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【受賞作品・書籍化中】私、もう興味がありませんのーー虐げられた愛し子は隣国でお店を開く事にしました  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 王国編

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【受賞記念】番外編 精霊さん

 こちらは第二話で父親である公爵代理に「領地にでも戻らせて頂けませんか?」と言った後から屋敷を出る間の話です。

 

『ねえ、アレクシアが追放されるのですって』


 風の精霊姫(風の姫)の言葉に、水の精霊姫(水の姫)が口を尖らせて言った。

 

『なんでー? 意味分かんない。ねぇ、土のは何でそうなったか分かる?』


 肩をすくめる土の精霊。そして火の精霊は先程台所からくすねてきたお菓子に夢中だ。

 風の姫はそんな三人の様子に頭を抱えた。彼らは事の重大さが分かっていないらしい。


『人間から見たら、ミラが愛し子なんですって。いや、確かにミラもそうなんだけどね。私たちと共に頑張ってきたのは、アレクシアじゃない』

『そうだねー! カロリーナの教えを毎日欠かさず頑張ってたもんねぇ』

『それよりも、アレクシアが追放されるのよ。追放って意味分かる?』


 慌てて訊ねる風の姫に、水の姫が首を傾げる。


『追放って何?』


 やっぱり事の重大さが分かっていなかったようだ。


『アレクシアが、この国を追い出されちゃうのよ。簡単に言うと、この国から出てけって事』

『え、ええー! アレクシア、この国から出てっちゃうの?!』


 水の姫は目を丸くして驚いている。彼女は精霊四天王の中では最古参の土の精霊王子に次ぐ古株だ。けれどもとことん人の情勢には疎い。興味がないと言ったらいいか。

 ちなみに風の姫は三番目である。

 

 土の精霊もその言葉を理解したのか、目を見開いていた。


『そうよ。さっき、屋敷に来た時「あいつを国外に追放するいい機会だ……」って言って、書類を作成していたのよ! また後でアレクシアも呼び出されるようよ』

『え、それじゃあ私たち、どうすればいいのぉ?』


 水の姫が半べそをかき始める。彼女はアレクシアと離れるのが嫌なのだ。風の姫が話そうとした時、火の精霊が声を上げた。


『んじゃあ、俺はアレクシアについてくぜー!』


 お菓子を頬張っていたために、話を聞いているのだか分からない火の精霊が一番に答える。彼は次に土の精霊を見た。彼は火の精霊に同意するように頷く。

 最初は呆然としていた風の姫は我に返って――。


『あんた、話を聞いていたのね……聞こえてないかと思ったわ』

『食べてても、耳はヒマだろ〜? ちゃんと聞こえるっつーの!』

『……まぁ、そうかもしれないわね』


 大抵の話は聞いていないと思うのだけれど――そんな言葉を水の姫は呑み込んだ。きっと彼はアレクシアの話題だからきちんと聞いていたのだろう。火の精霊は特に彼女の事を好きだから。

 そんな事を考えていた風の姫の袖を、水の姫がグイグイと引っ張った。


『ねえ、アレクシアがあそこ歩いてるよぉ? 珍しいねぇ〜』


 無表情のまま廊下を歩くアレクシアを発見する。それを見て、風の姫は何となく嫌な予感がした。


『追ってみましょう。何となく、嫌な感じがするわ』

『分かった〜!』


 そしてたどり着いたのは執務室であった。


「アレクシアです」

「入れ」


 アレクシアに続いて精霊たちも入っていく。どうせアレクシアとミラ以外には見えないのだから問題ない。アレクシアの父親――精霊たちの中では『あの男』と呼ばれているが、彼は眉間に皺を寄せながらアレクシアを睨みつけた。


「お前は本当にこの家の役立たず、だったな」

『なーにが役立たずよ! お前の方が仕事もしない、役立たずでしょう? カロリーナの手伝いをせずに遊び呆けてたくせに』


 精霊は声が聞こえないので言いたい放題である。他の三体も止めるつもりはないのか、『わっかるぅ〜』と言ったり頷いたりしていた。


「そんな家のお荷物であるお前は、ミラのような精霊の愛し子となるために修行へと出す事にする」


 その言葉に、風の姫は怒り心頭だ。

 

『つまり追放って事でしょう? この男もそうだけど、今の国王も「それがいい!」とか言って、書類の内容も見ずに印籠を押していたわよね。よく読んだら、アレクシアの籍を外す事だって書いてあるのに……ほんと、この国大丈夫なのかしら?』

『別に国の事を心配しなくていいじゃーん。私たちはアレクシアに着いていくんだから』

『そうだぜ〜! それに全員が出てくわけじゃないから大丈夫だろ?』


 水の姫と火の精霊の言葉に同意する土の精霊。そんな三人を見て、風の姫はため息をつく。

 

『お気楽でいいわねぇ。まあ、確かにその通りだわ』

 

 そのまま静かに話を聞いていた精霊たち。だが、しばらくして土の精霊が顔を上げた。


『土の、どうしたのぉ〜?』

『硬貨の音が……聞こえたな……』


 確かに土の精霊の言う通り、あの男の方から硬貨のぶつかり合う音がする。

 

『風の姫……幻惑魔法は使えるだろうか……?』

『え、土の? 使えるけどどうして?』


 風の姫は土の精霊に目を丸くして訊ねる。


『硬貨は……人間の生活に必要。銅貨より、金貨の方が効果がある……』

『そうなの? なら土のの言う通り、魔法をかけてみましょうか』

 

 あの男が無造作に引き出しの中に入っている銅貨を取ろうとする。その前に風の姫は幻惑魔法を男へと放つ。

 幸い、魔法は彼がお金を見る前にお金にかかる。あの男が銅貨だと思って手に取ったのは、金貨であった。彼は金貨を床へと投げつけたのだ。

 

 俯いて落ちたお金を拾うアレクシアを嘲笑う男。その二人を見て風の姫は眉間に皺を寄せた。


『まあ、いいわ。まずはここから離れるのが先決ね』

『姫さんたちも俺たちも、アレクシアに付いてくんだからだいじょーぶだろ!』


 精霊たちの会話はアレクシアの耳に入ってくる事はないのだが……何となくアレクシアだけは、精霊たちの温かい気持ちを感じ取っていた。

 少々本文との矛盾がありましたので、後半修正いたしました。

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