66-12 生徒会の旅
「手を出せないって……また直接的な」
「そう? 直接的だとセック」
「言わなくて良いから!」
美月ちゃんは反対側のベッドの上で嬉々としながら私を見ていた。
「ねえ……美月ちゃん、前に聞いたと思うけどさ、お兄ちゃんのどこを好きになったの?」
「あははは、そんなの聞かなくてもお姉ちゃまが一番わかってる癖に」
「……まあ、でも……私はお兄ちゃんのどこを好きになったのかわからない……いまだに理由が無いの」
「うん、だよね」
「……へ?」
「まあ、美月もそれに近いかな?」
「近い?」
「最近改めて思ったけど、やっぱりお兄ちゃまって、普通だよね」
「普通……」
「そ、特別何が優れてるとかって無い……」
「うん」
「でもさあ、じゃああんな人いるかって言うと、やっぱりどこにも居ないんだよねえ」
美月ちゃんはケラケラと笑いだす。小学生だと言うのに達観しているかの様なその言い方に、私は多分美月ちゃんじゃ無かったら呆れてしまっていただろう。
美月ちゃんはその並外れた知識と記憶力で相手を観察する。
相手の裏を読み、自分の裏を決して見せない。
そしてあの天才作家のお婆様、弥生さんから英才教育を受けている。
そんな人が唯一心を許せる人それがお兄ちゃん。
「うん……居ないね」
「まあ簡単に言えば優しい、お兄ちゃまって本当とにかく優しいんだ、暖かいんだ、冷めている自分の心をほんのりと暖かくしてくれる人」
「──うん」
凄くわかる……ずっと一緒にいたい……なんだろう、お兄ちゃんってお風呂の様な存在?
裸でも安心出来て、そして芯まで温めてくれる、身体も……心も。
「でも優しすぎるのが玉に傷だよねえ、だから美月にもお姉ちゃまにも手を出さない、ううん、誰にも……」
「──そうなんだよね……」
「でも美月は年齢が解決してくれる、いとこだし、後10年経てば何も問題は無くなる、でもお姉ちゃまは違う……妹でいる以上お兄ちゃまは絶対に越えてこない」
「……」
「って、思ってたんだけどねえ」
「……え?」
「お兄ちゃまに美月呼ばれちゃったからなあ~~」
美月ちゃんは少し悲しそうな、少し嬉しそうなそんな複雑な顔で私を見る。
「呼ばれた?」
「うん、限界だって」
「げ! 限界ってお兄ちゃんが? 私に対してって事? つまり……み、美月ちゃんって、私とお兄ちゃんの間の……防波堤として来たの?!」
「うん! さすがお兄ちゃまの事は直ぐにわかるね? あははバラしちゃった」
テヘペロと舌を出す。
「そ、そうなの?! で、でも、美月ちゃんは……それで良いの?」
「何が?」
「だって、向こうの学校を、友達を蹴って……」
それって……お兄ちゃんの為に、そして私の為に。
「まあ、友達居なかったしなあ、先生にも煙たがられてたし、それに」
「それに?」
「多分お兄ちゃまは、そこまで見越して私を呼んだんじゃないかなって」
「……ああ……そか」
美月ちゃんの為って言えば美月ちゃんは絶対に来ない、美月ちゃんは私以上に……ううん、誰よりも負けず嫌いなのだから……でも、自分の為に来てくれって言えば、お兄ちゃんがそう言えば……美月ちゃんも断れない。
お兄ちゃんのやりそうな事……。
「ああ、もうお兄ちゃま格好良すぎだよね、涙が出ちゃう」
「うん、そうだね」
「だから、お姉ちゃまはお姉ちゃまで頑張れば良いんだよ、お兄ちゃまは、ちゃんと考えてくれてる、限界だって言葉も嘘じゃない」
「そ、そかな?」
「あと、美月も10年も待たないけどね」
「へ?」
「だってお兄ちゃまってロリコンでしょ? だったら今の方がチャンスだし~~」
またもケラケラと笑う美月ちゃん、その冗談とも本気とも取れない言い方に、呆れるのを通り越して、私も思わず笑ってしまった。
「やっと笑った」
「……うん、そだね」
美月ちゃんはそう言って私を元気付けてくれた。
もうこれじゃどっちがお姉ちゃんかわからなくなる。
「私は私でお兄ちゃんまの壁を突破するべく頑張る。お姉ちゃまはお姉ちゃまで私とお兄ちゃまの壁を突破するべく頑張る、それでいいんじゃないかな?」
「お兄ちゃんはともかく美月ちゃが手強すぎる……」
「では、そんなお姉ちゃまに朗報です!」
美月ちゃんはにこやかに手を上げ選手宣誓の様に言った。
「え?」
「美月春から正式に引っ越す為に、一度長野に帰ります!」
「え? ああ、そうなんだ」
「お姉ちゃまもうすぐ誕生日でしょ、お兄ちゃまに何かおねだりしてみたら?」
「……美月ちゃん」
「お姉ちゃまになら、お兄ちゃまの初めてを譲ってもいいかなあ~~」
「初めてって……」
全くこのマセガキは……。
美月ちゃんには勝てないなあ……そう思っていると突如美月ちゃんは何かに気づいた様なハッとした表情に変わった。
「お、お姉ちゃま! お兄ちゃま遅すぎない?」
美月ちゃんは真剣な顔で私を見てそう呟く。
「え? そう?」
「うん……お兄ちゃま家のお風呂以外はいつも早いのに、もうだいぶ経ってる」
「そう言えば……」
私達と家族風呂に入った時もさっさと出ていったし……。
「……あ、そう言えば……今回ずっと見てない人が、まさか!」
「! 茜さん?! そうか……すっかり忘れてた!」
「お兄ちゃまが一人でお風呂とか、絶好のチャンス、しまった……美月とした事が!」
美月ちゃんはベッドから飛び降り、靴を履き替え外に飛び出ていく。
「ああ、待って私着替えないと?!」
私は急いでパジャマを脱ぎ捨て、さっき脱いだ服に着替える。
「ヤバいヤバいヤバいよーー」
油断した油断した……今一番用心しなきゃいけないのは茜さん……そしてもう一人いる。
「お兄ちゃんの……お兄ちゃんの……貞操がああああ!」
現在新作に掛かりっきりで、中々更新出来なくすみません(;ω;)
そしてその新作はこの作品のブクマ数をようやく越える事が出来ました。
ありがとうございます。
妹作品以外で初の4桁作品となりました(*゜∀゜)=3
『同情と恋の違い 元アイドルの美少女が責任を取りたいと僕の前に現れた。』
https://book1.adouzi.eu.org/n8909gv/
下にリンクも貼ってますのでよかったらどうぞ(-ω-)/
ついでに妹もの短編も出しました。
『愛妹家』
https://book1.adouzi.eu.org/n8953gw/
ただひたすらイチャイチャしようとする変態兄のお話(笑)




