第51.5話「剣崎」
————王城、とある訓練場。
俺はそこで日夜鍛錬をしている。
今だって見えない所に護衛の騎士はいるが、1人でずっと努めていた。
そして遂に……
「完成だ」
必殺技をようやく形にできた。
握った剣から光がこれでもかと溢れ出す。
もうどんな奴にも負けない最強の技。
俺の異能は強いんだ。
万が一にもあの男に負けることなんてないんだ。
「幸樹もアリシアなんかとベタベタしやがって……」
最近では幸樹と話す時間がかなり減った。
もちろん選抜戦に向けて鍛錬が増えたことも起因する。
だがそれ以上にアイツはクレス・アリシアの方ばかりに行くようになった。
放課後も一緒に練習している。
数日前には仲の良い連中だけで依頼を受けに行ったとも。
俺なんかずっと1人だ。まあ別に気にしてないけどな。
自分は勇者、つまりは特別。その辺の異世界人と馴れ合う必要も無い。
「選抜戦も楽勝だ」
必殺技を抜きにしても、最近は魔法も体術も頑張った。
そんな俺と張り合える学生は同じ勇者ぐらいだ。
まあ幸樹はアリシアたちと自主練していると言ってたが、どうせ遊んでいる。
アイツにこんなことを言うのもあれだが、だいぶ実力に『差』は出ただろう。
「それも仕方ない。ここは実力がモノを言うからな」
貴族たちの期待も大きい。
負けて責められても怠けてた幸樹が悪い。
擁護するのは難しいだろう。
この考え方が冷酷と言われても、弱かったアイツが悪い。
そう! 弱い奴は淘汰されて当然なのだ!
「見てろよアリシア……!」
クレス・アリシア。
忌々しい男、俺の華の学園生活を奪った男。
何故か分からないがアリシアばかりが皆に好かれる。
ちょっとルックスが良いだけじゃないか。
戦いなら俺が本気を出せば絶対勝てると思っている。
「予選で当たったらボッコボコにしてやる」
まあ上位予選まで上がってきたらだけどな。
相対したら全力で潰すつもり。
というかむしろ当たりたい。
それを機に外面だけってことを周りに思い知らせたいのだ。
あと春風さんの前でアリシアのカッコ悪い姿を見せれば、俺の株も自然と上がるはず。
『剣崎君の方が強いし頼りになる』そういう展開になるはずなのだ。
「元々狙っていたのは俺、ポッと出に獲られるなんて……」
春風さんは日本にいた時、入学当初から目を付けていた。
それを急に現れたアリシアに掻っ攫れて堪るもんか。
この際もう幸樹も和道さんもくれてやる。
俺は本当に欲しい物だけ手に入れる。
「————ケンザキ様」
外で待っていた騎士が俺の元に来る。
どうやら時間らしい。
そろそろ引き上げなければいけないだろう。
とりあえず、もしアリシアと予選で当たることがあるのなら————
「真に強いのは俺だってこと、身をもって分からせてやる……!」
短くてスイマセン。





