67-4 記憶の中の妹
ほんのりと赤く栞さんの肌が染まる。
同じ年の可愛い女子と一緒にお風呂に入っている事に今さらながら驚愕している。
目の前にいる超絶可愛い女子は俺の妹らしい。
しかも俺はあろう事かこの自称妹と付き合っているらしい。
記憶を無くす前の俺ってどんだけ節操無いんだ?
いくら可愛いからって……妹に手を出すなんて……。
いやいや待てよ、いくらなんでもそんな事するか!? でも今、平気で一緒に風呂に入っているんだから……いやいやでも風呂に入るくらいなら、そんな兄妹はどこかにいるかも知れない。
子供の頃からの習慣でーー、とかあるかも知れない。
さっきから、らしいとか、かも知れないとか言ってるが、それではいつまでたってもらちが明かない。
俺は勇気を出して聞いてみた。
「えっと……その……俺達って……どこまで……そのしてるんだ?」
「してる?」
「い、いや……その……」
「ああ、エッチな事? えへへへ、この間お兄ちゃんからキスしてもらっちゃった」
「ええええええ!」
おおおお、俺から?!
「それに抱き締めて貰ったよ」
「だ、抱き締め……は、ハグとかだよな?」
「ううん、裸同士でだよ?」
「ええええええええええ!」
「なんなら今してみる?」
妹はニッコリ笑ってそう言った。
バスタオルを巻いている栞さんの肩、そして胸、剥き出しの肌を水滴が滴り落ちていく。
この肌に、この絹の様な白く美しい肌に俺は直接触れた事がある……と言われ、その事実に動揺する。
「い、いや大丈夫……マジか、マジか俺」
俺は思わず頭を抱える。 駄目だろ……もう完全に兄妹の領域を超えてる。
どんな理由があるにせよ、兄貴が妹に手を出すなんて言語道断だ。
「ごめん……」
俺は妹に謝罪した。
「なんで謝るの?」
「だって、どんな理由があるにせよ、俺が妹に手を出したって事になるわけで、そんな最低な」
「そんな事無い!」
栞さんは立ち上がると俺の頭に抱きついた。
濡れたバスタオル越しに伝わる栞の柔らかい感触。
その感触に、俺はどこか懐かしい気持ちになる。
デジャブの様な感覚、やはり栞さんの言っている事は正しいのだろう。
「おかしい……おかしいに決まってる」
「そうだよ、おかしいの、お兄ちゃんはおかしくない……私がおかしいの」
「え?」
「お兄ちゃんは私を救ってくれたの……こんなおかしい私の事を……」
「救った?」
「そうだよ、お兄ちゃんは私を救ってくれた、私の願いを最大限聞いてくれた……だから謝らないで……」
「……俺は、前の俺は後悔してなかったのかな」
「わかんない……でも、少なくともお兄ちゃんは、私の知るお兄ちゃんは、ちゃんと考えてくれる人、私との事もちゃんと……」
「そか」
「うん」
「とりあえず冷えるから浸かって」
俺は栞さんの肩をそっと掴み湯船の中に戻した。
「えへへへへ」
栞さんは俺と向き合い満面の笑みで俺を見つめる。
「なんか……懐かしいって……そんな気になるな」
「そうだ! こういう時、刺激があれば元に戻るって聞いた事あるよ?!」
「刺激って殴ったりびっくりさせたりって奴?」
「お兄ちゃんにそんな事出来ないしさせない、でも……例えば……」
栞さんは俺の腕を掴むとそのまま俺の手を自分の胸に置く。
「……ななななななな、なにを!」
「どう? 刺激になるでしょ?」
「いいいい、いやいやいやいや」
「直接の方が良いかな?」
「や、やめダメダメ、ダメだよ栞さん!」
「栞さんなんて呼ばないで!」
「いや、えっと……栞ちゃん?」
「あはあ、なんか新鮮、じゃあ私は……祐君?」
「……」
「あはははは、お兄ちゃん真っ赤、可愛いい!」
「う、うるせえ、もう出る! そして寝る! お休み!」
「ああん、待って!」
色々と……限界だった。
身体を素早く拭き部屋着に着替える。
少し遅れて妹が浴室から出てくるが俺はろくに髪も乾かさずに廊下に出た。
混浴だって脱衣場は別な筈、いや、混浴出来る温泉に行った事は無いけれど……と、俺の知識はそう言っている。
慌てる様に脱衣場兼洗面所を後にし部屋に戻った。
当たり前だが家の中には栞ちゃんの物がそこかしこに置かれている。
それは俺の部屋の中にもだ。
でも、どうしても思い出せない……頭の中にある一部がすっぽりと抜け落ちてしまっている。
部屋を改めて見回すと、いかにも女子からプレゼントされたと思われる手作りのブックカバーが机の上に大事そうに置かれている。
「これも……栞ちゃんが?」
俺はそれに触れた。するとまた俺の中に存在しているだろう記憶が反応する。
何か凄く重い生地で作られている様な、そんな気がする……。
重いというのは勿論重量ではない。
栞ちゃんは俺の妹……もうこれは確定的に明らかだ。
そもそも隣は栞ちゃんの部屋なのだから……そう、俺はそれを知っている。
家の構造としての記憶……隣に親以外の身内が住んでいる。
一人は最近、もう一人はずっと前から……。
「だ、駄目だ……色々と限界だ」
頭がパンクしそうだった。そして俺の中にある何かが、今は思い出すなと言っている様な気がする。
それは一体どういう事なのだろうか?
「おーーーーにーーーーいーーーーちゃーーーんんんん」
その時扉がゆっくりと開き、まるでホラー映画の様に栞ちゃんが俺の部屋にゆっくりと足を踏み入れる。
「う、うわあああああああ!」
長い黒髪はまだしっとりと濡れたまま顔の前に垂れ下がり、その表情は見えない……だが声から察するに栞ちゃんは怒っている様だった。
「なーーーーぜーーーーにーーーーげーーーーーるーーーー」
「あああ、当たり前だろ!」
ふわふわパジャマに身を包む栞ちゃんに俺は思わずたじろいだ。
「……そんなお兄ちゃん……見たくないよ」
「え?」
「私の事を避ける……お兄ちゃんなんて……嫌だよお」
栞ちゃんはそう言いながら前髪を払った。
悲しそうな切なそうな顔、その顔を見て俺の心の奥から嫌な気持ちが溢れて来る。
「ご、ごめん」
俺は栞ちゃんの元に歩み寄ると彼女の肩をゆっくりと抱いた。
俺の中では初対面とも言える人をあっさりと抱き止める自分に驚く。
つい身体が勝手に動いてしまった。
でも、そうしなければいけないって思ったのだ。
彼女を栞ちゃんを泣かしてはいけないって……俺の心と身体は確かにそう反応した。
この作品の完全改稿版を書き始めております。
『超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。』
https://book1.adouzi.eu.org/n1184hi/
もう一度読み直して見ませんか?(*゜ー゜)ゞ⌒☆
ブクマ評価も宜しく( `・ω・´)ノ ヨロシクー




