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73-5 お兄ちゃんは変わった?


 お兄ちゃんが授業に出て来ない。


 滅多にサボる事なんてしない。

 やはり昨日の事が響いているのか。


 また悲しくなって来る。


 私は今、心底実感している……自分がこんなにも弱い人間なのだと言う事に。


 今まで積み上げてきた自信が、完全に崩壊しかけている。


 勉強も運動も友人関係も全て完璧にこなして来た。

 信頼も信用も積み上げてきた。


 何でも出来るなんて思わないけど、でもある程度は出来るって、そんな自信はあった。


 でもそれはお兄ちゃんが居たから、お兄ちゃんに気に入られたかったから。

 自慢の妹でいたかったから。

 気に入られたかったから。


 人格だけじゃ無い、容姿もそうだ。

 お肌のケアもスタイル維持も毎日コツコツと磨き続けた。 


 健康にも配慮して来た。


 そして……もしも……の為に遺伝の事だって調べていた。


 うちの家系に遺伝的要素の病気にかかった人はいない。

 お母さんも弥生さんも私と姉妹かって思われるくらい若々しい。


 基本、長寿の家系だ。


 だから……。


 でも、もうそんな事はどうでもいい。

 そんな夢物語の話なんてどうでもいい。


 お兄ちゃんから避けられている……もうそれだけで……私の心はズタズタに引き裂かれている。


 こんな世の中なんて……無くなっちゃえば良いのに……。


 そう……全ての人類がいなくなって……お兄ちゃんと私だけの世界になったなら。


 誰にも揶揄されない、神様だって許してくれる……ううん、私達が神様になる。


 とりあえず……この教室から、学校から……理科室にある薬品を使えば……。


 そう思ったその時、私のポケットに入れてあるスマホが振動した。

 私は授業中にも関わらず慌ててスマホの画面を開いた。


『次の授業サボってくれ、裏庭で待ってる』

 お兄ちゃんからのメッセージだ。


 次の授業? なぜそのタイミング? そう思った。

 要するにお兄ちゃんは授業中にスマホを見てはいけないという校則を守ってそう言っているのだ。


「ふふ」

 それを見て私は思わず吹き出しそうになる。


 今、私は校則どころか法律さえ守るつもりは無かったのだ。

 この世の事なんて知った事か、お兄ちゃんと比べたら全ての人間は虫けら以下ってそう思ってたから。


 つまり授業なんてどうでもいいのだ。


 今は担任である白井先生の国語の授業中。

 担任とあってクラスはリラックスした状態で、時折笑いも交えながら授業は進行していた。


 私はそんな事お構い無しとばかりに椅子をガタガタと音を立て思いっきり立ち上がると、そのまま走って教室を飛び出る。


「し、栞さん?!」

 廊下に出る瞬間、先生が私の名前を呼ぶ。

 それに続いてクラスがザワザワし始めるが、一瞬で聞こえなくなった。


 私は全力で誰もいない廊下を走っているから。

 そう言えば……廊下を走るのも校則違反だなあ。


「お兄ちゃん……お兄ちゃん」

 私はそう呟きながら全力で裏庭に向かう。

 恐らく教室は騒ぎになっているだろう。

 でもそんなのどうでもいい、全てどうでもいい、後の事なんてどうでもいい。


 お兄ちゃんからの呼び出し……私はそれに応じなければいけない。


 お兄ちゃんの頼みは命令と同義。

 例えそれが……最悪な事でも。


 私は走りながら想像していた。

 

 この呼び出しの意味を……。


 状況は最悪だった。


 お兄ちゃんが私を避けた直後の呼び出し。


 つまりは何か決心し、それを伝える為の呼び出しなのだ。


「もう……一つしか無いよね?」

 そう……別れ話……。

 いや、付き合っているのかと言われれば微妙なんだけど、でも一応私達はそう言う状態なのだ。


 でも、その曖昧な関係がお兄ちゃんを追い込んだ。


 お兄ちゃんは、たぶん普通の兄妹に戻りたがっている。


 だって兄妹で本気で付き合うとか、相当の覚悟がいるのだから。

 それは身を思って知っている。


 狂気の沙汰所では無い。

 神をも恐れぬ行為、悪魔の所業。


 そんな覚悟をお兄ちゃんがするわけない。

 ううん、させたく無いよ。


 こんな思いをするのは私だけで十分だ。


 だからもし……お兄ちゃんがそれを願うのなら、私は受け入れる。

 このまま拒絶され続けるよりも全然ましだ。


 私と別れれば……私との枷が外れれば、お兄ちゃんは晴れて他の人と付き合える。


 お兄ちゃんの周りにはいい人が一杯いる。

 あの人達なら……苦しいけど、狂しいけど我慢する。


 お兄ちゃんが好きになった人なら、私も好きになれる。好きに慣れる。


 馴れる、生れる、慣れる。

 いつかはなれるのだろうか?


 そう考えただけで、胸が締め付けられる。


 駄目よ駄目、この位で泣いちゃ駄目。


 この後もっと辛い事を言われるのだから。


 そこで泣いたらお兄ちゃんの決心が揺らぐ。

 優しいから、優しすぎるから。


 裏庭に到着するとお兄ちゃんの気配を感じる。


 大丈夫、泣いて無い。


 大丈夫覚悟は出来てる。


 いつだって覚悟は出来てる。


 期限がある事はわかっているのだから。 


 そして改めて思った。

 兄妹で良かったと……。

 他人なら、ただの恋人なら別れを告げられたらそこで終わりなのだ。

 何の関係の赤の他人になってしまう。


 でも私達は兄妹、赤の他人になる事は決して無い。


 そう自分に言い聞かせお兄ちゃんの前に立つ。


 普通の兄妹に……なる為に。



 

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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
― 新着の感想 ―
[気になる点] 妹と結婚。確かに現行の民法では結婚できません。ですが、それだけの事です。 生まれる子は私生児ですが、父(兄)が認知できます。 小学校の父母参観や運動会は(形式上の)伯父として参加できま…
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