73-7 お兄ちゃんは変わった?
私は物心ついた時からお兄ちゃんが好きだった。
優しいお兄ちゃんが大好きだった。
そして、思春期に入りお兄ちゃんに対する好きが恋心に変わった事に自覚した。
いや、違う……初めから自分の好きは恋心だったのだ……ただそれに気付いただけだった。
そして私はずっと悩んでいた。
どうしてお兄ちゃんの事が好きなんだろう? 私の好きの相手がどうしてお兄ちゃんなんだろうって。
お兄ちゃんは私にずっと優しかった。
でも、優しい位じゃ好きにならない。
だけど……今、思った。
その人が私よりも、私以上に私の事を好きだったらって。
私の側で常に私を見守り、ずっと寄り添い、常に優しく慈愛の目でいつも見つめられていたとしたら? そんな人を好きにならずにはいられないんじゃないかって。
はっきり言って私は思っている。
自分の恋愛感情は重いって、恋した相手の為なら死んでもいいって思えるくらいに重い。
だから、相手が私の事を同じように思ってくれる人しか愛せないって、そう思っていた。
そしてそんな人は、お兄ちゃんしかいなかった。
他人の為にそう思える人なんて中々いない。
ましてや、出会って直ぐにそんな思いになるなんて事は皆無だろう。
でも、身内ならどうか?
例えば自分の子供が生まれて直ぐに病気になったとしたら、身代わりになってでも助けたいって思うだろう。
私もお兄ちゃんの為ならそう思えるし、お兄ちゃんもそう思ってくれているだろう。
だから私のその条件に適合出来るのは、お兄ちゃんしかいない。
でも、それはあくまでも兄妹だから……。
兄妹としてってそう思ってた。
私はお兄ちゃんとは違う感情を抱いている自分がおかしいって、ずっとずっと悩んでいた。
何でだろうって。
だけど、違ったのだ。
今はっきりとわかった、
お兄ちゃんもそうだったのだ。
私と同じように思ってくれていた。
ずっとずっと私の事が好きだったって……。
誰よりも何よりも私の事を好きでいてくれた。
だから私は好きになったんだ。
嬉しい……嬉しい嬉しい嬉しい。
こんなにも嬉しい事は無い。
私とお兄ちゃんは両思い、量重い、だった。
兄妹で恋するなんて物凄く重い。
でも、どんなに重くても、二人で持つなら問題無いよね。
一緒に持てば良いんだよね。
私はゆっくりと目を開ける。
「大丈夫か?」
目の前には可愛い素敵なお兄ちゃんが居る。
今、私はお兄ちゃんに膝枕をして貰いベンチに横たわっている。
「……うん」
ようやく落ち着いてきた。
ようやく理解してきた。
今の状況を。
言いたい事は色々ある。
聞きたい事は色々ある。
でも、そんな事は後で良い。
今はこの幸せな気分に浸っていたい。
この幸せなな時間がずっと止まってくれればいい。
この二人の空間を、この幸せな気持ちと共に琥珀で固め延々と永劫に取って置きたい。
私はゆっくりとお兄ちゃんの頬に手を添える。
暖かいお兄ちゃんの頬っぺに再度夢じゃないと確信する。
「お兄ちゃん大好き」
「俺も」
お兄ちゃんはそう言うと、私に優しくキスをしてくれた。




