第112.5話「合流」
「到着だ」「到着ですね」
5番目の災厄、アウラ。
6番目の災厄、マキナ。
世界から畏怖されし2つの災厄は、長くも短い旅路を終えついに目的地へと到着した。
ここに至るまでに、仲違いや、強盗まがいのことをした事もあったが、それらの苦労努力はついに叶ったというわけである。
「しかしザルな検問だったな」
「いやいや。ワタシが空間ごと移動したのですから、検問など最初から通ってないでしょうに。アホことぬかさないでください」
ここはハーレンス王国首都。
クレスが現在暮らしている場所である。
アウラは検問がザルなどと言っていたが、実際にそんなことはない。
ただただ彼女らの入り方がアバンギャルドかつデンジャラスだっただけである。
「アウ――」
「今はアルカだぜ。頼むぜマキナ」
マキナも指名手配されているが、クレス同様まったく情報は世に出回っていない。
女性だということぐらいで。
名前も、容姿も、能力も、不明のままなので変装の必要はないのだ。
しかしアウラと言えば、クレスやマキナと対照的に、これでもかと多くの情報が開示されてしまっている。
だからこそ帝国でも使った設定をそのまま引き継ぎ、金髪のお姉さんとして振る舞っているのだ。
「つか無事に王都に来れたはいいが……どうするよマキナ?」
「どうすると言われても。流石に野宿が続きましたから、ちゃんとした寝床は確保したいですね」
マキナは荷物の中をゴソゴソと漁り、1枚の紙切れを出す。
「それは?」
「クレスの家の場所が書いてあります。つまり地図ですね」
「おぉ! これからクレスの住処へか、良いアイデアだ!」
「ふふ。帝国での分かれる際にちゃっかり聞いておきましたから。流石ワタシ」
2人は地図を片手に、少年の元へと向かう。
いや今は夕暮れ、クレスはまだ学園に残っているだろう。
アウラたちが彼の住処を訪ねたところで、帰宅前でまだ無人なのだが……。
しかしそんな細かいことを気にする2人ではない。
「――ここですね」
路地をいくつも曲がって進んで、ついに辿り付く。
「古びているが良い場所だ」
「隠れ家としては最適ですね」
アウラとマキナは共に高評価、エントランスに入り受付で軽く挨拶をする。
「ほう、アリシアさんのお知り合い?」
「姉だ!」
「姉です!」
「そうかいそうかい。いやぁお姉さんがいるとは聞いていなかったね。アリシアさんもあの容姿だから、お姉さん方もべっぴんさんだ」
ただ『まだ学園から帰ってきてない』と伝えられる。
しかし不思議な話だね、とも2人は言われた。
「数日前に、アリシアさんのお爺さんもいらっしゃったのでね」
「「お爺さん?」」
「そうそう。お姉さんたちが来るほんの少し前にも来て、今はアリシアさんの部屋の前で待っているよ。まだ帰ってくるまで時間が掛かりますよと言ったけれど『問題ないヨ』と――」
身なりの良い老人だったらしい。
「分かりました。ひとまずワタシたちも上へ行きましょう」
「だな」
アウラたちは自分たちも部屋に行ってみると告げ、階段を上っていく。
だが受付に教えられた、クレス・アリシアが借りている部屋の前には誰もいなかった。
「無人のようですが」
「……いや、いるぞ」
「?」
「部屋の中だ。なんとなく気配を感じる」
おそらく何らかの方法で、結界的なものを張っているのだろう。
マキナでは気づくことができなかった。
しかしアウラは違う。
持ち前のシックスセンスで見えざる相手に勘づいた。
「(……盗人の類にしては手練れすぎますね。怪しすぎる)」
「(マキナ。スリーカウントで突入するぞ)」
「(分かりました)」
「(私に続いて入ってくれ。じゃあ行くぜ――)」
3、2、1――と。
ドアノブを壊し、ドアを蹴っ飛ばして部屋に突入する。
やり口からしてアウラたちの方が強盗らしいが、今回ばかりは見逃すべきか。
というか注目するべきは壊したドアノブとドア……クレスはこの惨状を見て何を思うだろうか。
「っな!」
「アナタは……」
アウラとマキナは、目を見張る。
そこにいたのは、さっき聞いた通り1人の老人だった。
貴族風の衣装を纏った男は、なんと部屋の壁替えをしていた。
無機質だった壁を黄金色に塗り替えていたのである。
「む。君たちは――」
老人は手を止め、アウラたちの方に振り返る。
「な、なにをやっているのですか?」
「なにって、見て分からないかネ? 塗装だよ。寂しげな部屋だったので、学園に行っている内に黄金色にしてあげようと思ってね。サプライズというやつだよ」
マキナの質問にはっはっはと笑う。
勝手にDIYをして悪びれるどころか、むしろここの部屋主は喜ぶと疑わないらしい。
「爺さんってのはアンタだったんだな」
「久しぶりだねアウラ君。金髪にイメチェンかい? 素晴らしいセンスだね」
「いや、これはカツラだよ。つか壁がピカピカしてるんじゃあ寝にくくないか?」
「そんなことはないヨ。それとマキナ君も久方ぶりだネ」
「……どうも。エルメス・G・アイザック」
なんとこの狭い空間に、世界に災厄をもたらす人間が3人揃う。
一般人が知れば卒倒ものだろう。
王都全域に避難命令が発令されるのは間違いない。
「……あ、なにやってるんだマキナ?」
「この老紳士が色々やっているので、ワタシも自作の布教用ポスターを貼っておこうかなと。なにせ沢山余っているので」
「待ちたまえマキナ君。そこはこれから塗装するところだ。乾いている反対側からポスターを貼ってくれたまえ」
泥棒云々の話はどころにいったのか。
エルメスとマキナは勝手に模様替えを進めていく。
取り残されたアウラはというと――
「テキトーにメシ食うか。結構食材あるっぽいし。マキナと爺さんもなんか食うか? なんなら私が作ってや――」
「遠慮しておくヨ」「いりません」
「へいへい。じゃあクレスの分だけ作っといてやるか。喜ぶだろうなぁ」
「…………」「…………」
エルメスとマキナは、アウラの料理の腕を知っている。
しかしこの無邪気な好意をどう否定しようというのか。
それに自分たちは模様替えで忙しい、言葉は呈さなかった。
老紳士は壁に限らず所かしこを黄金色に変え、宗教女は自作の布教グッズを飾っていき、赤剣士は食材を片っ端から平らげていく。
部屋の主は、このカオスじみた惨状をどう受け止めるのだろうか……。
クレス・アリシアは――まだ帰ってこない。
どうも、東雲です。
もう年の瀬ということで、ちょっとしたカミングアウトをするのですが、実はボク――『男の娘』が大好きなんです。
男の娘ってなに?という方は是非ググってください。
ボクは考えました。なぜボクは男の娘が好きなのか。なぜ美少女と同じぐらい、またはそれ以上に男の娘(美少年含む)を好きになってしまうのか。
生物学的に見たら男の娘は男性なんです。自分と同性なんです。
ボクは数ある考えの1つとして、『美少女(異性)が相手だと緊張してしまうが、男の娘(同性)であれば男友達のように気軽にコミュニケーションが取れる説』を推しています。
もちろん他にも要因は色々あるでしょうが、気兼ねなく接することができる……というのが大前提なのかなーと。
むろんコミュニケーションの中にはR指定の行為も含まれ――(同人誌脳)。
とにもかくにも、男の娘についてよく考察してみると、なぜ自分が好きなのかがよく分かってません。
顔が可愛いからなんでもいい!……で終わらせるのは簡単ですが、彼らにも申し訳ないし、もったいないような気がして。
この謎をいつか解き明かせたらいいなと思う今日この頃でした。





