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「ねぇねぇ、こんなのとかどぉ?」


 ジェーンちゃんはいろいろな服を、俺の前に広げてくれる。

 ……可愛い服だと思う。可愛い服だとは思うのだが。

 俺が着るには可愛すぎやしないか!? めちゃくちゃレースとかついてるんだが!

 いや、今の俺は女なのだからこんな服も似合ってしまったりするのか!?

 レースたっぷりの可愛い服を身に着けた、俺を想像してみる。

 に……似合ってしまうな。だけど変な扉が開きそうだから、ダメだ! 前世の俺がそう言っている!


「も、もっとシンプルなデザインがいい!」

「んもー似合うと思ったのに! じゃあ、こっちは?」


 ジェーンちゃんが不服そうな顔で引っ張り出してくれたのは、装飾がない白のワンピースだった。

 首元まで隠れるデザインでスカートは長く、要所要所に銀の糸でシンプルな刺繍があしらわれている上品な服だ。

 これならいいかもしれないな。だけど……。


「デザインは素敵だと思う。だけど……スカートが長すぎないかな」


 この服はスカートがくるぶしまであるので、どうにも動きづらそうだ。


「貴女、もうすぐお姉さんでしょ? 足を隠さないとダーメ。変な輩が寄ってくるわよ!」


 ジェーンちゃんはそう言うと、「めっ!」と目を怒らせつつ俺を叱る。

 ……ジェーンちゃんの言うとおりか。

 否応なしに今の服を着ることになっていたから失念していたが、この国では一定以上の年齢の女性の過剰な肌の露出は非常識だとされている。露出なんてしているのは、子どもか、変わり者か、『そういう商売』をしている者かの三択だ。

 今は栄養不足もあってまだ子どものように見えるからいいが、もうちょっと成長したら一気に変態扱いになるな。


「それにこれは、スリットが入ってるから動きやすいわよ。中に厚手のタイツを履けば素足も見えなくなるし。黒のタイツがチラチラ見えたりしたら、ちょっとおしゃれでいいわよぉ」


 ジェーンちゃんは出してきた服のスカートをぺらりと捲ってみせる。

 ほんとだ、結構深いスリットがざっくり入ってる。これなら、戦うのに支障ないか。


「じゃあこの路線のデザインのを三着くらいと、タイツとブーツがほしい」


 値札を見ながら総額に当たりをつけてジェーンちゃんに言うと、「はぁい! 毎度あり!」と元気に返された。

 選んでもらった服を身に着け鏡の前に立とうとすると、


「ちょっと待ちなさいな」


 と声をかけられる。


「どうしたんだ? ジェーンちゃん」

「髪、ぼさぼさ。梳いてあげるから。ほら、こっち」


 ぐいぐいと手を引かれて、優しく髪を梳かれる。そしてついでとばかりに、髪に白い花の髪飾りをつけられた。


「ほら見て、とびきり可愛い! 本当に素敵よぉ」

「お、おお」


 髪を整えられたあとは、鏡の前にずいと押し出される。

 鏡の中には……目を瞠るほどの美少女が映っていた。

 ぼろぼろの格好でも美少女なのだ。ちゃんとしたら、もっと綺麗になって当然なのだが……。これはすごいな!


「俺、可愛いかも……!?」

「だから、そう言ってるでしょう」


 ジェーンちゃんはそう言って、楽しそうに笑う。

 やばい。変な扉、開いちゃったかもしれない……っ。

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