第8話、寝ている間に
「はあ〜」
墓参りが済み、昼過ぎに伯父さんの家に戻ると。
客間の畳の上で、大の字で寝転がる。
あれから帰る途中で、昼食に熊本ラーメンを食べた。
さすがは本場、コッテリとした豚骨スープに中太麺。
それから揚げニンニクが入っていて。
一杯食べただけで、もう、かなり満腹になった。
一応、向こうでも豚骨ラーメンはあるが、やはり醤油豚骨なのでコッテリ度が違う。
けど、これでも九州の中ではアッサリしている方だと、言うんだけど。
しかし、これでも昔と比べるとマイルドになっているらしい。
「ふあ〜」
タダでさえ寝不足ぎみなのに加え、満腹になったので、アクビが出た。
それも、カロリーが高い豚骨ラーメンを食べたのだ。
満腹の度合いが違う。
しかも暑くなってきた頃に、熱いラーメンを食べたから体温も高くなっている
いつも以上に重い胃袋を抱えながら、涼しい室内に居ると。
異常な眠気が襲って来た。
「(少しだけ、仮眠しようかな)」
あまりの眠さに、僕は畳に寝っ転がったまま仮眠をしていた。
・・・
「ま〜くん、ま〜くん」
「・・・」
「ま〜くん、居らんなら、入るけんね〜」
(ま〜くん、居ないなら、入るからね〜)
障子の向こう側から、声がする。
その声に気付き、少しだけ意識が浮上する。
しかし、僕は意識があるが、夢の中にいる様な感覚である。
つまり、微睡んだ状態であり。
余りの眠気で、返事をする気力も無かった。
なので、無言でいると、客間に姉さんが入ってきた。
「あれ、ま〜くん、寝とったとね」
(あれ、ま〜くん、寝ていたんだ)
畳の上で、仰向けに寝ている僕を見た姉さんが、そう言った。
「ま〜くん、ま〜くん」
そして、僕の側に座ると、僕を軽く揺さぶるが。
僕は、余りの眠気に、返事をする気力も湧かない。
「もお、そぎゃんかトコで寝とると、風邪ひくよ」
(もお、そんな所で寝ていると、風邪ひくよ)
僕を揺すっても起きない事に。
姉さんは、溜め息を付くと、呆れたように言った。
僕が、いくら揺すっても起きないと、確認した所で。
「ホント、ま〜くんは男の子やとん、髪が綺麗かね」
(ホント、ま〜くんは男の子なのに、髪が綺麗だね)
姉さんが手を伸ばし、僕の髪を撫でながら、そう言う。
「最初、駅で見たま〜くんは、あんまりにも良か男になっとったけん。
私は、どぎゃんして接したら良かか、分からんかったとよ」
(最初、駅で見たま〜くんは、余りにも良い男になっていたから。
私は、どうやって接したら良いか、分からなかったんだよ)
「せやけど、ま〜くんは外見が変わっても、昔んまんまん、ま〜くんって分かったら。
何んか、安心したと」
(だけど、ま〜くんは外見が変わっても、昔のままの、ま〜くんだってわかっったら。
何だか、安心したの)
「特に、今日ま〜くんと手ば握った時ん、そぎゃん思〜たとたい」
(特に、今日ま〜くんと手を握った時に、そう思ったんだよ)
なおも髪を撫でながら、姉さんが呟いている。
「(すーっ、すーっ)」
滑らかな姉さんの指が滑る。
僕の髪に指を通し、梳るようにして頭を撫でている。
「(気持ち良いなあ・・・)」
姉さんに指が通る度に、滑らかで、しかもヒンヤリとした指の感触に。
思わず、そのまま寝落ちそうになってしまう。
「ねえ、美鈴、ちょっと来んね〜」
(ねえ、美鈴、ちょっと来なさい〜)
奥の方から、伯母さんが、姉さんを呼ぶ声が聞こえた。
「それじゃあ、お母さんが呼んどるけん」
(それじゃあ、お母さんが呼んでいるから)
そう言って立ち上がると、姉さんは畳んである布団から。
タオルケットと取りだし、僕に掛けてくれた。
「風邪ば引かんごつね」
(風邪を引かないようにね)
そう言って、姉さんは客間を出て行った。
「(良かった、姉さんが打ち解けるようになって)」
僕は姉さんの呟きを、微睡みながら聞いていて。
そんな風に、安心した。
「(はあ、ダメだ、また眠ってしまう・・・)」
姉さんに頭を撫でられたせいで、また出てきた睡魔に襲われる。
そうして再び、僕は眠りに落ちて行ったのであった。
以外と、市内ではラーメンを食べた事が無いので。
描写が正確じゃないかもしれません。
ふと思い出したのですが、子供の頃は豚骨ラーメンを食べていて。
余りのカロリーの高さに食べた後、よく頭が重くなっていました。




