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68-4 波乱の幕開け


 他愛のない談笑、そして暗くなってくる頃合いにお兄ちゃまは彼女の肩をポンポンと叩きながら言った。


「えっと、苺ちゃん送って行くから」


「あ、ごめんね長居させちゃって」

 お姉ちゃまは残念そうにそう言った。


 苺って子はお兄ちゃまその言葉を聞いて少し残念そうな顔で、美月とおねえちゃま手を振り素直に席を立つ。

 そして、二人が部屋から出ていくと、お姉ちゃまと美月の顔がにこやかな表情から真顔に一変した。


「お姉ちゃま……気がついていたんでしょ?」

 美月がそう言うとお姉ちゃまは美月を見ずに残っていたコーヒーに口を付けながら「当たり前でしょ」と冷たく言った。


 新入生と言っていた苺という女の子は、ずっとテーブルの下でお兄ちゃまにちょっかいを出していた。

 美月とお姉ちゃまはそれに気付かない振りをしていた。

 当たり前だ、美月とお姉ちゃまが、お兄ちゃまの変化に気付かないわけが無い。


「いつものお姉ちゃまなら、『なにしてんのよ』って嫉妬丸出しで怒るのに……どうしたのかなって思ってさ」

 なにも言わないなにもしない姉ちゃまを差し置いて美月がなにかを言える筈もなく、黙って3人の様子を伺っていた。


「まあ、否定はしない……」


「ふーーん、なんか最近お姉ちゃま余裕だよねえ、やっぱりお兄ちゃまとなんかあった?」


「ふふふ、美月ちゃんに言う必要無いかな」


「まあ、意気地無しのお兄ちゃまが最後の一線を越えられるとは思えないから、美月が帰って来た時のお姉ちゃまの反応を見るに、いいとこ記憶喪失のお兄ちゃまをタブらかして裸で抱き合った所で美月の装置にお兄ちゃまが頭をぶつけて結局未遂で済んだって所かな」


「くっ……」


「あはははやっぱり図星か」


「うっさい……」


「それで……どうするのあの子」


「別にどうもしないわよ」


「ふーーん」


「今さらお兄ちゃんの事を好きな人が一人二人増えた所で変わらないしね」


「はあ……お兄ちゃまの優しさには正直引くよねえ」

 美月もため息を付きながら残っていたコーヒーを一飲みする。


「苺ちゃんは子供の頃から思い込みの激しい子だからねえ……ほとぼりが冷めるのを待つのが吉かなと、あの思い込みの激しいっていう原動力のお陰で勉強してるみたいだし」


「どういう子なの?」


「うーーん、まあ、美月が大好きな子……っていうか、お兄ちゃんの事を好きな美月が大好きな子かな?」


「へえ、お姉ちゃまが大好きとか変わってるね」


「失礼ね」


「お兄ちゃまにも困ったもんだ……それでお兄ちゃまはあの子と何をしに行ったの?」


「うーーん、まあ多分いつもの悪い癖だろうねえ」

 お姉ちゃまは全て見透かしたように諦め顔で首を振った。


「お兄ちゃまってコミュ障気味で人にあまり感心を持たないようにしてるのに、いざ悩んでいる人とかトラブってる人とかの見ると、見過ごせないからねえ、それでとことんまで首突っ込むんだから」


「ほっとけないんだよね、まあ、それがお兄ちゃんの良いところなんだけど」


「またハーレムが大きくなるなあ……でもお姉ちゃま、あの子はまた元副会長の回し者とかじゃないの?」


「ああ、苺ちゃんなら大丈夫、昔からの知り合いだから、ただ……」


「ただ?」


「……ううん、なんでもない」

 お姉ちゃまは浮かない顔で天井を見上げる。

 多分何かを隠しているのだろう……ううん、違うか、多分わかっていないってのが正解って所か?


 お姉ちゃまは聞かれればなんでも答えるのでオープンだって思う人が多いけど、美月みたいに敏い人にはこうやって隠し事をする。


 勿論美月にだって胸に秘めている事が一杯ある。

 そしてそれには当然触れないし触れさせたくない。

 誰しもそういう物があるだろう、そしてそれを他人が知った所で踏み込んでくるような人は殆んどいない。

 断られたり、余計なお世話だと言われたり、踏み込む事によって自分が傷付くのを恐れるからだ。

 わざわざ地雷源に突っ込んで行く人はいない。

 でも、お兄ちゃまはそこに踏み込んでくる。

 なんの装備も持たないで地雷源に突入していく。

 自分が傷付くってわかっても、相手が傷付いているなら必ず踏み込んで行く、


 それがお兄ちゃまの良い所でもあり悪い所でもある。

 そして、そんな事されたら、誰もがお兄ちゃまを好きになる。

 恋愛感情とは違う場合もあるけれど。


 美月も今まではそうだった。人に関心しないようにしていた。

 でも、長い事お兄ちゃまと一緒にいる事で変わりつつある。

 お姉ちゃまがそうだったように……だから今日はあえて聞いてみた。

 お兄ちゃまのように踏み込んでみた。


「それで……お姉ちゃまは、これからどうするの?」


「……どうって」


「お兄ちゃまの恋を邪魔し続けるの? それとも兄妹でずっとプラトニックな恋愛をし続けるの? それとも……二人で地獄に落ちるの?」


「……わかんない」


「そろそろ考える時だと思うけど」


「わかんないものはわかんない!」

 お姉ちゃまは耳をふさいで首を振った。

 お兄ちゃまからお姉ちゃまを切る事は出来ない。

 だからといっていつまでもこのままでいい筈がない。


 その決断を出来るのは他でもないお姉ちゃま自身だけ。

 いつかその決断をする時が近い将来来るだろう。


 もしお姉ちゃまが、その時に、地獄に落ちるという決断をしたとしたら、美月はそれを受け入れる事が出来るのだろうか?

 


もう読んでる人いないかも(。-`ω-)

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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
― 新着の感想 ―
[良い点] 正直今までの流れうろ覚えなんて言えない!(言ってる) いや〜、できたら月一くらいの更新でいいから定期性が欲しい
[気になる点] ヤバ。流れを完全に忘れる^^; 復習しないと。 [一言] 更新お疲れ様です^^
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