最終話、またね〜、ま〜くん〜
翌日の朝。
「どうも、お世話になりました」
「こちらこそ、あんまり相手に出来んで、ごめんなさいね〜」
玄関を出る前に、伯母さんに挨拶をする。
玄関には、伯母さんだけが居て、伯父さんの姿が見えない。
伯父さんは、既に仕事に出ていたからである。
だが、伯父さんには、既に挨拶を済ませていた。
「今回は、あんまり相手ば出来んで、済まんかった」
伯父さんが、慌しく仕事に行く前に挨拶をすると。
そう言って、僕に謝ってくれた。
「それからね、雅人くん」
「何ですか」
「向こうでん、ウチん娘ん[の]事ば[を]、よろしくね」
「?」
出ようとして時。
伯母さんが言った言葉に、首を傾げた。
・・・
(カタン、カタン……)
市電に乗って、熊本駅まで向かっている。
「ねえ、ま〜くん」
「なに?」
「寂しゅうなんね[寂しくなるね]……」
「そうだね……」
やはり、姉さんも一緒である。
駅まで、見送りに付いて来ているのだ。
今日の服装は、白のフレアスカートで。
上がボーダー柄の、白い襟が付いたオーバーであった。
足元は、底が低いシューズなので。
今日は、転ぶ心配はしなくて良かった。
「……でも、少し我慢すれば、また会えるけん」
「それ、どう言う意味なの?」
「向こうに行ったら、教ゆる[教える]よ」
「?」
姉さんも、伯母さん同様。
意味不明な事を言っていた。
*********
市電で、熊本駅まで行き。
駅に着くと、改札をくぐり、二人で新幹線ホームへ向かう。
ホームに到着したが。
まだ到着まで時間があるので、少し話をする。
「ねえ、姉さん。
さっきの話は一体、何だったの?」
「ん、実はね……」
・・・
「あっ、ま〜くん。新幹線が来たよ!」
「えっ!」
僕は、姉さんの話に驚いていると。
新幹線の到着を知らせる、アナウンスが聞こえた。
僕は、その事に気を取られていたら。
「(えっ)」
そのスキに、唇に何かが触れた……。
一瞬だったが、姉さんが爪先立ちになり。
僕に抱き付きながら、キスをしたのである。
「……ま〜くん。
これは、また会う約束のキスやけん……」
姉さんが、僕の顔を見詰めている。
「また会うて[会って]、もう一回キスしようね……」
そして、僕の顔を見詰めながら、そう呟いた。
*********
僕は、新幹線の座席に座る。
窓の外には、姉さんの姿があった。
そして、新幹線が動き出す。
外の姉さんは、大きく手を振っている。
声は防音で聞こえが無いが、それでも何を言っているかは分かる。
”またね〜、ま〜くん〜”
・・・
次第に、新幹線はホームから遠ざかり。
姉さんの姿が小さくなる。
とうとう、姉さんの姿が見えなくなってしまってから。
僕は、腰を浮かしていた状態より、座席に座り腰を沈める。
座席に腰を沈めてから僕は。
先ほどまでの事を思い起こしていた。
姉さんから、不意打ちのキスをされた事。
そして、訳が分からなかった、言葉の意味である。
話は長かったが、要するに。
”大学は、向こうに決まると思うけん。
そうなると学校に近か、ま〜くん家にお世話になるかもしれんけんが、よろしくね”
と言う事である。
この事は、僕の事とは関係なく。
推薦入学予定の学校が、僕の家の近くにあるので。
始めから決めていたようである。
伯母さんには、既に相談済みであり。
後は伯父さんを説得するだけであるが。
それは、伯母さんと二人で説得すれば。
問題は無いそうだが・・・・。
それも有ってか。
僕達の気持ちに、薄々気付いた伯母さんが。
ある意味、喜んでいたのは、そう言う理由からであった。
それを聞いて、何だか少し気が抜けてしまった。
チョットだけ待ったら、また姉さんに会えるからだ。
「(少し寂しいが、ちょっと我慢すればまた会える)」
そう思うと、何だか寂しさを我慢できるような気がした。
僕は、そんな事を考えながら。
遠ざかる熊本の風景を、眺めていたのであった。
熊本のお姉ちゃん 終わり
今回もエターにならず、最後まで無事に終了する事が出来ました。
これも皆様のおかげです。
そして相変わらず、この様なチラシの裏でも。
最後までご覧になられた皆様に、お礼を申し上げますm(__)m
それから。
一旦、上げた物をイキナリ削除した事を、心からお詫びいたしますm(__)m
今回、ローカルネタで作りましたが。
恐らく地元の方に、"言葉が違う、大袈裟すぎ"などと、言われそうな内容でした(汗)
それでは、皆様の御健康と御発展を祈りまして、この話を終了します。




