表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/165

第93話「時機」

「――またしても失敗ですか」


 帝都での一連の事を受け、眉をひそめる女。

 女――と一概にいっても、その見てくれは一概にしはし(がた)い。


 黒い髪と黒い瞳、白磁器のような純白の肌が女の特徴を一層引き立たせる。

 格好はといえば、白い衣装に赤い袴――いわゆる巫女服と呼ばれる衣装。

 長い髪を結う一本の簪に、手元付近にはたたまれた一本の扇子が転がっている。


 和風美女。


 一言で表すのならソレ、しかも絶世が付くレベルの。

 これを一概の『女』として括るのは無理があるだろうか。


「申し訳ありません黒姫様……」


 ここでタイミング良く側近が巫女服の『女』を『黒姫』と呼ぶ。

 真名ではないが、それこそが彼女が今使う新名であった。


「あなたのせいではありません。気に病まないでください」

「ですが『ダンジョンマスター』を失い、佐々木の侍も行方知れず、王都に向かっていた2人まで……」

「まぁ確かに。流石にやられすぎて(、、、、、、)はいますね(、、、、、)。しかしわたくしの読みが外れ、ここまで上手く事が運ばないとなると――運命を覆すナニカが勇者の近くにいるのやもしれません」

「なにか、ですか?」

「ええ――」


 黒姫の脳裏には1人の女の姿が浮かび上がる。

 自分が黒姫などと呼ばれているが、その浮上した彼女こそ闇の権化。

 

「例えばそう……1番目の災厄(、、、、、、)とか」

災厄の数字(ナンバーズ)ですか!?」

「あの人が裏で暗躍している……もしかしたらまだ正体が明るみになっていない災厄を、王都に派遣しているのかもしれません。ただあくまでこれらは憶測、判断するにはまだ尚早ですが」


 でなければ、こうも襲撃が失敗続きなのはおかしい。

 1人目の消息者となった大賢者は、独断専行したのでまだ失敗とは判断できなかった。

 しかし帝都と王都で同時に負け越した。

 戦力が集中している帝都はまだしも、手薄になった王都で騎士団が異能を有した地球人(じぶんたち)を退けるのは不自然だ。

 ――黒姫たちはそう考えている。


「あなたがそこにいるんじゃないの? また邪魔をするというのね?」



「ねぇ――エリザ」


     ※


「タバコうんまぁ~」

「エリザさん、もうそろそろ禁煙しましょ」

「禁煙なんてとんでもない! セローナいいか? ここは私の部屋だぞ!」

「別に適量であれば苦言は呈しません。ですが――」


 ここは災厄の数字(ナンバーズ)のアジト、そして1番目の災厄エリザの部屋(専用の仕事場として機能しており、寝室は別にある)。

 2番目であり補佐役のセローナの視線の先には、白と灰色に彩られた山があった。

 否、正確には鉛色の皿にのった吸い殻のピラミッドである。

 ちなみに建設まで1日も掛からなかった。

 ようは建設主のエリザがヘヴィースモーカーであることを意味するわけで――


「この身体は私のものだ。よって私の健康状態に文句は――」

「健康状態もそうですが、単純にクサイんです。いいんですか? クレス君にクサイって嫌われても?」

「……い、一応においは気にしてるし。それにクレスはお前たちと違って私に酷いことは言わない」


 クレス以外の災厄(ナンバーズ)と言えば変人ばかり。

 世界最強を目の前にしても、不遜な態度は変えない者たちだ。


「それでだ。マキナから連絡はあったか?」

「ありません。逆探知を試みましたがどうやら魔導具ごと壊れているらしく……」

「アイツ――やったな?」

「やりましたね。おそらく」


 やったな……というのは『仕事を放棄(さぼったな)?』という意味である。


「情報を集めてみれ、クレス君の通う学園では近々……学園祭?文化祭?が催されるらしいです。かなり大規模なイベントらしく、年齢問わずたくさんの人が来ることでしょう」

「……アイツは布教脳だからなぁ。くそ、要らん情報がマキナに渡ってしまったようだな」

「どうします? 一応クレス君にアウラさんたちの行方を尋ねる文書は送りましたが……」

「様子を見よう。クレスの返答待ちだ。だが――」


 帝都と王都で『正体不明(アンノウン)』が現れたことは、エリザにも報告が入っている。

 

(あの性悪女なら――祭りで来そうだな)


 エリザの脳内には不敵な笑みを浮かべる女が1人。

 因縁の相手である。

 もっと言うのならば、災厄の数字(ナンバーズ)という組織を作った理由がその女――黒姫に対抗(、、、、、)するため《、、、、》なのだ。


「クレス君にも、そろそろ黒姫のことを伝えるべきでは? 正体不明な者たちの親玉です」


 黒姫のことを知っているのは災厄でもほとんどいない。

 エリザがクレスに『全ての情報』を伝えていないのも、もちろん思惑があって。

 

「……まだだ、まだ、教えたくはない」


 エリザは剣呑な表情でそう呟いた。

 そこにはボスとしての威厳というより、大事な誰かを思う憂いや心配が垣間見えた気がする。

 

「とりあえずマキナとアウラは消息不明。学園でも祭りが差し迫っていると聞く――アイツに連絡を入れておけ」

「彼……いえ、彼女にですね。了解です」


 名前を直接出さなくとも、セローナはエリザが指名した人物をすぐ察知した。

 長年の関係があってこその一連だ。


「お前の好きにはさせんよ」



「なぁ――黒姫」

 久しぶりの大遅刻更新、ホントにすいません。


 遅刻に多少からんだ話をすると…

 ここ数日で思ったのが「兼業作家スゴイ!」ということ。

 これまでは『学業×執筆』でしたが最近『学業×執筆×執筆』になりもう話が違います。毎日毎日が緩みなく、苛烈に流れています。

 ですがボクなんて、言ってもたかが学生です。

 会社や現場で働いている社会人の兼業作家はもっともっと大変なんだろうなと。

 よくできるなぁと尊敬の念しかありません。


 で、尊敬するだけじゃなくて見習えって話ですよね。

 分かっています。次の更新こそ間に合わせてみせますよ……!

 あ。10/6(土)更新の予定です。よろしくどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジア文庫より新刊が出ます!
画像をクリックすると特設サイトに飛びます
<2020年12月19日発売>
大罪烙印1
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ