15-3 俺の嫁?
私も行くと言い出した妹を、いや呼ばれてないからと言うも絶対行くの一点張りで頑として受け付けない。
頑固な妹はこうなったら梃子でも動かないので、俺は説得を諦め、仕方ないので連れていく事にした。
妹と二人で放課後の廊下を歩く。
帰る者、部活に行く者とすれ違いながら、そのまま生徒会室に向かった。
遠くから野球部の掛け声、吹奏楽部の音楽が聞こえる。
俺と妹……所謂優等生と劣等生が、(誰が劣等生じゃ)揃って生徒会室に向かうとか、どこかのラノベで読んだことがある。
えっと、俺は魔法でも使わなきゃいけないのか?
などと、いつも通り下らない事を考えていると、生徒会室の前に到着する。
ラノベと違って特に攻撃される事は無いと思うが、妹を後ろ下げさせ俺が扉をノックする。
中から「どうぞー」と白井先生の声が聞こえた。
「失礼しまーす」
そう言って扉を開けると、椅子に座ってた白井先生が満面の笑みを浮かべ立ち上がり
「ゆうくーーー、」
満面の笑みで昔のように俺の名前を呼びながら近寄って来る途中で、先生は妹の姿を捉えたらしく、慌ててその場に立ち尽くす。
おそらく妹を見て名前呼びはまずいって思ったのだろうか?
「裕君と栞さんも来てくれたのね」
ただ先生は少し考えた後、妹と俺がおなじ長谷見姓なので、やっぱり名前で呼んでいいのかと思い直したか? そい言いながら近づいて来る。
先生は俺と出会った頃の様な呼び方から、教師の呼び方に一瞬で戻し、何事も無かった様な顔で座っていた椅子に戻る。
「すみません、妹がどうしてもと言うので連れてきました」
「あら、良いのよ栞さんにも声を掛けたかったから」
妹は、じゃあなんで兄にだけ声掛けたのよと、言わんばかりな目で先生を睨みつつも言葉では
「図々しく付いてきてすみません」と声をかける。
その妹の凄まじいオーラ? に恐れを感じつつも、平常心を保つように先生は答えた。
「い、今はまだ生徒会のメンバーは誰も来てないのよ、座って待ってて」
そう声を掛けられ、俺と妹は先生の目の前に並んで座った。
その後3人でぎこちなくクラスの雑談をしていると、コンコンとノックの音が聞こえる。
「はーい」
先生が返事をすると、扉が開き茶髪のショートカットに、ワンポイントでリボンの付いたカチューシャを着け、愛らしい顔をした背の低い女子が入って来る。
その人は、俺達三人を見るや、ビクッと身体を震わせ妙な顔つきにかわり、俺たちから慌てる様に目線を移し白井先生の顔を伺った。
それに気付いた先生は、俺達をその子に紹介し始める。
「今、議題のボランティア関連で協力してくれる、長谷見裕君と長谷見栞さんよ」
それを聞いて、納得したのか、そのカチューシャの子は笑顔で自己紹介を始めた。
「ああ、そうですか、私は生徒会書記を勤めております、2年の町屋 夏美です」
状況を理解し、腰を折って丁寧にお辞儀をする町屋さん。
俺達も一度立ち上がると、二人揃ってお辞儀をした。
すると今度はノック無しで扉が開く、そこには二人の美女が一人は見覚えのあるあの金色の悪魔、今日は会長モードの為化粧はナチュラルメイクで、赤いメガネ、髪も金髪ではなく少し赤みがかったロングのウエーブとなっている。
その会長の後ろに立つ女子は、栗毛の髪を後ろに三つ編みでまとめリボンを着け、顔は少し細目だが、気品が感じられる、清楚系お嬢様といったイメージ、スタイルはスレンダーで、腰なんか折れそうなぐらいである。
扉を開けた会長は、部屋に人がいる驚きか、それとも俺を見つけたからか、一瞬怪訝な表情を浮かべるも、俺以外には気づかれない様なスピードで、一瞬にしてアルカイックスマイルに戻し
「ノックもしないで申し訳ございません」
両手を前で重ね、腰を折り深々と頭を下げ謝る
「えっと葵さんこちらはー」
白井先生が、俺達を紹介しようとするも
「ええ、長谷見裕さんでいらっしゃいますでしょ、存じております」
「そちらは、長谷見さんの妹さんですね、確か栞さんでしたかしら」
白井先生は驚いた顔をして尋ねた
「二人とはお知り合いだったんですか?」
「ええ、裕さんは以前校舎の裏でお一人でお食事をされてましたので、一言お声を掛けさせていただきました、その時お名前も、栞さんは、学校では有名でらっしゃいますからお噂だけですね」
うう、一人で食事って、まあしてたけどね……
「それで、白井先生、こちらの方々の御用は何でしょうか?」
「ああ、そうそう、えっとね今度やるボランティア関連の事で、お手伝いいただけるとの事ですので連れてきました」
「そうですか、ありがとうございます」
丁寧な口調で感謝の意を表す会長、しかし、あの変わりよう……
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生徒会長から、まずは自己紹介などして親睦を深めましょうか、との事で全員席につき、書記の町屋さんがお茶をいれて配膳する。
「では、まず私から、生徒会長の那珂川 葵と申します、本日はお集まりいただき感謝しております。ここにいるメンバーを中心に、この議題を協力しあい、力を合わせ頑張っていきましょう。よろしくお願いいたします」
アルカイックスマイルを崩さずに、丁寧な挨拶 本当にあの金髪と同じ人物か?実は双子とかじゃねえのか?(それ少し考えた)
会長が座り、隣の副会長に目配せする。
副会長は軽くうなずき、立ち上がって一度礼をする。
「副会長の市川 瑞樹です、那珂川会長のお手伝いをさせていただいております、未熟者ですが、よろしくお願いいたします」
上品な出で立ちは会長と変わらないが、所作に気品を感じる、会長と見比べると、こっちは完全なお嬢様だな。
生徒会長がこちらを見てにっこり笑う、え? 心読まれた? こわ!!
「それではわたしの番ですね、先ほども言いましたが、書記の町屋 夏美です、字はあんまり上手くありませんが、書記をがんばってますのでよろしくお願いします!」
二人とは対象的な明るく元気なイメージ、実際書記は別に書くのを専門にしている訳ではないから、冗談を言っているのだと分かる。
「以上3人が今期生徒会のメンバーとなります」
会長がそう言い終えるが、色々疑問に思うことがあったので聞いてみた。
「えっと3人だけなんですか、しかも全員2年生なんですね、しかも全員女性」
「そうですね、生徒会は、生徒会長に任命権がありますので、やはり上級生だと会長もやりにくいかと、会長にお願いして、私と夏海でお手伝いさせて頂いております」
副会長が答える。
「当校は元々女子高だったから、今でも女子が多いんですよ、だから生徒会長も今まで女子しか務めた事はなかったみたい、会長以外の男子は今までいたこともあったけど、やっぱり女子が多くなっちゃうみたいだよ」
夏海が続けた。
「さて、ではお二人の事も教えてくださるかしら?」
息ピッタリに話しを交代していく生徒会面々、何か手強さを感じつつ俺は立ち上がり自己紹介をする。
「えーーと、1年の長谷見裕です、何がお手伝い出来るかわかりませんが、よろしくお願いしまーす」
そう言って席に着く、妹を見るとこっちを見つめているが、なにやら不審な顔をしている。おいおい何する気だ?
妹は立ち上がり、生徒会長の方を向いて言った。
「1年、長谷見栞です、会長、この間校舎裏で兄の頭を撫でていたのは何故ですか!兄の事を好きなんですか!」
何かやらかすと思ったら、開口一番爆弾投下してきやがった。
あああ、連れてくるんじゃなかった………。




