66-15 生徒会の旅
命からがら? 大浴場から逃げ出した俺は脱衣場で脱兎の如く着替えると、追いかけてくる3人を振り切り部屋に向かった。
「いや、このまま戻っても……結局部屋で鉢合わせになるよな」
茜はともかく部屋に戻って鍵を掛けやり過ごそうにも、栞と美月を追い出すわけにはいかない……。
とすると、誰かの部屋にかくまって貰う以外に方法は無い。
俺の頭にそんなギャルゲーの様な選択肢が浮かんだ。
確か部屋割りは、先生と会長、セシリーと美智瑠と麻紗美だったな。
部屋は俺達の部屋の両隣、どっちがどちらの部屋かはわからない。
とりあえず俺は3人の身体と頭が冷える迄かくまって貰おうと決め、エレベーターから近い方の部屋のベルを鳴らした。
しかし、もう寝ているのか? 中々出てこない
『ポーーン』
「や、やばい」
ベルを鳴らし反応を待っている間にエレベーターホールから階への到着を知らせる音が聞こえてくる。
そして……。
「なんで部屋まで来るんです!」
「うっさいわねえ」
「おにいちゃまあああ」
廊下に3人の声が聞こえてくる。ヤバいまた面倒な事に。
そう思った瞬間部屋の扉がようやく開いた。
俺は押し入る様に部屋に飛び込み慌てて扉を閉めた。
「きゃ!」
内開きの扉を慌てて閉めた反動で俺は躓き、そのまま扉を開けた人物を押し倒してしまう。
ヤバい、俺は倒れつつとっさにその人物を抱き締めつつ身体を入れ替えた。
身体の全面に柔らかい感触を感じながらそのまま床に背中と後頭部を強く打ち付け………………………………。
「あれ? えっと……」
「お兄ちゃん!」
「おにいちゃま!」
「祐くん!」
「良かったあ」
「ふん、逃げるからこうなるのよ」
知らない天井……そして知らない人達が俺を見下ろしている。
「お兄ちゃん?」
「……お兄ちゃん? 俺の妹?」
女神の様に美しい顔の女子は俺を見てそう言った。
「え?」
「え?」
「えっと……ここは?」
「ちょっと、冗談よね?」
「おにいちゃま……おにいちゃまわかる? 私の事?」
物凄く可愛い幼女が俺を心配そう見ている……可愛いなあ、まるで天使の様に可愛い。
いや、よく見ると俺を見下ろしている全員が美少女だった。
なんで俺はこんな美少女に囲まれて寝ているんだ? 天使もいるし女神もいるし、そうかここは天国か?
「お兄ちゃん?! 私の事も?」
「えっと……俺の妹だっけ?」
「そ、そんな……」
「婚約者の私もわからない?」
「こ、婚約者?! こんな美少女が?」
「ちょっと、変な事言わないでよ!」
「事実を入ってるだけでしょ」
「うるさい! 今それどころじゃない! とりあえず病院に!」
年齢のよくわからないツインテールの美少女が俺をゆっくりと抱き起こす。
そして俺の妹と名乗る美少女女神とと愛くるしい幼女天使が俺を支える。
更には金髪の美少女が部屋にある電話で誰かと話をし、更に俺の婚約者を名乗る美少女がスマホでどこかに電話をしていた。
その様子に、どうやら俺は天国ではなく今、ホテルにいるらしい……。
なぜこんな美少女達と一緒にホテルにいるんだろうか?
そう思っていると、更に3人の美少女が俺の前に現れた。
「え? 何? どうしたの?! 祐! 僕がわかるか?」
スポーティーな僕っ子美少女が俺を見て心配そうにそう言った。
「祐くん大丈夫ぅ?」
胸の大きい美少女が舌ったらずな声で俺をそう呼ぶ。
「ナンか様子がヘンデース」
金髪美少女と同じくらい、いや、それ以上に綺麗な外国人美少女が変なしゃべり方で俺にそう言った。
これで全員? なんだこの状況は。
とりあえず冷静にここ迄を整理してみよう。
俺の名前は祐と言うらしい、滅茶苦茶可愛い女神の様な妹がいて、美しい婚約者らしき人がいて、更には愛くるしい幼女が俺をおにいちゃまと呼び、綺麗な外国人らしき二人に心配され、年齢不詳のツインテール美少女に巨乳美少女とスポーティー美少女に囲まれてホテルにいると……。
なんだこの羨ましい人物は? って俺か?
俺はそのまま美少女達に連れ出されホテルの玄関前に停まっていたタクシーに乗せられ、そのまま病院に連れて行かれる。
そしてそのまま入院、更には色々と検査をされた後、医者から伝えられた。
「逆向性健忘、いわゆる記憶喪失ですね」
「──記憶喪失……マジか」
まあ、予想通りの結果だった。
それにしても長期連載漫画かなんかで出てくる都市伝説的な病名を言われてしまい戸惑っていると、俺の横で付き添ってくれている俺の妹らしい栞という女の子は不安そうに医者に問いかける。
「元に戻るんですか?」
俺と妹はよっぽど仲が良かったのだろうか? 妹は俺の手を握ったままでいる。
「まあ、脳に異常は見当たらないので一時的なモノでしょう、徐々に思い出すと思いますが……」
カルテとレントゲンやCTと思われる画像を見つつそう言った。
「そ、そうですか……」
俺の後ろで妹らしき人物はそう言うと……俺の首に抱き付く。
「良かった……お兄ちゃん……良かった」
俺の手を強く握り、そして俺をじっと見つめ涙をポロポロと流した。
妹なのに……何故かその女神を見て……泣き顔を見て、俺の鼓動が早鐘の様に打ちならす。
この娘は俺の妹なのに、まるでこの娘に恋をしている様な、いや、していた様なそんな感覚に陥ってしまっていた。
(´・ω・`)…………




