本物の綿貫月子さん
種明かしです。
生徒会長は少しばかり惚けてしまった顔を、いつもの爽やかなイケメンに戻し、髪の毛をサラリとかき上げると、カオルの方を向いて聞いた。
「中里君、質問しても良いかな?」
「はい」
カオルは先ほどの熱の入った調子とは打って変わって、おどおどした顔で生徒会長に向いた。生徒会長は怒ってはいないようだ。
「月子さん本人、というのは、どういうことなのかい?」
「え・・・と」
生徒会長とカオルはしばらく見詰め合った。
全校生徒も、シン・・・と黙っている。
誰も息をしていないかのようだ。
「私は、綿貫月子です」
いきなり、月子さんが喋った。
カオルは驚いて月子さんに振り向いた。するともう一度、月子さんが口を開いた。
「綿貫月子です、私は・・・綿貫、月子、わ、私、です」
月子さんは、何を言おうとしているのだろうか。自分の持てる語彙を使って何かを伝えようとしているのだ。
「つまり、月子さんが、月子さん、本人ってこと?」
カオルが聞くと、
「はい」
と、月子さんが答えた。
「どういうこと?でも、これは、この身体はロボットでしょう?」
カオルが聞くと、月子さんは「はい」と答えた。
それから生徒会長がやっと口を開いた。
「中里君、悪かった。月子は、誰かの代わりのロボットではなくて、僕の作った、単なるロボットなんだよ」
ついに、生徒会長が種明かしをすると、全校生徒が「ほお~」と変なため息を漏らした。
「単なるロボット?」
カオルはキョトンとして生徒会長を見た。
「そう、ロボット派遣団体とは無関係の、僕の作った、僕のロボットだ」
「はい?ああー・・・ああ、そういうこと、ですか」
カオルはやっと、生徒会長が何を言っているのかがわかった。
ロボット派遣団体とは関係なかったのだ。そこにはイジメも、不登校もなく、“本物”の綿貫月子さんもいないのだ。
生徒会長は申し訳なさそうに頭を掻いてすべての種明かしをした。
「つまり、これは僕の個人的な研究で、どの程度よく出来ているかを調べるために、君を利用させてもらったんだ。君は、入学式で欠席だったからね、1人だけ月子がロボットだということを知らないから都合が良かったんだ。
それで、君の隣で授業を受けている月子がロボットであることにいつ気付くかという実験をさせてもらったというわけさ。
おかげで、今日、君が月子のことに気づいたというデータがとれた。入学式から、いや、君が初めて学校に来てから、9日目だ。貴重なデータがとれた。感謝しているよ。
ありがとう、中里君」
生徒会長はカオルの手を取り、丁寧な礼をした。
色んな意味で背中がゾワゾワしているカオルは、顔が引きつっている。
「つまり・・・」カオルは引きつった顔を片手で直しながら、息を整えてこう言った。「私を利用したのね?」
「あ、ああ。そうだ。す、すまなかったね。嫌な思いを・・・させてしまったかな」
「嫌な思い?」
カオルの剣呑な様子に、生徒会長は少し後退さった。
カオルは一度生徒会長を睨むと、すぐに笑顔になり、みんなの方を向いて言った。
「全然、嫌な思いなんてしていないわ。色々あったけれどね。わかってスッキリしたもの。なるほどね」
そう言って、カオルは月子さんの頭を撫でた。それから、講堂の一番後ろを指さして、手のひらを上に向けると、犬に「来い」とでも言うように、手招きをして見せた。
その時のカオルの顔は、笑顔なのに、なぜか怖かった。
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