表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/165

第71話「会場」

挿絵(By みてみん)

 ※スガヌマの設定ラフです。

  ガタイが良いですね。


挿絵(By みてみん)

 ※ケンザキの設定ラフです。

  今は絶賛入院中。早く治るよう……はい、祈ってます。

『本日はお集まり頂き誠にありがとうございます。まもなく開会しますので――』


 もうしばらくお待ちください。

 そうアナウンスがこの広いホール、ひいては溢れる関係者たちに知らせる。


「――ようウィリアム」

「――お、コウキ」


 選抜戦に際して行われる開会セレモニー。

 主役はもちろん選抜生たち。

 相応のドレスコードに身を包んで、会場で各々(おのおの)顔合わせをしていた。


「コウキ、少しやつれたかい?」

「あー……」

「顔が疲れてるよ」


 ハーレンス王国の代表。

 ウィリアムとスガヌマが何日ぶりかの再会だ。

 

「そりゃ勇者ってだけで、いろんな所に挨拶させられてたからな……」

「お疲れ様。だけどワドウさんとハルカゼさんは、まだまだ元気そうだよ?」

凜花(りんか)たちは……まぁな。単純に俺がこういう人付き合いに向いてねぇんだよ。だからこうして逃げてきた」

「あはは。僕と喋って人避けかい」


 ウィリアムたちの視線の先には、同じく勇者の2人の姿。

 どちらも見事なドレス姿で、周りにも貴族や関係者が囲いに囲んでる。

 逐一反応する彼女らはとても大変そうだ。


「そういやクレスは? 一緒じゃねぇのか?」

「うーん。僕もよく知らないんだよね。スミスたちも分からないっぽいし」


 いつも中心にいる、クレス・アリシアは未だに姿を現さない。


「もう何日も会ってないよ」

「……まさか何かの事件に巻き込まれたとか?」

「どうかな……ただクレス自体は『人助けをしてくる』って言ってから消えたんだよね」

「人助けねぇ。怪しくね……?」

「ちょっとね。このセレモニーには来るって言伝(ことづて)は貰ってるけど――」


 怪訝な面持ちを浮かべるクレスの友人たち。

 そんな彼らに、丁度声を掛ける人が――


「おーいお前ら」

「あ、デニーロ先生!」

「ちわーっす」


 ウィリアム一行のクラス担任、デニーロである。

 

「いつもの白衣はどうしたんすか?」

「流石に着ないっつーの。怒られるわ」

「失礼だよコウキ。デニーロ先生だってドレスコードくらい知ってるんだ」

「……コンラードもなかなか言ってくれるな……」

「それで、なんか急いでいるみたいですけど、どうかしたんですか?」


 ただ見つけて声を掛けたにしては、ちょっと様子がおかしい。

 ウィリアムが察して尋ねてみる。

 

「別に急いでるってわけじゃない、ただ……」

「「ただ?」」

「アリシアを見かけなかったか? ずっと探してるんだけど見つからんくてな」

「「あー」」

 

 デニーロはどうやらクレスを探しているらしい。

 ウィリアムたちもその言葉に、自分たちも同じことを思っていたと応える。


「――数日前からいない?」

「――人助けをするとかどうとか」

「――怪しいな」

「「――怪しいですね」」


 とりあえずと知っている情報を共有する。

 いよいよもって、クレス不在の一件が大きくなってきた。


「……うんんん」

「クレスがいないと直近でマズイことがあるんですか?」


 このセレモニーは選抜生全員がほぼ強制参加だ。

 ただあくまで顔合わせが目的、最悪いなくても大問題にはなりえない。


「実は帝国の姫様がな……」

戦姫(せんき)、ローズ・エーベルングがなにか?」

「アリシアと会いたいって言うんだよ。しかもただの会いたいじゃない。『超』会いたいだ」

「「ははぁ……」」


 もはや驚くウィリアムたちではなかった。

 どんな事情があるかは知らないが、あの男なら彼女に求められてもおかしくない。

 クレスが不思議な魅力を持つ人物だと知っているから。


「それで姫様に『どこにいるのかしら?』って凄い威圧されて……」

「必死に探している、と」

「ドンマイっす。同情しますよ」

「っく、ただお前らも知らないとなると……これは……」


 頭を抱えるデニーロ。

 一番の友人たるウィリアムたちが知らないのなら、もう行き止まり。

 これ以上の手となると、帝国軍にでも捜索の助力を願うしかない。


「ただそんなことをすれば俺の給料が……いや、王国の面子が立たなくなってしまう!」

「ちょ、いま給料のこと一番に気にしただろ」

「……コウキ、このご時世だ。デニーロ先生が保身に走るのも仕方ないよ」

「そ、そうか、教師ってのも大変だな……」

「お、おい! そんな可哀想な人を見るような目はやめろ!」

「「お疲れ様です」」


 ただデニーロは実際、とてつもなく頑張りまくっている。

 なにせ勇者4人に加え天才クレス・アリシア、そのほか個性豊かな生徒たち。

 彼が敏腕だからこそ、1年S組は無事成り立っていると言える。


「ただこれはもう、素直に居ませんって言うしか……」

「――おい! 剣聖様は!?」

「――見つかりません!」

「――部屋に衣装もありませんでした!」

「――お菓子も設置しましたが、一向に引っかかりません!」


 諦め気味のデニーロ。

 ただそんな彼の近くではせわしなく動く、とある国の人々が。

 その焦りよう、近くに居るというのもあるが会話が聞こえてくる。


「教国も教国で、結構な問題児抱えているみたいだね」

「おう。剣聖、だったか? 勇者として挨拶に行った時もいなかったなぁ」

「力ある者は変わった人が多いのかもしれない」


 クレスに毒され……もとい慣れたせい。

 規格外な人物や、不測の事態にもある程度順応できるようになった。

 苦い笑みを浮かべながら教国の人たちを見守る、が――


「まったく、剣聖様はどこに……」

「珍しく自分から『人助けをしたい』なんて言い出して感無量だったのに……」


 ウィリアム、スガヌマ、デニーロ。

 3人は教国たちの会話を聞いてハッとした。

 話の中に、聞き慣れた『文句』があったのである。


「あ、あのー、すいません!」


 なんだか嫌な予感がする。

 デニーロはこの際だと、教徒の1人に話しかけた。


わたくし、ハーレンス王立魔法学園にて教師をしているデニーロと申します。少々お尋ねしてもよろしいですか?」

「あ、はい」

「剣聖様が不在のようですけど、それはいつ頃からでしょうか?」

「そうですね……確か5日ほど前だったでしょうか……」

「5日……」

「置き手紙に『人助けをしてくる』と一言あって、我々も大変関心していたんですが――」


 現在は消息不明の真っ最中。

 足取りはほとんど掴めないらしい。

 

 ただし、彼らは失念していた。

 超めんどくさがりの剣聖が、まさか冒険者として働くとは思っていなかったのである。

 そのために冒険者ギルドには寄らず。

 飲食店を重点に建物をずっと捜索していた。


 しかもセンが森へ赴くことになった要因の出店(でみせ)

 あの屋台も材料がないため、今は店を出しておらず、手がかりとしての役目を果たさない。

 

「――なるほど。実は私の生徒も今行方知れずでして」

「――あ、そうなんですか」


 それから二、三言話してデニーロは教徒たちから離れた。

 そしてウィリアムたちの元に戻ってきて――


「お前ら、俺はなんだか体調が悪くなってきたから今日は早退する」

「「え?」」

「申し訳ないな。じゃあ後は任せ――」

「ストップ。どこ行くんだよデニーロ先生」


 走り去りそうなデニーロの手を、スガヌマがガシッと掴む。


「は、離してくれないか……体調が悪いんだ……」

「先生、頑張りましょう」

「いやいや! お前らだってもう察してきてるだろ!?」

「だからって逃げるのは良くないっすよ」


 ウィリアムとスガヌマも、もう勘付き始めた。

 クレスと剣聖が消えた日は同じ。

 しかも『人助け』という理由まで合致。

 ここにクレスの女難が作用すれば、もう答えは分かるだろう。


「クレスの奴、剣聖と……」

「うん。一緒に居る可能性が高いね」

「先生、俺らもフォローしますから。勇者が肩持てば多少楽になるっすよね?」

「す、スガヌマ……」

「僕も助力します。デニーロ先生にはお世話になってますし」

「う、うぅ、俺はなんて良い生徒を持ったんだ……」


 逃げ腰だった自分が情けなくなる。

 教え子にここまで言われたら、もう退けないだろう。


「せ、先生! 頑張ってみようかな! それにまだアリシアが問題起こすと決まったわけじゃないし!」

「そっすよ!」

「ですです!」


 ――と、意気込んだデニーロ教師。

 実は結局、彼が監督不行届(かんとくふゆきとどき)で怒られるのはそう遠くないことだ。



 なにせクレス・アリシアとセン。

 2人は今――

 更新遅れてすいませんでした。

 土曜日分はなんとか日中に間に合うよう頑張ります…


 またスガヌマとケンザキは別々で載せるつもりだったんですが、クレス以外の男キャラなんてあんまり興味ないですよね……?

 そんな個人的偏見で、パパッと済ますため今回は2人載せました。


 あと↓が、正式な書影になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジア文庫より新刊が出ます!
画像をクリックすると特設サイトに飛びます
<2020年12月19日発売>
大罪烙印1
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ