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転移列島  作者: NAO
混沌編 人類反攻
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バーサーカーモード

挿絵(By みてみん)


2026年(令和8年)7月5日 午前1時【月面都市ユニオンシティから10kmの宇宙空間】


 ソフィーの操るサキモリが、バックパックから推進炎の長い尾を引きながらシャドウ帝国軍艦隊へ突入すると、宇宙戦艦から狂った様に対空機銃や対空ミサイル、レールガンが乱射された。

 サキモリは易々とそれらを回避すると、ガトリングガンや対艦ミサイルを正確に敵戦艦の砲座へ叩き込んで沈黙させ、損害を与え続けていた。


 僅かに生き残った艦隊直援のミグ98宇宙戦闘機が、機銃を乱射しながら、相打ち覚悟で突進して来ても、サキモリは各関節に装備された姿勢制御ガスを利用して、ミグ戦闘機を闘牛士のように躱すと、すれ違いざまにガトリングガンを浴びせて撃墜する。


「凄いっ!この機体、超扱い易いよ!」

感嘆した声を上げるソフィー少尉。


 敵弾を回避する操作と、応射する操作を同時に行うのは本来難しい。

 だが、ソフィーの操る機体は、ターゲットスコープに捕捉された目標へ向けて引き金を引くだけの、簡単な操作で済んでいた。


『ふっふーん!姿勢制御から目標のロックオン、全方位レーダー&各種センサーによる索敵、何でもこなせる万能AIですの』

パナ子のどや顔がディスプレイ一面に広がる。


「うわわっ!?近いっ、近いからっ!あと、目標が見えづらいから脇へ退いて!」

眼前に広がったパナ子のどアップに、思わずのけ反ってしまうソフィー。


『……つれないですの』


不貞腐れた顔面を縮小させ、ディスプレイの片隅で横になり、ごろんと背を向けるAIパナ子。


「……何で寛いでいるの!?仕事しなさいよ!このポンコツAI!」

ふて寝するパナ子に呆れるソフィー。


「……しょうがないなぁ。戦闘が終わったら幾らでも遊んであげるから、機嫌直してっ!パナ子様っ!」

両手を合わせ、宥めすかし作戦に出るソフィー


『幾らでも遊んでくれるのですね?よしっ!言質を頂きましたですの!そうと決まれば、ちゃっちゃっと終わらせてしまうですの』


 最大推力でバックパックの水素エンジンを噴射して、シャドウ艦隊中心で大型弾頭を装備した宇宙戦艦へ向け、一直線に突進していくサキモリ。


 シャドウ艦隊旗艦『アドミラル・ゴルシコフ』から、火山噴火の様な対空機銃やミサイルが雨あられと噴き上がって、サキモリへ向かってくる。


「うひゃっ!ムリムリっ!こんなの!マジで避けきれないって!」


 操縦桿を思わず引き上げて上昇しようとしたソフィーだが、機体はびくとも反応しない。


「ちょっ!ミサイルが当たっちゃうー!!」


『……バーサーカーモード発動ですの。電磁シールド最大出力、ガトリングガンから電磁グレネードランチャーへ装備変更ですの』


「バーサーカー!?何そのイカれモード!聞いてないよぉ!?勝手にキレないでっ!」


無機質な声で宣言される、パナ子の戦闘モードに焦るソフィー。


 サキモリの機体が最大出力で展開する青白い電磁シールドの輝きに包まれた所へ、敵戦艦から放たれたミサイルや機銃弾丸が次々と飛来して炸裂する。

 着弾と爆発がひとしきり収まった後でも、機体には傷一つ無く、サキモリを包む電磁シールドの青白い輝きは衰えていなかった。


『んまーっ!"人妻(自称)"たる私の身体に傷を付けるおつもりですのっ!?

 この下郎!これより必殺電磁グレネードランチャー攻撃を開始するですの。ターゲット、敵旗艦下部大型弾頭!ロックオン!ですの』

エキサイトするパナ子。


 サキモリは過熱したガトリングガンをバックパックへ収納すると、入れ替わりに小型弾頭の付いた銃身の長い電磁ライフルを取り出して構える。


「もうっ、取り敢えず撃てばいいのね!?」


 パナ子のよく分からないノリと勢いに引きずられ、突っ込みながらも素直に引き金を引くソフィー少尉。


 サキモリが構えた電磁グレネードランチャーから、高熱で白く輝く榴弾が連続で発射されると、黒々とした宇宙戦艦艦底に露出した大型ミサイル弾頭へ、吸い込まれる様に着弾していく。


 射撃を終えたサキモリは急速離脱して敵艦隊から距離を取る。


 一瞬の間を置いて戦艦下部が明るく輝くと、敵戦艦全体が眩いばかりの閃光に包まれていく。

挿絵(By みてみん)

 敵艦隊のど真ん中で発生した巨大核爆発により、今までの戦闘で損傷しつつも大型ミサイル発射態勢に入っていた僚艦は、強烈な熱線とガンマ線に晒されて弾頭が誘爆、更に隣の艦を巻き込んで核爆発の閃光が拡がっていく。

 巨大な核爆発の連鎖が収まった後の空間に敵艦隊の姿は無く、蒼白く輝いた電磁シールドを纏うサキモリだけが漆黒の宇宙空間にぽつりと浮かんでいた。


「……たった1機で、艦隊を全滅させやがった!」

サキモリの後方で支援に当たっていた高瀬中佐が驚愕の声を上げる。


「だが、動きがなっちゃいない。あれは、戦闘機乗りの動かし方だな。ともあれ、仕込みがいがありそうだが……」

呟く高瀬。


「こちら日本国航空・宇宙自衛隊高瀬中佐。『サキモリ』パイロット、よくやった。帰還するぞ付いて来い」

「ラジャ。誘導よろしく」


 高瀬はサキモリパイロットへ呼び掛けると機体を反転させ、『そうりゅう』へ向けて針路を取った。


          ♰          ♰          ♰


――――――【ユニオンシティ 連合防衛軍臨時司令部】


 司令部のメインスクリーン一杯に広がった大爆発が収まると、オペレーターが次々と報告を始める。


「敵艦隊……消滅!」


「ユニオンシティを含む月表面への放射線被害は皆無。電磁波によるブラックアウトは観測されていません!」


「高瀬機及び"サキモリ"健在」


「やった!勝ったぞ!」


 司令部の将兵達から歓声が沸き上がる。


「思った以上の成果」

東山に向けてフンスと無い胸を張る結。


「……私が乗らないで正解でしたよ」

手に汗握りながら戦闘を見守っていた東山が、冷や汗を拭いながら応える。


「ミス結、これで奴らの攻撃が止まるでしょうか?」

結に近づいて来た作戦将校が訊く。


「止まらないわね。次はもっと強烈な手段で挑んでくるかもしれない。だからその前に――――――」


 結がメインスクリーンを操作して、火星方向から接近する光点群を拡大表示させた。


「此方から地球へ、打って出るのよ!」

結がビシッとスクリーンに投影された地球を指差す。


 メインスクリーンには、火星方面から急速に接近する人工日本列島オと、マルス・アカデミー・基幹母艦船団が映し出されていた。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・大月 結=マルス・アカデミー・尖山基地管理人工知能。マルス三姉妹の二女。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、絵師 里音様です。


・東山 龍太郎=日本国内閣官房首相補佐官。日本国地球方面特別全権大使兼ミツル商事地球方面支社長兼地球連合防衛軍月面基地臨時司令官。ひかりの大学時代の同級生。大月家と関わりを持つ苦労人。

挿絵(By みてみん)

*イラストレーター 更江様の作品です。


・ソフィー・マクドネル=ユニオンシティ防衛軍戦闘機パイロット。少尉。カンザス州出身の17歳、女性。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、鈴木プラモ 様です。


・高瀬 翼=日本国航空・宇宙自衛隊 特殊機動部隊隊長。階級は中佐。乗機は菱友重工が開発した21型パワードスーツ(H21-PS)。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・パナ子=パワードスーツ『サキモリ』機体制御システム人工知能。民間企業PNA総合研究所の人工知能。経済産業省HP内 AI出逢い系サイトの常連。AI彼氏が居る。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、お絵描きさん らてぃ様です。

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