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親の町工場を立て直そうとしていたが、志半ばで他界。転生した先も零細の貴族家だったので立て直します  作者: 工程能力1.33
外伝4

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第186話 リリア登場

 時間はイザベラたちがカッター伯爵にフレミング商会の仕手戦で勝利した直後。アーサーはスティーブの命令で、イザベラの監視を強化するため経済革命クラブに所属となっていた。

 その経済革命クラブの部室にはイザベラ、ミハエル、エリザベス、それにアーサーがいた。

 イザベラは椅子に座って、背もたれに体をあずけ、天井を見上げる。


「このクラブの次の目標が欲しいわね」


 フレミング商会の仕手戦が終わってからというもの、身を焦がすような仕手戦の魅力に取りつかれたイザベラにとって、毎日が灰色でつまらないものに映っていた。

 エリザベスがそんなイザベラを見てクスクス笑う。


「イザベラがおじさんの娘だってばれてから、みんなが近づきづらくなっちゃったのよね」

「そうよ。ニックがばらしたせいでね。同級生が親同伴で家に謝罪に来たりして、さらにその噂が広まったから、クラスの中に壁が出来たように感じるわ」


 イザベラはニックによって、アーチボルト家の娘であることを暴露されたのを思い出し、怒りから髪の毛をくしゃくしゃと搔きむしった。


「ジャスミンとは仲良くなれたじゃない」


 ミハエルが苦笑すると、すかさずエリザベスが口を挟む。


「それを言うなら、ミーシャとでしょ。おじさんに泣きながら怒ったりして。あれから熱いこと」

「ちょっと、リズ!」


 イザベラは慌ててエリザベスの口を閉じようとした。

 これは、つい先日の暗殺未遂を言っている。

 カッター伯爵の息子、ジャクソンによって暗殺者を差し向けられたイザベラとミハエル。イザベラはその攻撃を躱したが、ミハエルは致命傷を負ってしまった。そこにスティーブが登場し、治療したことで一命をとりとめたのだった。

 登場した瞬間に娘に対して苦言を言うスティーブに対し、ミハエルの治療を急ぎたいイザベラが本気で怒ったことをエリザベスが言っている。あの時は、スティーブはイザベラが「お願いよ、ミハエル。治ったらキスでもなんでもしてあげるから、死なないで!」と言った瞬間を聞いて、卒業までは清い交際しかさせないと苦言を呈したのであるが、その後治ったのでキスをしたことを指していた。

 なお、スティーブにはキスしていることは内緒にしてある。

 娘を彼氏に取られる父親の心情は、普段は冷静なスティーブすらも狂わせるのである。この数年後、結婚の報告に行ったときの修羅場を、ミハエルはこのころから予感していたのは余談である。

 さて、そんな部室のドアをノックする音がした。

 四人が振り返ると、良いも悪いも言わないうちにドアが開く。

 そこに立っていたのは同じ学校の制服を着た身長160センチメートルほどの少女。砂と混じった砂金のような色をした、腰まである長い金髪と、琥珀色の瞳。さらには健康的に日焼けした小麦色の肌。

 そんな彼女はぶっきらぼうに言う。


「入部希望なんだけど」


 その物言いにイザベラはカチンと来るが、喧嘩になりそうになる前に、エリザベスが先に落ち着いた声で訊ねる。


「どなた?」

「リリア・ヘス・レミントンよ。クラスメイトの顔も知らないの?」


 リリアと名乗った少女はあきれ顔になる。

 イザベラとエリザベスはクラスメイトに興味がないので、顔も名前も覚えていないのだ。

 さらには――――


「僕の許嫁でもあるんだけどね」


 とアーサーが口を開いた。

 リリア・ヘス・レミントンはレミントン辺境伯の娘である。といっても、スティーブがメルダ王国をうち破った時のレミントン辺境伯ではない。彼は現在引退しており、息子があとを継いでいた。

 そして、リリアとアーサーの結婚の話は、アーサーの母親であるクリスティーナが進めていた話であった。

 アーチボルト家は西部派閥になる。そして、クリスティーナの出身であるマッキントッシュ家は北部派閥。ここで南部との繋がりを求めて、レミントン辺境伯に話を持ち掛けたというわけである。

 アーチボルト家は子爵であるが、スティーブが竜頭勲章ということで、実質的には公爵と同等に扱われている。レミントン辺境伯としても、南部がメルダ王国の領土を切り取って拡大した恩と、現在メルダ王国の王妃となっているシェリーの実家ということもあり、南部を安定させる目的で大賛成であった。

 アーサーは結婚については親の意思に従うつもりであり、この結婚に反対する者はいなかった。

 相手のリリアを除いては。

 そう、リリアはこの結婚に反対であった。何故ならば、彼女は土属性の魔法使いである。それに対してアーサーは魔法が使えない。だから、リリアはアーサーを下に見て、自分の結婚相手には相応しくないと考えていたのだ。

 しかしながら、家格を考えるとただ魔法が使えないからというだけでは、結婚は回避できないと思い、より近くでアーサーの瑕疵を見つけようとして、経済革命クラブの部室のドアを叩いたのであった。

 アーサーだけがそんな雰囲気を感じ取り、表情には出さないものの、内心ではため息をついていた。



まだ全部は書き終わってませんが、月末までには投稿したかったので。


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