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【受賞作品・書籍化中】私、もう興味がありませんのーー虐げられた愛し子は隣国でお店を開く事にしました  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第二章 ブレア領

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20、贈り物

本日は2話投稿しています。

こちらは1話目です。

 サラさんとそんな話をして2ヶ月ほど経った。


 あの後、改めてノルサさんがやってきて、今回のアクセサリーの件を話し合う。

 ノルサさん曰く、「うちの風魔石と水魔石担当は小石に魔力を込める事ができなかった」とのことだったので、風と水の魔石については、私が魔力を込めて提供する事になった。

 

 それだけではない。発明したのは私だと言うことで、毎月利用料を払うとノルサさんが主張し始めのだ。

 最初は以前お世話になった分もあるため拒否していたのだが、お互いの擦り合わせで「半年間は利用料無料」と言うことで合意する。



 ノルサさんが売り出してから2週間後。私はサラさんが持ってきてくれた作品をホリーさんとダドリーさんに見せて、これを売り出してはどうかと提案したのだ。

 

 ホリーさんは王国で魔石を宝石に見立てて売り出している事を耳にしていたらしく、二つ返事で了承してくれた。そのため、私はホリーさんの店に小石と中石を卸す事になる。

 そして魔石を卸すついでに、土魔法での接着も魔力量の多い私が引き受ける事になった。


 金額を見れば確かに小石は割に合わないかもしれないが、これでもっと魔石が身近になればいい、そう思っている。



 

 ホリーさんのところで売り出して2週間、ノルサさんが売り出して1ヶ月後。

 

 サラさんがやってきて、売れ行きは好調だと聞いた。最近は護身用として、中石や大石で作られたアクセサリーを購入したいと貴族からも話が上がっているそうだ。

 そのため、以前よりも冒険者用に用意している風の魔石の消費量が多くなった、と笑っていた。


 

 そうそう、ホリーさんのアクセサリーを購入した最初のお客さまが、なんとルイゾン様だったらしい。


「魔石を使ったアクセサリーを売り出したと聞いたよ。これがあれば僕も領地の視察に行けるね」

「いえ、旦那様。そもそも書類仕事が溜まっておりますので、外出は難しいかと」

「ははは、ジェイクは手厳しいな」


 そう笑いながら、男性用の首飾りを購入されたそうだ。


 その事もあってか、領民の中でも小石を使用したアクセサリーを買う人もぼちぼちと現れたらしい。それだけでなく、女性冒険者も買い求める人が多いとか。

 「万が一の時のために付けておくと、安心できそう♪」とある女性冒険者に言われたそうだ。


 こちらの売れ行きもなかなか好調とのことで、私は嬉しく思いながら小石に魔力を込める日々を過ごしたのだった。



 

 小石の魔力込めも一旦落ち着き、夕陽が山に隠れ店の中に光が届かなくなった頃。

 私は店を閉めるために扉を開けようとドアノブに手を触れる。すると、自動的に扉が開いたのだ。


 驚きで立ち竦んでいると、目の前には私より頭ひとつ分大きい男性で、綺麗な銀髪の――


「あれ、シアさんかな?」

「あ、ライさんでしたか」


 自動で扉が開いたのではなく、ライさんが開けた事にホッとする。

 丁度その姿が目に入ってしまったのか、彼は心配そうにこちらを見ていたので、慌てて弁解した後、彼を店に入れた。ついでに看板も閉店に変えて。


 いつものように魔石を選んでいるライさんを観察しながら、私は魔石に魔力を込める。今込めているのは、明日ホリーさんのところへ納品する分だ。

 最後の一つが入れ終わり、改めて小石を光に翳してみる。やはり緑色の魔力が光に反射してキラキラと輝いており、宝石にも負けない美しさだと私は思う。


「それが小石かい?宝石に負けず劣らず綺麗だね」


 魔石を選び終わったであろうライさんが、私の掲げていた小石に顔を近づけていた。そのため思ったより近くにある彼と目が合う。

 その瞬間、私の顔が茹で上がったように熱を持った。


「え……ええ、そうです。小石が有効活用できれば良いなと思いまして……そ、そうでした!」


 私はしどろもどろになってしまった自分を落ち着かせるため、近くに置いてある贈り物を手に取り、ライさんの顔の前に押し出した。


 いきなりの私の行動に目を見張っていたライさんだったが、私が「お世話になっているので、贈り物です……」と恥ずかしさから視線を外してボソボソと呟くと、彼は微笑んでいた。


 

「ここで開けてもいい?」

「も、勿論です。どうぞ」


 

 後ろでは精霊さん達、特にエアルとディーネがニマニマとこちらを見て笑っている。

 そんな彼らに見守られながら、ライさんは丁寧に箱を開け、中身を見た瞬間――固まった。だが、まだ余裕を欠いていた私にはその事に気づく事ができず、沈黙を破るかのように言葉を紡いだ。


 

「それは魔石を使った腕輪ですっ。腕に嵌めれば自動で調節するように魔法陣を込めてありますので、邪魔にはならないと思います。よければ受け取ってください……」

 


 言い切った私は恐る恐る彼の顔を下から覗くと、ここで初めてライさんが微動だにしていない事に気づいたのだ。


 

「あの……ライさん?」


 

 そう尋ねると、ライさんは現実に戻ってきたのか、こちらに顔を向けた。だが、視線は彼方此方に動いたままだ。



「……本当にありがとう!シアさんから貰えるなんて、嬉しいよ!」



 彼の笑みに嘘はない、と思う。だが何故か挙動不審である。

 


「……ちなみに、腕輪を選んでくれたのは、なんでかな?」

「身に付けていても、邪魔にならない物ということで、ネルさんからお薦めされまして、私が選びましたの」

「ああ、そうだったんだ……」

 


 ライさんは額に手を当てて少し疲れたような顔をしていたため、贈り物に問題があったのかと危惧していたのだが……。


 

「ごめんね、心配させちゃったかな?ちょっとネルさんの言葉を思い出して……」

「え?」

「『きっと良い事がありますよ』って最近ずっと満面の笑みで言われていたんだ。このことかって納得していたんだよ。本当にありがとう!依頼の時付けさせてもらうね」



 そう笑みを湛えて話しているライさんの視線は、落ち着きを取り戻していて、私はそっと胸を撫で下ろしたのだった。



 

 その後、「腕輪は異性に好意を示す時に渡すもの」だと知るのは、すぐのこと。

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