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第56話「予選3」

 俺の氷魔法は全てを凍らせる。

 全てとは、それすなわち『概念』のことだ。

 1回戦の相手からそう。

 俺は何も筋肉を凍結させて動きを止めたわけじゃない。

 力は物理的ではなく内心に働きかける。

 動こう、戦おう、逃げよう、そういう意思感情を凍結させた


「なんでだよ……クソが……」

「悪いな」


 そうしてこの決勝まで来た。

 やはり服も肉も凍り付いてはいない。

 まあ目隠し(フェイク)のために多少吹雪かせてはいるけど。

 ともかく本人が気付かないくらい深いところにある心理を一部停止。

 相当間合いは詰めなきゃできないが、学生相手なら問題ない。

 

「お前は……」


 初めは忘れてた。

 相対者の喋るという概念も凍結。

 エルにも確認済み。

 俺の為す技を見破れる人物はこの観客の中にいない。

 周りには俺が何をしているか分からないだろう。

 もしくは下馬評だけ知っていて、氷魔法かなと感じている者がいるかもしれない。

 

「これで終わりだ」


 剣を構えたままの男に近づき魔道具を破壊する。

 流石に決勝、初めの少しだけは剣を振らせた。

 間合いに入った瞬間に動きを凍結。

 ただ生命線を凍らせるわけにはいかないので、これがまあ難しいんだよ。

 異能(エル)を使えば楽になるが、それはできない。

 スガヌマやスミスに使用できる余裕があるかは怪しいところだ。


「試合終了! 勝者、クレス・アリシア!」


 歓声はなく、ただ静かに騒めく会場。

 味気ない試合だった。

 あと相手にさっき言った謝罪は偽りではない。

 せっかくのイベント、こんな形で終わらせてしまって申し訳ないと思っている。


「だけど————」


 ブロック予選を勝ち抜いて本選5枠を決める上位予選。

 その舞台へはせめて行かなければいけない。

 












 ……

 …………終わった。

 予選ブロックで無事に優勝した。

 面白さの欠片も無い試合をした。

 観客の様子は初めは驚いていたものの、後半は完全に葬式状態になる。

 その甲斐あってたいした話題にはなっていないよう。

 まあ今年は元々勇者ばかりが注目されているからな。


『気持ちよくないでしょ?』

「別に」


 俺はこの試合で何か感情を得たいなんて思ってない。

 自分の立ち位置を守るために出場しただけだ。

 勝ちたいとか、楽しみたいとか、そんなこと思ってない……

 エルが言うことは理解できない。


『私だったらドーンって一発決めるわ』

「……」

『クレスの相方、あの憎き爆裂女だってそうする』


 俺は予選の待機室にいる。

 ここには俺とエルしかいない。

 静かな時間が流れているだけ。


『ド派手に優勝したっていいじゃない。元々顔もバレてないんだし』

「だから監視が————」


 これは逃げだろうか。

 俺は自分が考えていた以上に『学生』として毎日を過ごしている。

 でもこれ以上監視者としてでなく、俺が俺として生きてしまったら……

 私情は必要ないんだ。

 ただ最近になって友人と思えるような奴もできた。

 このまま隠れていた方がいい。

 失うのは————


『友人云々はどうでもいいけど、自分に正直に生きた方がいいわ』

「神様のありがたいお話か?」

『ええ。さっきから暗い顔してるもの』

「……してない」

『してる』

 

 表情に変化はない。

 ただ共に何年も過ごしてきた。

 エルも思うところがあるのだろう。


『そう考えると、爆裂女と一緒にた時は随分楽しそうだったわね』

「まあ俺が引きずられるみたいな感じだったけどな」

『私が常に実体化できれば……ぬぬぬ……』


 学園に入る前は基本自由に力を振るえた。

 意識はしないでいたが、案外ストレスでも溜まっているのだろうか。

 この任務上、力の抑制は必須。

 歯がゆい部分ももちろんある。


『この後も負けるんでしょ?』

「相手によるけど1、2回は勝つつもり」

『はあ……』

「そう溜息つくなって」

『パパっと決めればいいのに! もどかしいわ!』 

「はいはい」


 言わんとすることは分かる。

 ただ、任務があるんだ。

 任務第一に動くんだ。


 だってそれでしか、俺は恩返しできないんだ。

 

更新頻度についてお知らせ。

前話で月・金は休載するとお伝えしましたが、


『木・土の週2回更新』にしようと思います。


理由は現実が多忙のため。

読んでいて察していると思いますが、最近の話は質が低いです。

それから分量も少ない。 

読んで満足しないものになっています。


時間を貰って、相応のものを仕上げたいです。

よろしくお願いします。


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