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71-7 新たなる一歩


「おにいひゃああああんんんんん」

 そう言って泣き叫ぶ栞を残し美月と家を出る。

 しかし昨日よりもうしろ髪を引かれる事は無かった。


 まあ、美月と違い一人でも安心なのと……昨日……。


「おにいちゃまのその自信に満ちた表情は、昨日おねえちゃまとの絆が生まれたから?」


「……さ、さあね」


「ふーーん」

 美月はそう言うと俺の手を握る。


 俺は美月の荷物も入れたキャリーバッグをゴロゴロと引きずりながら駅に向かって歩いていく。

 それにしてもどこへ行くのだろうか?

 栞と違いホテルに行くわけには行かないだろう。


 さすがに小学生が予約を取るのは不可能だ。


 しかし栞のいない世界とは一体?


 美月が以前にいっていた異世界にでも連れて行かれるのだろうか?


 なんて思っていたが美月は最近建った駅前の高層マンションの敷地内に入って行く。

 そして持っていた鍵でオートロックの扉を開けた。


「へ?」


「おにいちゃま~~こっちこっち」

 美月は慣れた感じで絨毯の上を歩いていく、そしてエレベーターホールの手前で再度オートロックの自動ドア開け俺を手招きする。


「ここって……」

 まさか美月のマンション? なんか色々やってくるみたいだからこれくらい買うお金は持ってそうだけど……いやいやまさか……。

 ホテルを予約するよりも困難な事、しかし現実には立ち入り出来るキーを所持している事に俺の理解が追い付いて来ない。


 美月はエレベーターに乗ると再度持っているカードキーを黒い装置の所に当てる。

 するとエレベーターは階上に向かって自動的に動き始めた。


 エレベーターに乗ると美月は俺の手をギュっと握り俺を見上げニッコリ笑う。

 天使の笑顔……美月の笑顔を見ると自分も自然と笑顔になる。


「お兄ちゃま」


「美月……」

 見つめ合う俺と美月……天使の美月を見つめていると、なんだかエレベーターがロケットのように感じてしまう。

 二人で月にでも行くようなそんな気分になってくる。


 美しい月、美月……ウサギのように可愛い美月……。


 どんどんと気持ちが高揚していく……。


 そんな気分のまま、エレベーターは最上階で停止する。


 美月は俺の手をながら引き絨毯敷の内廊下を奥に進み、そして高級ホテルのような扉の前で再びカードキーをドアにかざす。

『ピーー』

 という音がなり『カチャリ』と鍵が開く音。


 美月は扉を開けた。


「広……」

 俺の部屋の半分くらいありそうな玄関。

 新築の香りがする。

 まだ入居したばかりなのだろうか? 人気も生活感も全く無い。


「お兄ちゃま、上がって」

 美月はそう言うと、ウォークイン出来るくらいの下駄箱からスリッパを取り出し俺の前に置いた。


「ちょ、一体ここは」 


「美月とお兄ちゃまの愛の巣だよ」


「……は?」

 一等地の駅前に建てられたマンションの最上階……。

 

「美月と結婚すれば全部お兄ちゃまの物だね」


「いやいやいやいや」

 俺は細かく首を振った。


「……なーーんて冗談」

 美月は俺のその反応に少し残念そうな顔をしながら、フカフカのスリッパを履き広い廊下をパタパタと歩いていく。

 一体全体何が何やら、どこまで本当でどこまで嘘なのか……俺はもう一度首を振ると美月の後を追った。


 長い廊下の突き当たりの部屋の扉を開け俺を誘う。


「おおおお」

 明るく広い東南角部屋のリビング、そこからは都内が一望出来る。

 遥か遠くに聳えるスカイツリー、羽田に向かう飛行機が列をなして飛んでいく。


「綺麗でしょ?」

 美月も俺と同じ方向を見てそう言った。


「そ、それで結局ここって」


「もうお兄ちゃまは本当に……ここはね、弥生ちゃまのマンションだよ」


「ば、婆ちゃんの!」


「もう、また怒られるよ、今も後ろの書斎に」

 美月は怯えた顔で俺の後ろをじっと見る。


「え?! い、いるの?! まじで!」


「あはははは、いないよ」

 俺が慌てて後ろを振り返ると、美月はお腹を抱えて笑いだす。


「こ、こら!」

 ちなみに婆ちゃんを婆ちゃんと呼ぶと無茶苦茶怒られる。

 弥生さんと呼ばなければならない。

 もう一つちなみに婆ちゃんは若くして母さんを産んでるので、まだかなり若い。

 見た目は20代に見え今でもナンパされるとか……


 さらにはベストセラー作家という。

 数年かけてネットの賞も取れないどこかの作者とは偉い違い……。


「へへへへ、それでね、弥生ちゃまが長野にいる時の管理を任されたの」


「か、管理って」


「まあ、掃除したりここに届いた書類を送ったりとか」


「ば、婆ちゃん……子供に頼むなよ」

 俺はここが美月マンションではないと知ってホッと胸を撫で下ろした。

 しかしい、俺がそう言うと、美月の顔が今まで見たい事の無いような真剣な表情の変わる。


「それ」


「え?」


「子供だから、何?」


「え」


「子供だと何で駄目なの?」


「いや、それは……」

 美月のその問いに俺は即答出来ない。

 何故、駄目なのか……いや、相手が普通の子供なら直ぐに言える。

 幼い故に知識が無いから……。

 とはいえ、ここでそれを認めるのは……多分不味い事になるとそんな予感が頭を過った。


「け、経験が足りないから」

 美月の弱点、それは若いという事。

 俺はそれを指摘すると、美月は待ってましたとばかりに反論してくる。


「じゃあいつから経験を積めばいいの?」


「いやそれは」


「お兄ちゃまならわかっていると思うけど、知識単体って、それだけでは何の役にもたたない、経験をする事によって知識同士が繋がり知恵となる、経験をしなければその知識が良いことなのか悪い事なのかそれさえもわからない」


「そ、それは」


「それを制約するのは、良識ある教育じゃないって思うの、良い事なのか悪い事なのか必要な事なのか……」


「それはそうだけど」


「美月前から不思議に思ってる言葉ががあるの」


「……な、何が?」


「勉強の範囲って何?」


「えっと試験範囲の事?」


「それは問題外、例えば小学生で習って無いから駄目とか、なんの意味があるの? 」


「いやそれは……順を追わないと理解しているかわからないし……算数の問題を方程式で解くと、計算を理解しているのかわからない」


「算数なんて、小学校に入る前に全部理解してるけど? かけ算は10万かける10万迄覚えてるし、円周率だって1億桁以上言えるし」

 

「いやいやいやいや」

 確かに今の世の中出来ない人を基準にしている傾向はある。

 知識が無い故に損をする、そんな人が出ないように決まりを作る。


 何とは言えないが、出来ない人の為に出来たルールのせいで出来る人に制約がかかってしまうなんていくらでも存在する。


 範囲を作りそこからはみ出す物を異端扱いしていく。


 上にも下にも……。


 それが今の世の中、この国の現状。


 俺は美月の顔を再度見つめる。


 今まで二人きりで色んな事を話してきた。

 でも、ここまでの真剣な話は殆んどしてこなっかった。


 俺と美月は仲の良い従妹、仲の良い兄妹を演じて来ていたのだ。


 そして今、美月の目は本気だ。

 誰にも邪魔されない状態で、栞の居ないこの場所で、この状況で俺と真剣に話し合いたいと、そう言っているようだった。


 美月は俺との関係を、今までの関係を打ち破り一歩踏み出そうとしているようだった。







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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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