ファイナルアンサー

２０２６年（令和８年）７月２４日午前８時３０分【東京都港区白銀 神聖女子学院 初等科教室】　

　梅雨も明け、世間の学校では夏休みに入っていたが、初等部教室の一角では真知子先生による"訪問者"三姉妹向け特別講義が行われていた。

　

「ですからっ！お正月の鏡餅は、メロンパンでもコッペパンを重ねたものでもありません！」

額の青筋を立ててダメ出しする真知子先生。

　真知子先生の隣では、美衣子が統括する日本列島生態環境保護育成システムの八百万の神端末の一柱であるトイレ神『花子』が、フワフワと漂いながら呆れた顔で二人を見下ろしていた。

「ええーっ！？それはおかしいのだぞっ！」「神々を祭る神棚には"種のないパン"を重ねて奉げるのが正義ですぅ～」「異議ありなのだぞっ！と」

　あくまでも自分が正しいとばかりに、胸を張る黄星輝美と頷く守美、舞。

「……ちょっとこのポンコツ三姉妹は簀巻きで頭を冷やした方がいいのかもしれない」

教室の後ろからクールに言い放つ、お目付け役の美衣子。

「あらあら、輝ちん、お可愛い事……」

輝美の隣席で頬に手を当ててぷーくすくすと笑う黄星守美。

「どうして他人の振りが出来るのでしょうか？」

守美の背後にいつの間にか立つ真知子先生。

「……守美さん。貴女もですよ？」

「イヤー！簀巻き怖い！」

　抵抗すべく守美が妖精モードに変身する直前、美衣子が素早く紫電を放って痺れさせると、手際良く簀巻きにして輝美の横に並べる。

「さて、ファイナルアンサーよ。クリスマスを祝うその心とは？」

疲労の色が濃い真知子先生が問う。

　

「「「ケンタッキー？」」」

　同時に首を傾げて答える黄星三姉妹。

　次の瞬間、美衣子と花子（神）からほぼ同時に、ひと際鮮やかな紫電が床で足をバタつかせて転がる簀巻きに放たれる。

「「「あばばばば」」」

　紫電が飛び交い、教師達の怒号と教え子の歓声が頻繁に響く阿鼻叫喚スパルタ世紀末教室には、美衣子の自家製遮音シールドが展開されており、珠に近くを通りがかる職員の耳に怒号や歓声は届かず、紫電が放つ綺麗なイルミネーションだけが職員の眼を楽しませているのだった。

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――――――翌日【神奈川県横浜市神奈川区　ＮＥＷイワフネハウス】

　ひかり「あなた。今月の電気代が凄い事に……」

　　　満「最近みんな忙しくてご飯を電子レンジで温める時が多かったからなぁ……」

　ひかり「それはそうなんだけど……１，０００万よ？」

　　　満「……ははは。美衣子、此方へ来なさい……」

　美衣子「……」

　　　満「そう、座って。いやいや、なんで土下座を決めてるの！？」

　神妙な顔で土下座を決める美衣子に、素敵な笑顔？のひかりが尋問する。

　ひかり「美衣子。他に仲間が居るんじゃない？」

　美衣子「……黄星三姉妹と花子」

　黄星三姉妹・花子「「「ためらいもなく巻き込んだよっ！」」」

「よく分かったわ。……それじゃあ、皆いってらっしゃいな」

　瞳の光が消えた凄い笑顔のひかりが、美衣子も含めた黄星三姉妹と花子（巻き添え）を”どこへもドア”の向こう側へ送り出すのだった。

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【神奈川県横浜市中区　横浜港内の海底お仕置き部屋】

「……やっぱりこうなった」

ポツリと無念そうな美衣子。

「なんだ此処は？まっくらなのだぞっ！」

室内を見回す輝美。

「うわー。これが水族館ですか～」

僅かに光を取り入れる天井付近の丸窓から外を見てはしゃぐ守美。

「私は”マリネちゃん”がいればどこでもＯＫだぞっ！と」

部屋の中央で小瓶を抱えて座る舞。

『お前様方、此処はお仕置き部屋ですの』

花子が呆れた様に説明する。

「そういうこと。反省しない限りここからは出られないわ」

真剣な顔の美衣子。

「「「……ええぇ」」」

ドン引きする黄星三姉妹。

　美衣子達マルス人三姉妹以外に初めて解禁された横浜沖東京湾の"海底お仕置き部屋”で暗黒空間の恐怖を味わいつつ、"訪問者"三姉妹は、美衣子が操る日本列島生態環境保護育成プログラム『八百万の神』の仕組みを学び、人類への贖罪方法をようやく真面目に考え始めるのだった。