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第22話、最後の夜(前)

 その後、草千里で30分ほど散歩していた。


 もちろん、手を繋いでである。


 そうやって、手を繋ぎながら歩いて、伯父さんの車に戻ると。




「ふう〜ん〜♪」




 僕達の繋いだ手を、ジッと見た伯母さんは。

意味ありげな笑みを浮かべている。


 その笑みを見た僕と姉さんは、顔を赤くしたのだった。



 ・・・



 伯母さんが、運転席でふて寝をしていた、伯父さんを起こした後。

駐車場から車が発進した。


 車は中岳を降り、カルデラに着くと。

それから白川水源に寄る事になった。


挿絵(By みてみん)


 ここでは、流石にハブるのは可哀想なので。

伯父さんを含めて、みんなで散歩をする。


 車を降り、林の中に入ったら、神社が見え。

そこの近くに、透き通った水が湧き出す泉があった。


 僕達は、伯父さんの目があるので。

ここで、手を繋ぐ様な事はしなかった。




「はあ、ここは涼しかね(いね)〜」




 ここは、透明な泉がある場所らしく。

空気も澄んでいて、涼しい。


 姉さんがそう言って目を閉じながら、この涼しい空気を感じていた。 


 泉に手を浸すと、水がヒンヤリして気持ち良い。


 こうして僕達は、清冽な空気に包まれた泉の周囲を。

一時(ひととき)の間、歩き回っていたのである。




 *********



 白川水源を出た後、その足で伯父さん家に帰るのだが。


 帰り道も、やはり渋滞に巻き込まれしまった。


 動きが遅い、車の列の中で伯父さんが運転していたが。

伯母さんと姉さんは呑気にも、座ったまま眠り込んでしまっていた。


 それでは、余りにも可哀想なので。

僕は伯父さんとその間、色々と話をしていた訳である。


 その間、伯父さんは他の家みたいに。

娘が父親が粗末に扱わない事に、感謝しながらも。

「もう少し、構って欲しか(欲しい)……」と、こぼしていた。



 ・・・



 伯父さん家に戻ったのは、もう夜になる頃だった。


 夏の日が長い時期。

しかも、より日が出ているのが遅い九州だから、遅い時間である。


 遅くなったのは、渋滞していたのもあるが。

途中のファミレスで夕食を取ったり。

ショッピングモールとかに、寄っていたからであった。


 伯父さんは、家に帰ると居間で、しばらく休憩した後。

明日も休出で、朝早くから仕事に出ないとイケナイので、早々に寝てしまう。


 伯母さんも、久々の遠出で疲れたので、早めに寝てしまった。




 *********




(ごそごそ)




 僕は客間で、カバンを整理していた。


 TVを見ながら、明日、帰る準備をしているのだ。


 そして、僕の背中に、姉さんが密着していた。


 姉さんは、僕の肩に顎を乗せて、カバンの中を覗いていたのである。




言うたら(言ったら)、下着は洗ってやった()に……」




 僕の肩に顎を乗せたまま、耳元でそう言う。


 先ほどから、姉さんは僕にくっ付いたまま離れない。


 出来るだけ側に居たいからだろう。


 姉さんの寂しさが分かるから。

僕は、姉さんの好きな様にさせていた。




 ・・・




「ま〜くん、気持ち()良か《良いよお》……」




 ウットリした様な声で、姉さんが言う。


 明日の準備が済んだ後、僕は姉さんのご要望で。

壁に寄りかかりながら、姉さんを両足の間に入れている。


 姉さんは僕の足の間で、横向きでしなだれる様に、胸に顔を(うず)めていた。


 僕は、そんな姉さんの髪に指を通している。


 姉さんの髪は、滑らかで指通りが良く。

余りの気持ち良さに、いくら撫でていても飽きない。


 次第に僕は、ただ髪を(くしけず)る様に、指を通すだけでなく。

髪を持ち上げて少しずつ落としたり、髪を指に絡めたりして。

その感触を堪能(たんのう)していた。




「……ねえ、ま〜くん」




 そうやって、姉さんの髪の感触を楽しんでいたら。

不意に、姉さんが顔を上げた。


 姉さんは、気持ち良さの為か。

上気させた顔を僕に向け、潤んだ瞳で僕を見詰めている。


 その視線で、僕は姉さんが何を望んでいるのか、理解することが出来た。


 僕は、姉さんを優しく抱き締め、後頭部に手を添えると。

姉さんに顔を近づける。


 姉さんも、僕が顔を近づけると、それに合わせ瞳を閉じた。


 そして顔が徐々に近づき、姉さんの唇に触れる。




「……」


「……」




 しばらくの間、姉さんの唇の、柔らかい感触を感じた後。

ユックリと、離して行った。


 唇が離れると、閉じていた姉さんの瞳が開く。




「ねえ……、ま〜くんとキスした()は、何年ぶりかね(かな)……」




 姉さんが微笑みながら、そう言った。


 小さな頃したキスは、マセていた僕が。

姉さんに、お願いしてした、好奇心からのキスだが。


 今のキスは、姉さんがおねだりしてした、恋人のキスである。


 姉さんがそう言った後、再び、僕の胸に顔を埋める。


 こうして静かな客間で、僕は姉さんを抱き締めながら。

柔らかな、その感触を堪能していたのであった。



(※写真は、Wikipediaからの転載です)


・白川水源

http://e-kumamoto.info/db/one/511.html

http://www.vill.minamiaso.lg.jp/map/shirakawasuigen.html

https://www2.env.go.jp/water-pub/mizu-site/meisui/data/index.asp?info=89

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これらの作品も、熊本を舞台にした作品です。
・思い出の海と山と彼女
・変わらない仲と変わった思い

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