70-5 大イベント
「いいか、誰が訪ねて来ても絶対に開けるなよ! 戸締まりは完璧にな!」
「はいはい、わかったから、お兄ちゃまもお姉ちゃまも楽しんで来てね」
俺の天使は、美月はそう言うと笑顔で手を降る。
「本当に良いの? 美月ちゃん」
栞もやはり美月を一人きりにするのが心配なのか? 真面目な顔でそう聞いた。
「先手は譲ってあげるよ」
美月はほくそ笑みながら、そして挑発するかの如く栞に向かってそう言う。
その美月の表情を見て栞は少しムッとしているようだった。
そんな二人の会話で栞の心配事が俺とは違う所にある事に気が付く。
「そ……」
栞はそう言うと、少し怒ったように美月に背を向け玄関から離れようと歩き出す。
「いや、ちょっと待って、そ、そのやっぱり止めない?」
スタスタと歩き出す妹に俺は後ろからそう声をかける。
ここに来てやっぱり美月を置いて楽しめる自信が無くなった俺は……中止にしようと栞に向かってそう提案するも栞は踵を返し俺の所まで戻って来ると「はいはい、お兄ちゃん行くよ~~」と言い俺の提案を一笑に付する。
そして俺の首を、正確にはシャツの襟を掴むと俺を引っ張り玄関先から外に連れ出そうとする。
「ちょ、ま、待って、美月、みつきいいいいい」
俺と美月の今生の別れになるかも知れないというのに、栞は全く相手にしてくれない
今度は俺の腕を掴むとグイグイと引っ張り俺を美月から、家から引き離す。
そしてそのまま腕を組み歩き始めた。
家からどんどん離れていく……ああ、心配だ、あんなに可愛い美月を家に一人きりにするなんて、もしも変態とか現れたら……。
「変態はお兄ちゃんだから」
「こ、心を読むな! そして俺は変態じゃない!」
「ロリコンは変態だよ?」
わかってる? って表情で俺を見つめる栞……。
「俺はロリコンじゃねえ!」
俺はロリコンではなく、美月が可愛いだけ、その可愛い可愛い美月がたまたま小学生なだけだ!
「はいはい、美月ちゃんに勝てる人なんて早々いないから平気だって何度も言ってるでしょ?」
まあ、確かに美月が本気になれば連隊どころか一個師団くらい素手で壊滅できるかもだけど……。
軍事アナリストの試算だと美月一人で戦略○ミサイル三基と同等とか、美月と栞が居れば北半球を壊滅出来るとか出来ないとか?
「いや、でもほら、検査だなんだと言って家にあがりこんでなんて輩が」
「お兄ちゃんの読んでるエッチな本じゃあるまいし、そもそも美月ちゃんを騙せる人なんていないでしょ?」
「いや、まあ、それはそうだけど……ってかそんなエロ本はねえ!」
「え? あ、うん」
「お、おい!」
「いいからほら、さっさと行くよお兄ちゃん!」
栞は俺の手を握ると、嬉しそうに俺を引っ張るように一歩前を歩く。
いや、だから否定を、いや、美月を連れて……そもそもこれって俺の誕生日祝いなんだが……。
俺は後ろ髪を引かれ何度も家に向かって振り返りつつも、なんとか気を取り直し妹の隣を歩き始めた。
今日は俺の誕生日祝い、栞と二人でお祝い&ホテルに一泊する。
改めてそう考えるとなんだか緊張してしまう。
二人で宿泊とか、別に初めてでは無いのに……。
俺達は手を繋いだまま最寄り駅まで歩いていく。もう隠すこともしない、今さら感がある。
そもそも誰も何も言わないんだけど、世の中の兄妹って皆こんな感じで珍しく無いのか?
そんな疑問を抱きつつも、いつものように楽しくたわいもない話をしながら電車に揺られること1時間ちょっと、以前にも来た横浜みなとみらいに到着する。
4年……昨年と代わりない景色を見ながら……いつの間にか出来ているゴンドラを眺めつつ栞と二人手を繋ぎ佇む。
「なんか懐かしいね」
「そうだなあ」
妹とは4年……いや、違った1年弱前に一緒に訪れた。
19ー3という……なんか変な数字が頭に浮かんだが気にしないでおこう。
そう前回ここに来たとき、みなとみらい周辺で遊びこれからって所で栞の様子がおかしい事に気が付く。
あの時栞は熱を出してしまっていた。
思えば朝からどこかおかしかった……そしてまだまだこれからって時間に号泣する栞を宥め、家路につくことになった。
今日はその時のリベンジも兼ねている。
「今日の体調は?」
「ふふん、バッチリ」
栞は鼻で笑うと胸を張り俺にそう言った。
「で、どうするんだ?」
今回は遊びといっても俺の誕生日祝いとあって、俺は行き先以外聞いていない。
今日はここで1泊するって事以外は……。
とはいえ、宿泊先の検討はついている。
以前にここに来たときそんな話をしていた。
「とりあえず遅めの昼食を兼ねたお茶にするよ」
まだチェックインには時間があると妹は荷物を持つと俺の手を握りホテルに向かって歩き始める。
俺達の向かった先はみなとみらいのシンボルでもあるヨットの帆の形をしたホテル、まずはそこのラウンジでアフタヌーンティーと洒落こんだ。




