第23話、最後の夜(後)
「……」
僕は布団に入りながら、仰向けで天井を見ている。
「……うぅ、……ん……」
僕の胸板には、姉さんが頭を乗せている。
姉さんは、昨日の様に僕の胸に頬を押し当てたまま。
時折、軽く頬を動かしたり、胸板を撫でているだけである。
姉さんの髪は、上でまとめているので。
今は、姉さんの背中に廻した手で、背中を撫でていた。
しかし、それでも気持ち良いらしく。
僕に密着したままで、微かだが甘い声を上げていた。
僕は、そんな事をしていても。
恥ずかしいと言う気持ちが、不思議と起こらない。
今日、姉さんと気持ちを通じ合わせ。
姉さんの感触が、当たり前の様に思えたおかげで。
そんな事も、自然な事に思えたからだ。
「姉さん、寂しい?」
「……うん、とっても寂しか。
せやけど、少しだけ、我慢すれば良かけん……」
「それ、どう言う意味?」
「ふふふ、明日教えるけん、内緒……」
「?」
そう言って答えてくれなかった。
「……ねえ、今まで私がま〜くんに甘えとったけん。
今度は、ま〜くんが私に甘えとうなか……?」
「どうしたの、急に」
突然、姉さんが、手を付いて体を持ち上げながら、そんな事を言った。
何となく、さっきの事を誤魔化そうとしているんだなと。
薄々は感じるのだが。
「……ねえ、そぎゃんか[そんな]事ば[を]言わず、お姉ちゃんに甘えて来んね[来なさい]」
そう言って僕の頭に腕を廻すと、僕を横に倒した。
そうすると、僕は横向きで。
姉さんの胸に、抱き締められた状態になった。
頬には、姉さんの豊かな胸が当たる。
「……ほら、ギュっとして来んね」
いつもの違い、妙に積極的な姉さんに。
僕が困惑していたら、姉さんがそう言ってきたので。
僕は姉さんの背に腕を廻す。
腕を廻した姉さんの体は。
細いけど、とても柔らかくて抱き心地が良い。
「どぎゃんね、気持ち良かろうもん?」
(コク、コク)
「んっ……、 く、くすぐったか……」
僕が姉さんの問い掛けに、思わず頷くと。
姉さんが、身を捩らせた。
「お願いやけん……、くすぐったかけん胸の中で動かんで……」
そう言って、僕の頭を指先で、チョンと軽く叩く。
「……姉さん、ごめん」
「でも、気持ち良かろう……」
「……うん」
姉さんの胸の感触の良さに。
今度は僕が、気持ち良さそうな声で、答えた。
僕の答えに、姉さんはクスクス笑いつつ。
僕の頭を抱きしめながら、背中を撫でている。
「すーっ、すーっ」
背中を滑る、手の滑らかさに。
小さい頃の、一緒に寝ていた時の事を思い出す。
しかし、それと同時に。
今の姉さんの柔らかさも同時に感じる。
そうやって、昔の甘い記憶と、今の甘い気分が混じり合ったまま。
僕は、深い眠りへと落ちて行った。




