66-10 生徒会の旅
とりあえずワイワイと騒ぎながらホテルに到着する。
そして当初の部屋割りの通りに、美月と栞と3人で部屋に戻る。
終始ご機嫌ななめな栞を横目に、俺は着替えを鞄から取り出す。
「風呂言ってくるから……」
俺は栞に向かってそう言う
「……」
栞は何も言わない……返事が無い、屍のようだ……。
「じゃあ、美月も一緒に行こうかなあ?」
部屋に入るなりコートを脱ぎ捨てベッドに飛び込んだ美月は仰向けに寝転びながら俺を見ている。
「ダメ、ここには家族風呂は無い」
俺は栞の手前笑顔を堪え美月にそう言う。
「小さい子供の振りして一緒にはいっちゃおう! お兄ちゃま」
「ダメダメ、どこにロリコンがいるかわからない!」
美月を男風呂にいれるなんて、そんな事できるわけない!
ロリコンじゃなくてもロリコンになってしまう。
「……ここにいる……」
黙っていた栞は俺の言葉にポソリと呟き、のそのそとコートを脱ぐと……そのまま服まで脱ぎ出す。
「し、栞、何を?!」
「……ふん……着替えて……もう寝る!」
「あ、ああ、じゃあ俺は風呂行ってくるから」
妹が俺に構わず服を脱ぎ始めるのを見ないように俺は慌てて部屋を出た。
「なんだ? ……どうしたんだ?」
いつにも増して様子がおかしい……キスしなかった事がそんなにショックだったんだろうか?
いや、あのまま行けば多分俺は……。
何度かしてしまったからだろう……最近栞とキスする事にあまり抵抗がない。
「妹とキスするのに抵抗無いとか終わってる……」
まあ……でも……一応……彼女なんだよな……現状。
むしろそっちの方が終わってる……。
「とりあえず、今度どこかに行くか……もうすぐ誕生日だし……そうか……それでか……」
もうすぐ栞の誕生日……そして直ぐに俺の誕生日……。
もう1年か……いや、なんか3年くらい経っている気もする……。
エレベーターを降りて大浴場の前に到着する。。
ホテル独特の匂いが、仄かに温泉宿の匂いに変わった。
と言っても、ここの風呂は温泉じゃないんだけど。
九州といったら温泉が有名だけど……ここは違う……。
俺はお約束にならないように、男風呂の入口を確認する。
男女が入れ替わらない事も確認済み。
残念だったな、今回はそういう回ではない。
俺は安心して、脱衣場で素早く服を脱ぎ浴場に入ると……。
「やっと来た、このノロマ! のぼせる所だったでしょ!」
そこには、タオルを身体に巻き、足だけ湯につけた……西園寺 茜が居た。
「ななななな、何でお前がここに居る!」
「あら、忘れたの、飛行機で行くって言ったでしょ?」
「そうじゃねえ、何で男風呂に居るんだ!」
「今は混浴タイムよ」
「そんなバカな事あるか!」
「正確には貸し切り風呂ね、いわゆる家族風呂って奴、家族風呂は公衆浴場法適用外になるから」
「それは昔美月に対してやったネタだ! いや、そうじゃない、いやそもそもなんだ貸し切りって!」
「私が決めたの、この私が」
茜は自分の胸を指してどや顔をした。
濡れたバスタオルは身体にピタリと貼り付き隠してる意味をあまりなしていない……。
細い身体に括れた腰……そして、服を着ていると目立たなかった胸はやはりそれなりに膨らみを帯びていて抵抗って、何を見てるんだ俺は……。
「あら、知らなかったの? このホテル一応うちの系列店よ」
「な!」
「だからこれくらいの融通は利くのよ、わかった? ダーリン」
「だ、誰がダーリンだ!」
「旦那様の方がいい? それともだっちゃを付けた方がいい?」
「いやいや、呼び方の問題じゃない!」
だっちゃ?
「ハイハイ、どうでもいいけど、そこに突っ立ってないで入ったら?」
「は、入るわけ無いだろ!」
「どうして? お風呂入りに来たんじゃないの?」
「お、お前とは入らない」
「あは、あははは、照れてるの? あらあ、一緒にお風呂ぐらいで、おかわいいこと」
「うるせえ」
「そうか……貴方それで妹を言い訳にしてるんだ、あはは」
「言い訳?」
「そうよ、貴方はね……人を傷付ける事が出来ない、だから誰の好意を断る事も出来ない。だからその理由を妹に求めてるのよ、妹が自分の事を好きだから、他の人を好きになってはいけないってね」
茜は大きな風呂の向かって右側の縁に座っている状態で足だけお湯に浸け俺を見つめる……と、そのままゆっくりと中に入った。
そして、腰までお湯に浸けている状態で俺の方に近付いて来る。
「誰も傷つけないなんて出来るわけないのに、バカな男」
「そんな事……」
わかっている、そんな事は……でも……。
「じゃあ……もし……こうしたら、貴方は私をお嫁さんにしてくれるかな?」
そう言うと……茜は身体に巻いているバスタオルを指で引っ掛けお湯の中に落とした。
「な! 何を…………」
お湯から上、彼女の半身が露になる。
「ふふふふ、わたし……綺麗?」
綺麗な肌、そして綺麗な形の良い胸……だけど……彼女のその胸には、いや胸だけじゃない……首からヘソの辺りまで、一直線に、大きな傷が……傷痕が存在していた。
なろうコン用新作出しました。
『同情と恋の違い 元アイドルの美少女が責任を取りたいと僕の前に現れた。』
https://book1.adouzi.eu.org/n8909gv/
下にリンク貼ってますのでよかったら一緒にどうぞ(-ω-)/




