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66-2 生徒会の旅(バレンタイン会おまけ)

 

 「雫!」

 生徒会での打ち合わせが終わり、栞に先に帰る様に伝えた。

 栞はわかっているのか? 俺の言う通り一人で家に帰って行った。

 打ち合わせ中に窓の外から見える校庭や校門をチラチラと見ていたが雫は通っていない。

 

 俺はまだ学校内にいるであろう雫を探すと、すぐに生徒会近くの空き教室の隅でシクシクと泣いている雫を発見した。

 

「あ、あんちゃん……」

 俺に見られ、教室の隅で座って泣いていた雫は、慌てて涙を拭くと気丈に立ち上がり俺に向き合う。


「雫……」


「何? まだ何か文句でも? でもあんちゃんだって悪いんだから……」


「大丈夫か?」

俺は雫にそう声を掛けた。


「え?」


「一人で大丈夫か? ……瑞希も居なくなって……姉さんももうじき卒業してしまう……お前……本当は寂しくて生徒会に来たんじゃ無いのか?」

 俺は確信していた。

 そして人の言葉が、それが全部出ない事を知っていた。

 栞とずっと一緒にいたから、栞から告白されるまで、俺は栞の言葉が全部本心だってそう思っていた。

 いや、思い込んでいた。


 だから気が付かなった。


 雫の事も……。


「な! 何バカな事言ってるのあんちゃん、私は瑞希様に頼まれて……仕事として生徒会に」


「最初は……だろ?」

 俺は少し得意げにそう言う。


「え?」


「最初はそういうつもりだった……だろ?」


「……何……言ってるの?」


「生徒会に入って、皆と一緒にいて……段々楽しくなってたんじゃないのか?」


「まさか、本当……何バカな事を言ってるの?」


「──まあ俺はバカで鈍感だけどさ……女心とかわかんないけどさ……本当に笑っているか、嘘で笑っているか位は……わかるよ」


「……」


「最初会った時は、作り笑いだったよな……でも段々本心から笑ってただろ?」

 それに気づいていた。だから最初なんてこのタイミングでって内心疑っていた。

 最初は演技で近付いたのかもしれない。

 でも、いつまでもそれをしていたら、俺でなくても栞が気付いていた筈。

 

「それは……」


「……今なら……まだ戻れる……俺から会長や皆に」

 そう……あいつらなら、俺が信頼できるあいつらならきっと……。


「──あんちゃん!」


「え?」


「あんちゃんは…………裕君は……栞ちゃんの事が……一番好きなんでしょ?」


「へ? いや、えっと……」

 ととと、突然何を言い出すんだ?!

 俺は全然違う答えが返ってきて思わず動揺してしまう。

 駄目だ、最近栞の事を聞かれると、俺は思わずパニックになってしまう。


「私は……お姉ちゃんが好き……大好きなの……愛してるの……」

 雫は寂しそうに、でも嬉しそうにそう言った。大切な物を大事な物を慈しむ様な表情で、そんな複雑な表情で、俺にそう言った。

 その表情はその気持ちは俺に伝わる。

 俺と同じだったから……。


「──雫」

 そして俺はそれ以上何も言えなくなってしまった。


「こんな私に……裏切り者の私にも手を差し伸べてくれる……あんちゃんは本当に……優しいよね……でもその優しさが皆を傷付けているって事を、そろそろ気付くべきだよ……」


「……」


「私はお姉ちゃんが好き……だから平気だった……生徒会の中でも、ハーレムの中でも全然平気だった……だけど…………栞ちゃんはどうなんだろうね?」


「雫……」


「戻らないよ……私は戻らない……まだ利用価値があるって思われる為に……これで戻ったらもう使えないって……私もハーレムにとりこまれたって……思われるから」


「……そか」

 いや、ハーレムなんて無いから……なんて無粋な突っ込みはここでは堪えよう。

 認めたわけじゃないんだからね!


「……うん」


「──わかったよ……なんか困った事があったらいつでも言えよ……俺たち……幼なじみには違い無いんだから」


「…………うん」

 雫は最後に俺を見てニッコリ笑った。昔の様に無邪気に笑った。

 そして雫は踵を返し俺の前を歩いていく。

 俺はそれをじっと見つめていた。


 雫が振り返り戻って来る事を期待してずっと……。


 でも、雫が振り返る事は無かった。


 

◈◈◈



 雫とその場で別れ俺は家路につく……元副会長の事を、雫の言った言葉の事を考えながら……栞の事を、栞との事を考えながら……。


 

 そんなセンチな気持ちのまま家に到着し、玄関の扉を開けると何やら家の中が騒がしい。


「いいでしょ! これくらい!」


「駄目!」


「自分だって昨日してたじゃない」


「だからって、それはやり過ぎ!」


「でも、もうこれしか無いの!」


「知らないから、また警告来ても知らないからね!」

 栞と美月が騒いでいる……警告?

 俺は何事かとリビングの扉を開けると……。


「帰ってきたお兄ちゃま! 逃げて!」


「へ?」


「お、お兄ちゃん! ハッピーバレンタイン!」


「え? ええええええ!」


 栞はそう言うと生徒会で使った小さなチョコレートを唇に挟み、俺に突進してきた!



「うわ、うわああああああああああああああ!」


 俺の今までの気持ちはなんだったのか……。


 どうやって食べさせられたか……詳しくは言えないが 栞の今年のチョコレートは超甘々な、メイプルシロップ味だった事だけは……最後に言っておく。


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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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