第35.5話「報告2」
勇者監視任務レポート。
ハーレンス王国での任務もいよいよ1ヵ月が経過する。
ここまで色々なことが起きた。
このレポートはそれらを簡単に纏めたものである。
初めに自分の立ち位置の変化について説明する。
監視という任務上、あまり目立たないで学園生活を臨むのが一番だと考えていた。
ただ入学試験、実技授業、既に報告済みの大賢者との一戦。
異能の妨害のせいで氷魔法しか使えないにしろ、派手に動きすぎてしまった。
もはや普通の学生と言い張るのには無理があると判断する。
今後は優秀な生徒として任務に当たろうと思う。
これから行われる他国との国善試合の予選も、3回戦くらいまでは進出するつもりだ。
そしてここからが本題。
まずは勇者たちについて。
能力や内面、個々の詳しいデータは別紙を参照して欲しい。
ここには大きく変化したことだけを記載する。
一番俺と関係が変化したのはコウキ・スガヌマだ。
大賢者の騒動以降、やけに親しく接してくるようになる。
放課後には鍛錬を付き合うことにもなってしまった。
ただ監視対象から近づいてくれるのは僥倖。
このまま内を探っていく所存だ。
そして疑問を持ち始めたこと、それはユウト・ケンザキについてだ。
これまでは奴のことを稀代の策士と称していたが、雲行きが若干怪しい。
俺に当たりが強いのは相変わらず、近頃ではクラス内でも1人空気が違うような気がする。
何か企んでいるということは無いだろうが、監視と同時に警戒もした方が良いと思う。
マイ・ハルカゼとリンカ・ワドウについては特になし。
ただ調査は進んでいるので、それは別紙で確認して欲しい。
そして勇者以上に驚いたのが正体不明と騎士団長について。
前者は構成員であろう2人と遭遇。
それぞれ『大賢者』と『ダンジョンマスター』を名乗っていた。
ただどちらとも小手先の勝負をしただけ。
大賢者の真名と魔法は大体分かったが、もう片方については謎が深まるばかり。
向こうの口振りからするに何かを目論んでいるのは確か。
警戒レベルを数段上げるべきだと提案する。
正体不明も厄介だが、身近にもとんでもない男がいた。
後者に上げた、ハーレンス王国魔法騎士団長アルバート・シグリフォンである。
シンプルに言うなら彼は超一級の戦士であった。
七天武具を見事に使いこなし、S級程度の魔族2体を瞬殺した。
こちらでも調査を続けるが、彼について何か情報があるなら提供願いたい。
自力で調べきるのは厳しいと思う。
あと騎士団長の話でも触れたが魔族が王都内で確認された。
いよいよ魔族、いや魔王たちも本格的に動き出したのだと思う。
ただ上述の魔族を雇った魔王が誰かは不明である。
死体も騎士団に回収されたため、襲撃してきた魔族についてこれ以上の調査は難しい。
出来れば他の数字に回して欲しい案件だ。
ここまで大体のことを説明したが、任務とは別で気になることが1つ。
アウラさんがこのユグレー大陸に近づいて来てるってマジですか?
あくまで噂を耳にしただけです。
だけど赤髪の女性で、デカい大剣背負ってて、なおかつ炎を纏っている。
普通にアウラさんだと思うんですけど……
真相が知りたいです。早い情報伝達を希望します。
ちなみに少し前では『Ⅷ』のボーン・ボンボーンさんと会いました。
相変わらずでした。
あと『Ⅳ』のローランさんには苦情を出しておいてください。
大賢者、もとい正体不明、凄い面倒でした。
ただローランさんが本気を出せばいけたかと、俺は監視の任務中で制限があるので全開では戦えません。
次は仕留めてくれると嬉しいです。というかお願いします。
他の皆も元気にしていますか?
こっちはなんとか上手く、はい、やれていると思います。
まあ会えないことが少しだけ寂しいです。
寂しいんですが、こっちに来るときは必ずアポを取ってください。
前回突然来たのがボーンさんでまだ良かったです。
比較的常識は備わっている人ですし。
ただ他の面子、特に女性陣はヤバい人だらけというのはボスも分かっているはず。
急に来られると心臓に悪いです。任務にも影響があります。
頼みますから事前にアポ取ってください。というか出来れば接触してこないのが一番。
来ないように配慮してもらえると助かります。クドク言いましたけど別にフリじゃないですよ?
ハーレンス王国には出来るだけ近づかないこと。
そしてクレス・アリシアがなんとか元気でやっていること。
任務の進捗ついでに報告しました。





