第89話「防衛3」
「――報告いたします!」
この防衛戦の指揮をとる『戦姫』ローズの元に帝国兵が駆け足で寄ってくる。
彼女はその視線を彼方から逸らすことなく、耳をだけを傾ける。
「目視にて剣聖の《解放》を確認! どうやら対象Σと交戦に入る模様です!」
巨大な敵に送り出した2人の勇士。
片割れの大本命がついに、このタイミングで本領発揮。
そう〝この〟と称したのは――
「森から逃れてきた魔獣の半数以上はもう討伐し終えた――斥候からもそう報告が来ております!」
「思っていたほど難航しないわね……」
「良いことかと!」
「まぁね。嬉しい誤算とはこのことかしら」
拍子抜け……とは言わずとも、勇者率いる帝国軍は、街へと迫る勢力を順調に駆逐していた。
中には上位種もいたようだが、大きな損害を出すこともなく対処完了。
ようはとても上手く戦を回せていた。
ローズの脳裏には既に終局図が見えてすらいる。
「先行させていた部隊をいくつか戻す。城を固めるわ」
「っは!」
「もう帝都の防衛は折り返し、結果は見えている。マイ・ハルカゼの様子はどう?」
「よく動いてくれています! 問題はありません!」
「……そう。彼女は他2人の勇者に比べて自衛の術がないし、護衛の兵士はそのまま目を離さないように伝えておきなさい」
勇者マイ・ハルカゼには、ローズが密かに護衛を付けていた。
もし魔族や第三勢力がこの戦いに乗じて襲おうとしているなら、まず狙われるのは彼女だと判断したからだ。
「――ラスボスは剣聖に任すとして。わたくしたちも抜かりなくやりますよ」
◆◇◆
もしこの帝都防衛の間に、勇者が狙われるとしたら――
そうなれば一番危ないのはマイ・ハルカゼ――
このローズの〝警戒〟は苦しくも的を射ていた。
「――ふふ、頑張ってるなぁ」
正体不明の1人、ダンジョンマスターと呼ばれる少年。
彼は医療室にあてられた空間にて、その『異能』を持って救命にあたるマイ・ハルカゼの姿を捉えていた。
もちろんダンジョンマスターは彼女と同じ空間にはいない。
空間と空間を繋ぎ、遠方から一方的に様子を窺っていた。
「護衛っぽい人は1、2、3……4人か。まぁまぁいるね」
どれも練度は高そうだが、空間操作というチート能力には関係ない。
一瞬で現れ一瞬で消えるだけ。
戦闘能力は高くないため、奪取だけを考えて行動をする。
「――楽しそうですね、少年」
自分以外だれも居ないはずの空間。
突然背後から声を掛けられビクンと肩を揺らす――瞬間。
「っな」
「――どうも」
目の前には1人の女。
巨大な棺を背負った、冷めたい瞳を構えた人物である。
「だ、誰――」
本来答える必要のない質問。
しかし女は応えた。
――最期の手向け、名乗ってやってもいい。
「ワタシの名はマキナ――」
「6番目を冠する災厄である」
今日から早いことに9月が始まりました。
一応は秋ということになるのでしょうか。
今季は10月からインデックス3期のアニメが始まります。
とあるは自分のルーツでもあるので、とても楽しみです。
今回の話は文量が少なかったです。
久しぶりに憤ることがあって、正直イライラして書けませんでした……
誤字脱字や変な表現が多いかもです。
申し訳ありません。来週はしっかり書きます。





