産物全般が、入って来なくなったんでさぁ」

親父が渋い顔で答える。


「配給の塩が少ないのは不味いんじゃないか?都市住民の命に関わる事だぞ?」

眉を顰める黄。


「人間、塩以外にも必要な栄養素が山とあるんでさぁ。しばらくは代用品でしのげますが、その先はねぇ……」

肩を竦める親父。


「お上は北米決戦に全てを注ぎ込んでいるって噂でさぁ。味気ない粥から脱出する為にも、軍人さんに頑張って貰わないとでさぁ」


 しれっとお代わりを要求する黄に苦笑しながら粥を追加する親父だった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ソフィー・マクドネル=ユニオンシティ防衛軍大尉。パワードスーツ『サキモリ』パイロット。17歳、女性。日本国自衛隊特殊機動団に出向中。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・パナ子=機動兵器サキモリ機体制御システム担当人工知能。民間企業PNA総合研究所の人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様です。


・高瀬 翼=日本国航空・宇宙自衛隊 特殊機動団隊長。階級は中佐。乗機は菱友重工が開発した21型パワードスーツ(H21-PS)。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・黄 浩宇=人類統合政府(シャドウ帝国)第12都市防衛軍宇宙機動部隊パイロット。少佐。

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