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56-3 大人デート

 

「レインボーブリッジ?」


 俺と妹はレストランから少し歩いた所にあるレインボーブリッジに向かっていた。


「そう、実はさ、歩いて渡れるんだよレインボーブリッジって」


「へーーそうなんだーー景色良さそうだね~~」


 よし、やるぞ! 俺は心の中で気合いを入れ思い切って栞の手を握る。


「お、お兄ちゃん!?」


「えっと手ぐらい繋がないとデートにならないだろ?」

  日頃妹から腕を組まれたり、抱き付かれたりしているが、俺から手を繋ぐってあの19-3横浜本気デート以来の事、今回は本気だぜ!


「うーーーん、お兄ちゃん、同じ事を繰り返しても飽きられるだけ、やっぱり今回はもう一歩踏み出そう!」


 栞はそう言うと繋いでいる手を一度離し握り直す。


「ぐはっ」


「えへへへへへへ」


 俺の指が栞の全ての指と絡み合う……こ、これは……恋人繋ぎ……


「は、はずい……」


「あれ? したこと無かったっけ」


「無い……はず……?」


「えへへへへへへ、私はいつも想像でしてるから~~あ、でも……お兄ちゃんの手……暖かい」


「……」

 や、ヤバい、可愛い……栞が可愛い過ぎる……


 今回は大人デート、要するにギリギリ迄兄妹で出来る事をしようって事……


 ギリギリ……ギリギリって何処まで? 手を繋ぐ、良いよな、肩を組む、腕を組むも良いよな、キス…………ほっぺた位なら、でもそれこそ海外じゃあ普通にしてる兄妹もいるよな……


 いやいやいやいや落ち着け俺、ここは日本だそれは…………


 妹の小さい手が……俺の心を、俺の理性をおかしくしてくる……でも今は妹じゃない、恋人……俺たちは付き合ってる……だったら……でもそれは……


 そんな事を考えている間にレインボーブリッジ遊歩道の入り口に到着、勿論無料なのでそのまま入りエレベーターに。


 エレベーターを降りるとレインボーブリッジの道路脇にある歩道に出る。


「きゃ!」


「おっと」


 頑丈そうな手すり越しとはいえ、道路はすぐ横、しかも反対側は海、なんとなく怖い、特にトラックが横を通過するとかなり恐怖を感じる。


 栞は手を離し俺の腕に抱きつく。


「お兄ちゃん怖いよ~~~」


「ハイハイ」

 俺は嘘だと分かっていたがそのまま抱き付かせた、こっちの方がしっくり来る。



「お、東京タワー」


「おーーーー」


 赤くそびえ立つ東京タワーが近くに見える、美智瑠も言っていたが、やはりスカイツリーよりも絵になる、あの手作り感、形、色、周りのビルに埋もれそうになってもその存在感は凄い。


「あーーお兄ちゃん、また美智瑠ちゃんの事考えてるでしょ~~」


「え! 考えてないよ!」


「ふん! どうだか、ほら行こうお兄ちゃん」

 そう言って俺の腕を引っ張る栞……なんでこう俺の心を読めるんだろうなこいつは……




「いい景色、でも夜景だったらな~~」


「まあなーー」

 途中途中に風景を見るスペースがある、ビルの隙間から見えるスカイツリーを眺めながら栞が呟く、大人デート、ロマンチックな雰囲気を醸し出すには、やはり夜じゃないと……


 風が少し冷たい、腕にしがみつく栞の体温が俺の腕に伝わる。

 その冷たい風が、腕にしがみつく栞の感触が俺の心を冷やしていく、高まっていた感情が冷静になる。


 それと同時に栞とデートする度に浮かぶ感情、思いが俺を襲ってくる。




 俺も栞もお互い付き合った人はいない、初めて付き合う相手が兄妹、ずっと一緒にいた相手……


 恐らく普通は恋をして愛し合い結婚して家族になるという段階を踏んで行くのだろう、どんどん盛り上がってそして他人同士が家族になる、長い年月を掛けて。


 俺と栞は最初から家族だ、普通の恋人同士の最終地点が先になってしまっている。


 逆行しなければならない、兄妹で付き合うと言うことはそう言う事だ。



 俺は付き合うどころか、今まで恋をした事がない……あの黒歴史、先生にラブレターを書いたのも小学生の時、恋とは別の感覚だったと思う。


 そう……おれは女子に対して恋に落ちるという感覚がない……小説に出てくる甘い、切ない、不安、嫉妬、それを特定の人物に思った事がない。



 高校生になって初めて告白された、その事にドキドキはしたが、それはあくまでも初めての経験だったから、想像していた事を経験したからだ。


 でもそれで恋に落ちる事は無かった、いや、恋に落ちる感覚が無かったと言った方が良いだろう。


 俺が思った感覚、それを言ったら恐らく俺は、あっさり嫌われるだろう、告白した事を後悔されるだろう。



 俺が思った感覚それは………………性欲。



 キスしたい、触れあいたい、抱き合いたい、そして……


 俺は告白してくれた人達に、勇気を出して言ってくれた人達に対して、そんな最低な感情しか芽生えなかった、本当に俺は最低な人間だ。


 

 前に栞は言っていた。


 自分は兄に対して恋愛感情を抱く異常者だと。


 でも……それを言ったら俺はもっと異常者だ。



 俺は栞を愛している、かけがえの無い存在、命よりも大事な人、でもそれは両親にも美月にも婆ちゃんにも抱いている気持ち、いわゆる家族愛だ。



 でも……、俺は栞にだけ違う思いがある、栞にだけ家族に対してと違う気持ちがある。


 だから俺は自分を最低だと思っている、俺は自分こそが異常者だと思っている。







 だって俺は……栞を、栞の事を抱きたいと思っているんだから。








 





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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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