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第53話「調整」

※大幅加筆で書籍化! 

 スニーカー文庫から2018年4月1日に発売!

 段々と気温が高まっていく気候。

 明るい時間が長くなる。

 ようやく夏が見え始めたという感覚。

 あと1、2ヵ月すれば夏本番になるだろう。


「よーし、テストを後ろから回収しろー」


 選抜戦で盛り上がる学園、ただ学び舎だということも忘れてはいけない。

 今日この時、俺たちはペーパーテストを受けていた。

 ただ教師たちも目前に控えた予選を考慮してだろう、だいぶ内容は優しい。

 この分だと学期末のレベルが上がりそうだ。


「……全員分あるな。ならこれで試験は終わりだ」


 デニーロ先生が漏れがないことチェック。

 不備もなくこれで今日は終わりだ。

 最近は学校も早めに終わる。

 なにせ1週間後には予選が始まるのだから。

 各自練習を……いや、最終調整(・・・・)に入る時期だろう。


「終わったぜええええええええええええ!」

「スミスうるさい」


 隣に座るもんだから声量がダイレクトに伝わる。

 そんな興奮しないでくれ。

 まあ今やっていた魔法学が今回で一番難しかったからな、解放されて嬉しい気持ちは分かる。

 ただ魔法学のテストと言えばだ、俺が入学試験で解いたやつはどこにいった?

 周りは採点されて返ってきたそうじゃないか。

 今度デニーロ先生に聞いてみるかな……


「後は年末まで行事尽くし、楽しみばっかりだぜ」

「行事ねぇ……」


 もうすぐ訪れる夏には選抜戦の予選と本選。

 軽い休暇を挟んだ後、秋には学園祭が待っている。

 冬は長期の休暇が与えられるそうだ。

 帰省する人も多いらしいが、俺は監視の任務がある。

 イレギュラーが発生しない限り、この国から出ることはないだろう。


(帰省っていうか、向こうから来そうなもんだけど————)


 いま俺に最も近づいて来ているのはアウラさん。

 ただ目撃情報やボスの話を聞いてそれなりの時間が経った。

 それなのに邂逅することは一度だって無い。

 太陽殺しが居たという噂を聞くことすらない。

 もともと極度の方向オンチかつアホってこともあるが、遭遇しないはしないで不安である。

 この大陸にはきっといる。果たしてどんな所にいるのやら————


「クレス! 早く訓練場行こうぜ!」

「そう急かすな。支度(したく)する」


 試合前だけあってテンションが高い。

 この大陸で育った学生にとってはビックイベントだからな。

 Sクラスだけあって参加者も多い。

 周りもせわしなく動いており、なんだか大変そうだ。

 見ればスミスだけでなく、ウィリアムとスガヌマも俺を待っている状態。

 分かったから。すぐ行くよ。


「選抜戦、か————」













 場所を移っていつもの練習場、最後の調整に入る。

 3人とも魔力の扱いはそこそこ出来るようになった。

 第5階梯の魔法までなら無詠唱で使えるまでに。



 一番成長が顕著だったのはスガヌマだ。

 適性は雷属性。

 自主練中はその属性を重点的に育てた。

 最初は魔法しか面倒を見ないと言ったが、体術も俺がそこそこ指導したつもり。

 

 まあ元々近接戦に才能があったな。

 運動神経もさることながら、動体視力や反射もかなり早い。

 選抜戦は魔法だけでなく体術も使用可能。 

 本人には明言していないが、正直スガヌマは本選に行けるだろう。

 だから異能も限界まで隠すように言ってある。



 続いてはウィリアム。

 スタイルはかなりオーソドックス、王道とでも言うべきか。

 魔法を混ぜつつ堅実に剣を振るう。 

 派手な技は無いが、その分隙もない。

 中級の魔法騎士ぐらいならもう倒せるレベルじゃないだろうか。

 ともかく同世代でトップレベルの実力は持つ。

 本選へ行くことも十分可能だ。



 それでだ。

 最後はスミス。

 コイツが一番教えるに苦労する。

 なにせ使う魔法のほとんどが『特殊』なのだ。

 俺の予想もつかない非常識な魔法を使用する。

 ただ弱くはない。むしろ相手によってはスガヌマ以上に活躍できるだろう。

 

 ある意味で魔法の境地(・・・・・)に手を掛けている。

 スミスの出立ちは数字(ナンバーズ)に通ずると思う。

 実技練習で披露すれば笑われる時もあった。

 だがしかし、俺が教えたことでソレは更なる進化を遂げる。

 本気は出すなと言ってあるが、もし見ることになれば観客はどんな反応をするかな。

 まあまずは男子校で勝ってきて欲しいところだ。



 俺はどうなんだって?

 3人ばかりに焦点があって影が薄くなってる?

 そりゃ目立つわけにはいかないからな。

 これでも優秀の範疇を出ないようかなり努力しているんだ。


 まあ予選で知り合いと当たることはない。

 上位予選には行く予定だ。

 後は不調を訴えて棄権、これが俺の描くシナリオ。

 面白くないと感じるかもしれない。

 だが何度も唱えた、俺は任務第一主義だってな。


 あと勇者たちとコミュニケーションをとって判明したこともある。

 まずはマイさん、彼女は選抜戦に出場しないらしい。

 どうやら本格的に支援タイプを目指しているらしく、自衛の術も得ているようだが今回は見送るらしい。

 出場するとしたら来年以降だそうだ。 


 後はワドウさんとケンザキ。

 彼女らも被ることなくバラバラにブロック分けされた。

 たぶん国の配慮があるんだろう。

 目立たないブロック予選で戦わせるカードじゃないわな。


 やはり俺の理想としては、スミスたち3人には本選に行って欲しい。

 戦姫たちにどれほど通じるか見てみたい。

 あと俺が勇者と当たればシナリオ上わざと負けるしかない。

 つまりケンザキと当たった時点で俺の敗北は決定する。

 なんだか(しゃく)だ。

 いっそスミスたちに勝ってもらたいところ。


 さあ選抜戦が始まるぞ————

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