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【受賞作品・書籍化中】私、もう興味がありませんのーー虐げられた愛し子は隣国でお店を開く事にしました  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 王国編

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39、終幕

 小高い丘の上。ベルブルク領を一望できる場所だ。ここにひとつのお墓が建っていた。そのお墓の前には母親の好きだったカサブランカを供えた。

 アレクシアは持ってきた花束をお墓の前に置いた後、墓標の前に座り、今までの事を報告した。


 現在、アフェクシオン王国のニンフェ城では、ヴィクター様から王位を譲られたハリソン様が、国を取り巻く状況を包み隠さず開示している最中だろう。

 

 開示された内容は、愛し子であった王子妃に愛し子としての力は無かった。それは彼女の父である公爵代理が彼女に必要な訓練をさせなかったためだ。

 現在、彼女はその影響で力を行使する事ができず、その影響で王国内にいる精霊が減ってしまったことで、前国王が発明した機器がその影響で利用できなくなっている、という話だ。


 民はその事実を聞いて驚愕するだろう。アフェクシオン王国はもう精霊の国と呼ぶ事ができないのだから。


 

 そしてハリソン様はその責任を取って、宰相様に王位を譲り、宰相様を頂点とした新生王国が誕生するのだ。


 精霊の愛し子に頼る国、今までが歪んでいたのだと私は思っている。新生王国にはベルブルク公爵家は必要ない。これからは精霊の愛し子の力だけに頼らず、生きていってほしいと思うから。


 

 エアルによると、ミラの暴走と私の移住により、王国にいる精霊の数は以前の半数以下に減っているらしい。ミラが消滅させてしまった精霊もいるが、それ以外にも帝国や共和国に精霊が現れるようになったのだ。それが影響しているのだろう。


 だから私は今のところベルブルク領に戻るつもりはないし、その事は次期国王である宰相様にも伝えてある。彼は少し寂しそうな顔をしていたが、意思を尊重してくれた。



 ――こうして、ベルブルク公爵家は愛し子不在のまま王家預かりとなった。

 

 


「お母様、私が行った事が全て正しいとは思っておりません。もしかしたらより良い道もあったかもしれませんが……私は私の思う道を進みます。それがお母様の仰る通り、茨の道でも……お母様、私をいつまでも見守っていて下さい。これからも精霊の愛し子として生きていきます」


 

 手元にある母の形見の本と、ミラが付けていた髪飾りを手に、母の墓で祈った。


 あの後宰相様より渡されたのが、割れた赤い珠と髪飾りだった。「これは君が持つべきだろう」と言われて私は受け取る。

 ひび割れた赤い珠は、ミラが付けている時よりも色褪せていた。力を失ったからだとエアルは言っていた。だが、なんとなくこれは私が持っていた方が良いと思い、共和国に持っていくことにしたのだ。

 

 報告したい事は沢山ある。が、一先ず彼を紹介したい、と私は墓標に話しかけた。



 


 そんなアレクシアを見ている影が。

 母との逢瀬を邪魔をしない様にと、ライナスは彼女の声が聞こえない場所で佇んでいた。


 ライナスはこちらに背を向けている彼女を見守っていた。公爵家内で庇護されず、庶民として……精霊の愛し子として生きていく彼女には、これから何が待ち受けているのだろうか、願わくは安らかな生活を……と思っている。

 

 それを叶えるのはライナスの頑張りが必要だ。そう彼も決意していたところで、声をかけたのはアレクシアだった。



「ライ、ありがとう。母を紹介するわ」



 彼女は笑顔で墓標の前にライナスを連れていく。



「お母様、彼はライナスさんです。今回の件で私を支えてくれたの……私の大切な人」



 アレクシアは目に涙を溜めて話す。彼のお陰で愛を知った事を。そして彼女が言い終えると、一筋の涙が地面にこぼれ落ちた。

 ライナスはそんな彼女の肩を抱き、墓標に宣言する。



「私はシアを幸せにします。どんな時でも二人で乗り越えていけるよう、手を取り合って生きていきます」

「お母様、安らかにお眠りください」

 


 二人がそう呟けば、暖かな風がアレクシアとライナスとお墓の間を通り抜ける。笑顔で微笑み合う二人を見ているのは、風に揺れたカサブランカだけだった。




 今までありがとうございました。これで完結となります。

よろしければ、最後に評価をいただけると嬉しいです。


そしてこの作品を執筆している間に、ぼちぼち書いていた作品を載せました。

ぜひこちらも見ていただけると嬉しいです。


↓記憶喪失の私と番と(題名は仮)

https://book1.adouzi.eu.org/n8180hu/




後書き

 長期間、お付き合いいただきありがとうございました。

執筆スピードが遅いため度々お休みを頂きましたが、改めてある程度の期間で毎日投稿できたことに驚きを隠せません。その原動力は、皆様の評価やPV、感想等、「読んでもらえている」という事を実感できた事だと思っています。


 正直まだまだ構成が甘かったり、文章が分かりにくい部分があったりと、拙い部分はこの作品でも多かったと思いますが、20万文字以上の小説を完結まで持ってこれた事は、私の中でもひとつの自信になりました。

 ひとえに、皆様の応援と励ましがあったからです。本当にここまでアレクシアたちを応援いただき、ありがとうございました。

 

色々本文について書きたい事は多かったのですが、長くなるのでお礼のみに留めさせていただきます。本当にありがとうございました!




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