第117話「姉姉」
義理の姉や義理の妹が欲しい。
年頃の男子なら一度はそんな願いを抱いたことがあるのではないだろうか?
例外として最初から姉も妹もいる男は、そんなことは思わないかもしれないが。
やはりこれは例外中の例外である。
となれば自分――クレス・アリシアは例外中の例外にカテゴライズされる。
なぜなら姉も妹も欲しいと思っていないからだ。
それは実際にそれらしき人が既にいるから満足……という簡単な話ではなくて。
いるからこそ迷惑を被り、苦労をしてきた経験があるからに他ならない。
アウラさん、マキナさん、ストレガさん……エトセトラエトセトラ。
もう姉キャラは十二分に味わった(味わったに深い意味はない)。
これ以上の補完はいいと言うか、これ以上の苦労を増やさないで欲しい。
しかし記憶を遡ってみると、身近に妹キャラな女性はいない気がする。
これまで不思議と、年下の異性と接点を持つことはとても少なかった。
だからといって義妹が欲しいなどとは微塵も願わないわけで。
経験則からするに、どうせ自分の目の前に現れるのは破天荒か、自己中心的か、はたまた変態か、それ以外のなにかおかしな属性を持つ人物だろうからだ。
ロクなことになるまい。
そもそも出会う異性のほとんどが変人奇人なのだ。
人間なぞ最初から普通である者など存在しないと言われればそれまでなのだが。
なんにせよ俺は今、現在進行系で向けられる羨望嫉妬の声に悪戦苦闘、もとい齷齪をしていた。
「お、お姉さんって彼氏いますか!?」
「信者のことでしょうか?」
まだギリギリ一般人っぽい会話ができるマキナさん。
布教をしようとコミュニケーションを試みたようだが、いつのまにかクラスメイトたちに質問責めにあっている。
ただ当人はそれもまた良いといった表情で(かまってもらえて嬉しいのだろう)。
いや待て待て。
なんで彼氏いますかの質問に俺の名を出す。明らかに意図して言っているだろう。
質問した女子もきゃー!とか叫ぶなよ。
「で、でもアリシア君って弟じゃないんですか? それで彼氏っていうのは……」
「血は繋がっていないので心配いりません。近々子供を作ろ――」
「それはアウトでしょうよ!」
「……あ、クレス、いたんですか」
「いました! さっきからずっと隣にいましたよ! というか俺の面談にマキナさんが来たんでしょ!?」
「どうやら恥ずかしいことを聞かれてしまったようですね。盗み聞きとは……エッチ」
「だから隣にずっといたでしょうが!」
「隣にずっと……プロポーズですか、突然ですね。サプライズというやつですか」
もういい。もうツッコミは入れない。
一言発するだけで10倍返しになって返ってくるのだから。
それと恥ずかしいなら恥ずかしいで、それ相応の顔を作る努力をして欲しい。
終始鉄仮面というか無表情なので、嘘をついているようにしか見えない。
その甲斐あって周りも冗談だと受け止めてくれているけど……。
「クレスぅ……」
「む。なぜこんな所にアンデッドが、せっかくですし退治しましょうか」
「待って待ってマキナさん! それ一応スミス……友人なのでっ!」
今度は冗談ではなく、本気で殺しに掛かろうとするマキナさん。
彼女が本気だとはみんな思ってないんだろうな。
ただスミスがアンデッドに見えるのも仕方ない。実際フラフラだ。
「どうしたスミス。誰かにエナジードレインでもされたのか?」
「お前が、お前という存在が羨ましい……妬ましい……っ!」
「そんなことで精神的に参ってたんだ……」
このアンデッドはいっそ退治した方がいいのかもしれない。
本人としても楽になりたいだろう。
「――じゃあ一発芸やるぜ。魔法を使わずに壁を歩くっ!」
今度はアウラさんの声が教室に響く。
俺がマキナさんを抑えるので、エルメスさんにソッチは頼んでいたが……。
「はい一歩! 二歩! 三歩!」
「「「「おおぉ~!」」」」
アウラさんは剛脚をもって、凄まじい勢いで黒板に踏み込んだ。
そして黒板を貫通し、後ろの固い壁をも貫く。
はまった足を軸足とし、残る片足でまた壁に穴を開ける。
もはや学び舎で響くはずのない工事音が――
「ってなにしてるんですか! エルメスさんもなんで止めない!?」
「相も変わらず馬鹿力だネェ。垂直になっているのに上半身が綺麗にのびるあたり体幹も素晴らしい」
「なにを褒めてるんですか……!」
「いや最初は止めようとしたんだ。ただ彼女の動きの方がコンマ数秒早かったよ。それに君の学友たちも楽しんでいるようだシ」
そうだ。
このクラスも異常なのだ。
なぜこの光景を見てみな恐怖しないのか。
俺がクラスメイトの立場だったらすぐに逃げ出している。
「壁にポンポン穴が開いていくぜ。あれでホントにシラフのパワーかよ」
「でも魔力は感じないわ。おそらく本当に……流石はクレス君の(姉)と名乗るだけある」
勇者たるスガヌマとワドウさんも冷静に分析している。
大丈夫かお前ら。
ちなみにマイさんはエルメスの近くで、アウラさんを観客の1人となって見物していた。
時たまエルメスさんと会話をしているようだけれど。
とにもかくにも酷い惨状だ。
マキナさんはいつのまにか恋愛談義を始めるし(恋なんてしたことないくせに)。
アウラさんは一発芸(物理破壊)をしているし。
エルメスさんはほとんど置物状態。
思い返せば、このクラスはたかが演劇の一役を決めるために、文字通りの死闘を演じたぐらいだ。
異常を異常と感じていない。
最初からぶっ飛んだやつらなのだ。
むしろアタフタと焦っている俺の方がマイノリティ、彼らからすれば異常者なのかもしれない。
ただいくら波瀾万丈とはいえ物語はいつか終わる。
それこそ演劇と同じように。
残り僅かだった休憩時間もついに幕を降ろす、担任のデニーロが現れたのだ。
十中八九で午後の面談を始めるべく、クレス・アリシアを呼びに来たのだろう――が。
「な、なんだこれは……」
唖然とする。
そうだ。マイノリティは俺だけじゃない。
そこにはこのデニーロ教師も含まれるのだ。
担任の登場にアウラさんたちも反応。
それぞれの行動を止め、瞬間でデニーロ先生の前に移動する。
「え」
もはや瞬間移動だったそれを目の前でやられては、彼が自然と声を上げてしまうのは仕方のないこと。
というかそういう異常な動きはするなと忠告しておいたのに……っ!
周りも流石に一歩引いた感じがする。
だが3人はまったく気にする様子もなく――
「「「はじめまして。クレスの保護者です」」」
面談に来ました――と。
そこだけは事前に教えた通り、一字一句間違いなく口にするのだった。
どうも、東雲です。
今回もまた、男の娘に次ぐヒロインの趣味を話すのですが。
ボクはこれまで、年上の女性が好きだと結構な頻度で言ってきた気がします。
では具体的には何歳ぐらいが良いのかというわけで。
一番萌えるのは27~29歳だと思っています。
これについてもう少し深掘りするのなら、結婚に焦り、頑張って婚活をしようと意気込んでいるものの、内心では『どうせ私はもう結婚できないんだろうな……』と諦めがついているヒロインです(ヒロインと呼んでいいのかというのは愚問)。
そんな傷心気味な彼女に、高校生ぐらいの主人公君が親身に接してあげて欲しい。
もちろんフラグは立つ、いや立たせるのですが、女性の方は好意を向けられても『君は若いんだ。私なんかよりもっと若い子を選びたまえよ』とか気を張って、苦笑いを浮かべながら上手く避けようとする。だけど嬉しいという気持ちも実はあって、そこに本気なんだと、主人公が更に攻めに攻めることでデレデレに――(なんか支離滅裂ですいません)
分かり易く具体例を挙げると、俺ガイルの平塚先生とか、グラブルのイルザとか。
王道姉ショタで出てくるようなゆるふわ優しい系より、気が強かったり生真面目な性格の方が萌えポイント高いです。
むしろボクは優しさ100%系のお姉さんキャラというのがそこまで好きじゃな――(割愛)。
よぉし! 明日からも頑張るぞ!!





