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第55話「予選2」

「それでは1回戦最終試合を————」


 1回戦最後の試合。

 やっと俺の出番だ。

 アナウンスに声に応えステージへと上がる。

 

「まずはハーレンス王立魔法学園所属、クレス・アリシア!」


 ご丁寧に紹介ありがとう。 

 ただ見物人もそこそこいるようだけど、俺を待ちわびている人は少ないだろう。

 むしろアウェー感が強い? 

 魔法云々ではなく、そもそも容姿や制服で悪目立ちするからな。

 さっきから結構貴族だと間違えられるし。

 普通に平民の出です。


「対するはエンタール学園所属、ジーナ・ラケーネ!」


 反対側から数十分前に出会った女子が出てくる。

 ただその表情は曇っている。

 試合までに時間はあった。

 その間に俺が助けた子が説明。

 きっと俺がナンパ野郎じゃないと知って申し訳ないと思っているんだろう。

 

「そ、その、さっきのことで————」

「気にしてない」

「で、でも……」

「俺は試合をしに来ただけだ」

「……っ」


 別に馴れ合いに来たわけじゃない。

 アンタの相方を助けたのもたまたまだ。

 感謝されたいとも思ってないよ。

 言いたい事があれば試合で語ってくれ。


「両者定位置について」


 審判が促す。

 改めて予選のルールを確認する。

 試合時間は10分。

 勝利条件は相手をダウンさせるか、もしくは全員が右腕に装着している魔道具を破壊するか。

 それが出来なかった場合は審査員による判定で勝者が決まる。


『もちろん全員殺し————』

「ません」


 エルよ、それをやったら俺は捕まる。

 まあ俺は許される範囲で全力を出すつもり。

 別に派手な魔法を使って捻じ伏せる(・・・・・)という意味ではない。

 右腕に注目。

 そこには装着を義務付けられたブレスレッド型の魔道具がある。

 それを破壊すれば勝利確定。

 今回ダウンは狙わない。

 俺はこの魔道具を上手いこと破壊して上へと進むつもり。

 だからあんまり目立つって事はないと思うけど……


「それでは10カウントで————」


 向こうさんも意識はすぐ切り替えるタイプなのか。

 まだ表情は若干暗いが、そこそこ構えを取れている。

 でも脅威には思えない。

 まあ見た感じこの予選ブロックは全体的にレベルが低そうだったけどさ。


「————3! 2! 1! 始め!」


 気付けばカウントはゼロを指す。

 お互いに結構距離はある、普通だったら様子見から入るわな。

 だが関係ない。

 制空圏を侵しに前へと走る。

 

「だけど————」


 ここから剣で斬りかかったり、氷をぶっ放そうという訳ではないんだ。

 静かなムーブ、足元に広範囲で氷魔法を発動。

 動作は最小、傍から見れば何も変化してないだろうな。

 

「く、来るならこい……っあれ……?」


 俺がグイグイ迫って来ても強気なジーナさん。

 しかし彼女の様子が変わる。

 まるで重大な異変に気付いたよう。

 

「な、なにこれ……!?」

「身体、動かないでしょ」

「っ!」


 大衆の面前で恥をかくことになる。

 それはボロボロになって負けるからではない。 

 俺が言った恥というのは、試合で何もできないで終わることから。

 一歩も動くことなく、魔法を発動することもなく、戦士として振舞うことなく終わる。

 接近した時点で氷魔法を薄く広範囲で発動。

 芯までは届かず、ジーナさんの表面だけ(・・・・)を凍らせた。 


「い、嫌だ。まだ何もやって————」

「はい、ごめんなさい」


 そう言って彼女の魔道具を破壊する。

 これが俺の今の本気だよ。

 ただ周囲を凍らせ相手を止め、その間に魔道具を打破する。

 開始わずか数十秒で決着だ。

 会場も盛り上がるどころか唖然とする。

 

「————悪いが予選はこのスタイルで突破させてもらうぞ」  


 できる限り魔法戦闘は避けたい。

 披露するのは本選からで十分だ。

 

話が短くて申し訳ないです。

あと更新頻度もスローになってました。

期末試験が終わればもう少し楽になるんですけどね……

とりあえず次話のボリュームは増やします。

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