表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移列島  作者: NAO
混沌編 真世界大戦
154/462

紫光の柱

2026年(令和8年)6月12日午前8時【長崎県佐世保市 英国連邦極東首都ダウニングタウン 首相官邸地下司令部】


 クリーチャー「マリネ」の接近に伴って司令部では徐々に緊張が高まっていた。


「クリーチャー、五島列島北部の平島沖を南下、10ノット!」

「クリーチャーの光学兵器で、中通島水平線レーダー破壊されました!」


「横須賀経由でミツル商事から警告!指向性電波は、クリーチャーを刺激するとの事です!」


「五島福江空港に待機中の、WB21ワームバスター試験中隊及びユーロファイター部隊いつでも出せます!」

「いかんぞ!航空機は電波発信器のようなものだ、待機継続せよ」


「衛星フォボス宇宙基地から、ユーロピア共和国軍宇宙戦略戦闘艦『ドウ・リシュリュー』出撃!指定座標にてMOAB弾道弾発射準備完了!」

「リシュリューには、電磁シールドの展開を忠告しろ。高みの見物とは訳が違うのだ!」


「自衛隊特殊機動団が平戸に到着、展開中!」

「日本軍最新兵器の実戦能力を見てみたいが、防衛線維持を優先!むやみに先行させるなよ!」


「大佐、クリーチャーの防衛線接触までどれくらいだね?」


 今回の事態で禁煙を撤回したケビン首相が、何本目かわからない葉巻に火を着けながら、防衛指揮官のグリナート大佐に尋ねる。


「サー、首相閣下。最新の報告によりますと、クリーチャーのサセボ上陸まで4時間半ほどです」

葉巻の紫煙から逃れるように身をよじらせたグリナート大佐が答える。


「……皇太孫殿下を沖縄に避難させよう」

万一の事を考えるケビン。


「殿下は責任感が強いので、簡単に避難勧告に応じるとは思えませんが?」

「今此処で殿下を失えば、大英帝国の歴史は終わる。地球に残られた女王陛下のご意思をお守りすべきだと説得するのだ!」


 腕を組んで司令部のスクリーンに投影されている戦況図を眺めるケビンとグリナート。


「首相!ナガタチョウです!」

「繋いでくれ」


 卓上3Dモニターに澁澤首相と岩崎官房長官が映る。


「ケビン。これより我が国は、対クリーチャー最終兵器を使用する。

 クリーチャーの居る半径50Kmの電子機器は要不要問わず、全てスイッチを切ってくれ。大量の電磁波が空から降ってくるぞ!」

澁澤が警告した。


「何をするつもりだ?」

汗ばむ掌を気取られないよう、腕を組み直すとケビンが澁澤に問いかける。


「電気分解だよ」


 ポーカーフェイスで澁澤は答えると通信を切った。


「大佐、半径50Kmを避けて防衛線の再構築だ。急ごう」

ケビンがグリナートに命令した。


 司令部の緊迫感がさらに強まった。


          ♰          ♰          ♰


――――――午前9時30分【関門海峡通過中 海上自衛隊 音響測定艦『とどろき』CIC】


 CICで聴音ソナーからクリーチャーの移動音を拾っていた美衣子の携帯電話が振動した。


 通話先の相手からの報告を受けた美衣子は満に向き直ると報告した。


「お父さん、『雷神』の準備完了よ」


「美衣子、雷神コントロールをこのCICで引き継げるようにしよう」

満が室内を見渡すと言った。


「ん。コントロール、自衛隊ダイモス宇宙基地から移管完了。聴音ソナー測定結果とクリーチャーへの照準システムをリンク、コネクト、完了」

美衣子が器用に制御卓を操作する。


「照準問題なし。しっかりクリーチャーを捕捉しています」

岬が報告する。


「エネルギー充填120パーセント」

美衣子がおもむろに、雷神の充電システムへ負荷をかける。


「美衣子。何度も言うようだけど、地球の衛星はエネルギー120パーセント貯められないからね?爆発しちゃうから!」

満が突っ込みを真面目に入れる。


 ミツル商事も少なくない予算を雷神運用費用として支出しているのだ。


「漢のロマンが――――――」

美衣子が反発して言いかけたところで、ひかりが凄みある笑顔を向けると軽く咳払いして、


「……コホン。余剰電力は、可能な限り惑星軌道外へ放出するから大丈夫」

120パーセント充電を諦めるのだった。


「照準システムは引き続きクリーチャーを追尾中。いつでもロックオン可能です」

岬が報告する。


「舞さんが気になるけど……さすがに時間切れかな」

満が覚悟を決める。


 満がクリーチャーの侵攻針路と、照準システムのモニターとにらめっこして、レーザー照射のタイミングを計っている時に美衣子の携帯が再び振動する。


「もしもし」

地上へレーザー光線を照射するという、微妙な衛星角度調整に神経を集中している美衣子の応答は機械的だった。


『お祖母様。私、私だけど』

「……通報したわ」


『ムキーっ!』

通話先で吠えていたのは対馬沖の海底に居る黄星 舞だった。


 やることはやってしまう性分の美衣子だった。


「なに?あなたのペットが欲しがる餌の相談よりも、其処の海底が沸騰する未来に注意なさい。

 もうすぐ其方へ、太陽光発電・送電衛星からレーザー光線に変換した、莫大な荷電粒子を当てるわよ」

美衣子が警告する。


『待って!マリネちゃんには、悪さをさせないのだぞっ!と』

「そんな大きさだと、存在するだけで問題だわ」


『大きさが問題!?なら、今から小さくするのだぞっ!と』

「どうやるのかしら?」


『マリネが持つ生体電気を凝縮させて、細胞死を加速させる「細胞収縮」を応用して出来るだけ小さくするのだぞっ!と』

「そのクリーチャーが持つ生体電気だけでは、収縮もたかが知れているわ。こちらの荷電粒子を上手く使いなさい」


 仕方ないわと肩を竦める美衣子。


『では、タイミングを合わせて』

「無理。衛星のバッテリーが限界だから直ぐ撃つわ。あとはそちらで上手くやって。ダメなら諦めて」


『ちょっ?!』

「ごめんなさい」

舞の静止を遮った美衣子が無造作にトリガーボタンを押す。


 対馬沖を航行する『とどろき』の遥か頭上から紫光の柱が針路の遥か先に降り注ぎ、しばしの間天地の間を紫の光の柱が繋いだ。


『あばばばば』

「テンプレ的な感電リアクションはいいから。誰も見ていないから」


『ちょっと待つのだぞっ!と。今凝縮エネルギーで細胞収縮中だぞっ!と』

「荷電粒子照射はもうすぐ途切れるわ」


『充分だぞっ!と。むしろいっぱい余るかもだぞっ!と』

「余らせてはダメ。海底が破壊される」


『いやいやいや。もうムリなんだぞっ!と』

「しょうがないわね、じゃ、こちらが指示する方角へ収縮させて戻して頂戴」


 余裕のない舞に美衣子が収束ポイントを指示する。


 暫くすると「とどろき」正面の海中から空高くへ向けてオレンジ色の光の柱が立ち昇った。

オレンジ色の光の柱が立ち昇った先に、木星へ向かう1隻の巨大宇宙船が航行していた。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・大月満=ミツル商事社長。

・大月ひかり=ミツル商事監査役。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、七七七様です。


・大月 美衣子=マルス文明日本列島生物環境保護育成プログラム人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストは里音様です。


・岬 渚紗=ミツル商事海洋養殖部門、医療開発部門担当。海洋生物学博士。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、更江様です。


・琴乃羽 美鶴=ミツル商事サブカルチャー部門責任者。言語学研究博士。少し腐っている。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、更江様です。


・春日 洋一=ミツル商事海洋養殖部門責任者。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、更江様です。


・名取 優美子=神聖女子学院小等部6年生。瑠奈のクラスメイト。父親は航空宇宙自衛隊強襲揚陸艦ホワイトピース艦長の名取大佐。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様に描いて頂きました。


・天草 華子=神聖女子学院小等部6年生。瑠奈のクラスメイト。父親はJAXA理事長の天草士郎。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様に描いて頂きました。


・黄星 舞=訪問者。神聖女子学院小等部新任教師。黄星姉妹の姉的ポジション。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様に描いて頂きました。

妖精バージョンはこちらです↓

挿絵(By みてみん)


・黄星 守美=訪問者。神聖女子学院小等部教育実習生。輝美の姉的存在。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・黄星 輝美=訪問者。神聖女子学院小等部6年生に転入。守美の妹的存在。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・ケビン=英国連邦極東首相。

・グリナート=英国連邦極東軍大佐。防衛司令官代理。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ