第7話、墓参りの帰りに
翌日の朝。
なぜか、いつもより早くに、目が覚めてしまった。
しかし、昨夜ナカナカ寝れなかったので、寝不足である。
僕は、仕方なく布団から起ると、布団を畳み。
洗面所で顔を洗ってから、食堂に行き食卓に付いた。
食卓に付くと、その途端、大アクビが出てしまう。
「ふあ〜」
「そぎゃん大きかアクビばして、どぎゃんした?」
「はい、昨日、何だか眠れなくて」
「枕が変わったけん、眠れんかったんじゃろうね」
それを見た、伯父さん伯母さんからそう言われる。
「ま〜くん、大丈夫ね」
「大丈夫だよ、ただ眠いだけだから」
姉さんは、僕を心配してそう言うが。
僕はタダの寝不足だから、心配しない様に答える。
*********
朝食を済ませてから、しばらく経った後。
僕達は、午前の涼しい内に、車で墓参りに向かうことになった。
本来は迎え火、送り火ごとに墓に行くのだけど。
墓があるのが、車で片道一時間以上離れた霊園にあるので。
まとめて、一回で済ませる事らしい。
ちなみに墓は、昔は伯父さんの家の近所にある寺にあったのだけど。
区画整理と建て替えの為、寺が移転したそうである。
その際、墓の痛みが酷いのと、敷地が手狭になったので。
費用が安く済む、郊外の霊園に移したとの事だ。
・・・
「へえ〜、結構緑が多いなあー」
僕は、周囲の緑の多さに驚く。
熊本は、市内も緑が多いが。
市外へを出ると、もっと緑が多くなる。
それもただ緑が多いだけでなく。
阿蘇みたいな、絶景が沢山あるそうだ。
「阿蘇でん、大観望、草千里、中岳火口、白川水源。
と、色々あるけんが」
と言うのは、運転している伯父さん。
僕達は今、霊園に行く車のなかである。
僕は後部座席に座り、伯母さんは助手席にいる。
姉さんは、僕の隣に座っていた。
(……チラッ)
そして姉さんは、時折、僕の方をチラチラ見ていた。
何かあるのかな?
取りあえず、姉さんが切り出すのを待つことにした。
*********
墓参り自体は、滞り無く済んだ。
しかし、墓の掃除をして、お参りを済ませた後。
車まで、歩いて戻ろうとした時。
「……ねえ、ま〜くん」
「何?」
姉さんが僕に呼んだので、僕が尋ねてみた。
「……ま〜くん、手え繋いで歩かん?」
「えっ?」
「……昔んごつ、仲良く手え繋いで歩きたかと」
「姉さん……」
「……手え繋いで良かね?」
「姉さん、良いよ」
今、僕達は、二人だけで駐車場に向かっている。
伯父さん達は、管理事務所に、掃除道具を返しに行っているのだ。
僕が姉さんの問いに、そう言って答えると。
姉さんが、おずおずと手を伸ばす。
その伸ばした手を、僕が握った。
(うわっ、小さいなあ……)
僕は、姉さんの小さな手に驚く。
姉さんの手は、小さい上、指が細く、しかもヒンヤリとしていた。
僕が手を握ると、姉さんも握り返した。
「何か、昔に戻ったごたるね〜」
「そうだね」
「いつでん、手え握りよったもんね」
「姉さんとの記憶は、そればかりだよ」
「ふふふっ」
「はははっ」
僕がそう言うと、二人とも笑い出した。
姉さんが、先ほどより緊張が解けたのか。
少し、声が大きくなり、嬉しそうな表情になる。
そして、機嫌が良い姉さんと一緒に手を繋ぎながら。
駐車場まで、戻ったのだった。




