イベント終了と報酬と、今後の予定と!
イベント終了!
「ばんざーい!」
「クー!」
「うぉん!」
「しゅ……」
「にゃーん!」
誰にも見られない緋羽屋敷で歓声をあげると、皆もいっせいに声を上げながら翼を広げたり、尻尾をぶんぶん振ったり、心なしか嬉しそうに体を揺らしたり、私に飛びかかってきたりした。
ジンは飛びかかるの好きだね? 胸の前でキャッチして頬ずりをすると、間近でゴロゴロと甘えるように喉を鳴らしてすり寄ってくる。ぎゃんかわ。癒し。
ジンは進化が遅めかしらと少し心配にもなるが、進化は大器晩成型の子も中にはいるらしいと聞くのであんまり心配はしていない。懐いていないわけではないし……ないよね? 信頼度が低いから次の進化が来ないとかそういうわけじゃないもんね?
「最終的なキャンディの数は33万。めちゃくちゃ頑張りましたね? 総合順位は78位。プレイヤー人口が6桁以上行ってますし、途中サボったわりにはかなり上々では? 上位陣の100万越えとかちょっと意味分からないですけど」
普通のピニャータからドロップするキャンディは二十とか三十とかだぞ? どうなってんのこれ。イミガワカラナイヨ。
ゲーム機の生産も追いついていないから、現在のプレイヤー人口は20万くらい。少なめだよね。なんせ脳に直接干渉するゲーム機なので、きちんと安全確認などの規格を満たす条件もまたかなり膨大で、ひとつ基準を満たしたものが作られるのにも時間がかかるのだ。
いくら技術が年々進歩しているといっても、安全確認や動作確認はめちゃくちゃ慎重になる。故になかなか需要に供給が追いつかないという事態に陥りがちだ。私達は話題になる前の発売初期に速攻で買っていたので普通に手に入っただけ。
現在はなんと、公式の販売経路以外から高値で転売されたり、箱だけ売りつける詐欺まで流行ったりしているらしい。21世紀に似たような現象が起きたことがあるんだっけ? もしかしたら販売も、このあとは受注販売限定にされる可能性がある。
なお、学校で自慢すると刺されそうなほど恨みがましく見られるらしいと遊馬に聞いたので、夏休みが終わってからも誰にも持っていることは言わないつもりだ。遊馬は補習で学校に行ったらしい……なにやってんだあいつ。
それと、イベントが終わった次の日……つまり明日に一日メンテナンスが入る。ゲーム内にいる人はその場で強制ログアウトを食らうので気をつけるようにと公式アナウンスがあった。どうやら人口が増えてきているので、サーバーを二つから四つに増やすらしい。PKサーバーとなしサーバー、二つずつだ。今まで一つのサーバーで管理していたのがすごすぎるので、まあそうなるだろうなとは思っていた。
メンテが一日中になるのも仕方ない。それだけ慎重じゃないとむしろ本当に安全なのか疑問が湧いてきてしまうし。なお、運営さんはまたもや余計なスレ立てをして四徹していることが明らかになり、コーヒーと栄養ドリンクが箱で二十は送られたのだとか。まとめサイトで見た。可哀想に……いつも楽しくゲームできるように犠牲になってくれてありがとう。南無。
まあ、メンテ中はゲームで悪影響が出ていないかどうかの、推奨されている検診を受けに行こうかと思っているのでちょうどいいといえば、ちょうどいい。
「さーて、報酬はっと……お、特別報酬がありますね。やった!」
目に留まったのはシークレットピニャータの討伐数に応じた特別報酬。
ただし、この特別報酬もシークレットピニャータを倒さずとも、かなりの数のキャンディと交換で手に入る物なので、キャンディさえあればわりと誰でも手に入るやつだ。それでもこれは美味しい。
なぜなら。
「スキル『蝴蝶の幻』ですか。致死ダメージを肩代わりする身代わりスキルですね。便利」
幻影蝶を五十以上討伐した報酬がこれだ。
ゲーム内の一日二回、致死ダメージを肩代わりして割れるバリアが張られるスキル。私は器用値極振りで体力はレベルで上がって行く分しかないため、わりと容易に死ぬ。攻撃が当たったら最後だ。その代わりに回避と攻撃の相殺に重きを置いているところがある。このスキルがあるとかなり余裕ができるので嬉しいな。
ただ、スキルセットできるのは十個までなので、どのスキルと交換するかなど少し考える必要がある。もう十個は超えてしまったし。加護と取り替えるかなあ……?
「それと『隠形』に『フェザー・エコー』ですか」
隠形はキャメレオン50以上討伐報酬。一定時間透明になって気配を消すスキルだ。ただし、弱点も一緒で、体温を隠すことはできない。蛇系の聖獣にはバレるようだ。
それとフェザーエコーはコウモリ討伐報酬だね。こっちは翼のある聖獣に覚えさせることが可能なスキルだ。翼を震わせて超音波を出すらしい。どこになにがあるかの音波探知機の役割にもなるし、音波に弱い攻撃性を持たせることも可能と、汎用性は高そう。
ひとまず使うかどうかはあとで決めるとして、便利そうなので全部報酬として受け取る。あとはたくさんあるキャンディを消費して各種アイテムと交換。アカツキ達の属性に合わせて各種技を覚えられるビットも交換。あとで使うかもしれないし、スキル構成を考えるときに入れ替えできる選択肢があるとないとでは大違いだからね!
あとは適当に報酬一覧を眺めながら目で楽しむことも忘れない。
普通のアイテムやスキルもあるけど、生産職用の素材アイテムや聖獣の生まれてくる卵みたいな報酬もあるみたい。
でも、たった一人だけが手に入る報酬みたいなものは、上位十人に付与されたらしい能力アップの効果がある称号くらいかな。トロフィーとしても称号は機能しているけど、一位から十位まではさすがに特別仕様だね。
こんな大人数の中で一位取ってもオンリーワンのなにかが貰えないとかあったらさすがに不公平がすぎるもの。
「よし、あとは旅の準備をして寝ますか」
「く」
「アカツキ? ブラッシングしてほしいんですか? よし、ならやりましょうか。明日は会えませんし……」
自分のブラシを咥えてトコトコと寄って来たアカツキを膝の上に乗せる。すると他の子も自分のお手入れに必要なブラシやタオルを咥えてその後ろにちょこんと座った。わくわくしているのが視線で分かる。可愛いかよ。
「順番待ちです。ちょっと待っていてくださいね」
気持ち良さそうに目を細めるアカツキの羽繕いをする。
次に目指すのは太陽と雨の複合属性のボスのいる山を超えた先、太陽が初めに顔を出す街だ。前に調べた伝承の場所。アカツキが神獣になれるかもしれない場所。
新しい街に行くのは少しだけ不安だけれど、この子達がいれば安心だ。始まりの街から全然離れなかったのがむしろおかしいんだよね。
まずはボスの撃破をして、それから山越え。途中、キャンプをして自動セーブ。復活ポイントを指定。
あ、その前にこの街から出る前に鳳凰のお守り買っておかないと。鳳凰のお守りひとつにつき、一箇所場所を登録してワープできるようになる。もちろん、行ったことのある場所だけだね。
先にやっておかないと、この街に戻ってくるのにまた山越えしないといけなくなる。準備に忙しいね。
そして、メンテ中はリアルのほうで検診受けて、あと家のお手伝いかなあ。
確かお母さんがお花のお稽古用に着物を仕立ててくれたって言っていたし、私は自分の分を仕立て屋さんに取りに行かないといけない。
電子系統が便利になったこのご時世、伝統芸能は廃れる一方なので守るために私も頑張らなくちゃ。生け花もあるし、アレルギーもあるから動物は飼えないけど……今は自由にさせてもらっているし、お手伝いくらいはしないとね。別に受け継げって強制されてるわけでもないし。
あと着物は純粋に好きなので、本物の仕立て屋さんがどんな感じなのか楽しみなのもある。ゲーム内でも和装なのはそういった意味での趣味なのだ。
「はい、次はオボロですよ」
あとは掲示板巡りとか、動画の反響を調べたりとかかなあ。やることがたくさんだ。頑張ろう!
そう決めて、私は大好きな子達のお手入れを好きなだけ堪能したのでした。
掲示板とリアル、そしてステータス一覧を挟んで次の章となります!




