危なげなく撃破!
あれから、心の宣言通りに三十分程度でキメラを倒すことができた。パーティの皆が頑張ったのもあるけれど、キメラの行動モーションが、増えた鱗粉爆発以外になかったのが原因だね。
動画をアップする人間として、行動モーションを全部見て撮ってから倒しておくべきかなと見ていたけれど、あれ以降新しい動きをすることはなかった。この最終日のみに出現するピニャータだからだろうか?
ほら、イベント復刻があるかも分からないわけだし、せっかくなら運営が用意したものは全部見たいよね。そういうオタク的心理だ。好きなキャラクターのセリフを全部録画してボイス集にするみたいに、モンスターの行動モーション集もある程度需要はある。
私自身の動画ももちろん人気になったけれど、そうやって役に立つ情報も発信しておけば、アイドル的な配信者に興味のないゲーマー層まで、運が良ければファンとして引っ張り込めるかもしれない。その分嫌ってくる人も増えるだろうけど、プラスが大きければ問題はない。
計算高くいこう! 全てはアカツキ達聖獣の可愛さを広めるために!
「お疲れ様でした」
「おつかれっしたー!」
「お疲れ様でしたあ! ケイカさん、ありがとうございます!」
「お疲れ様です! 助かりました!」
挨拶を笑顔で返してリザルトをチラッと見る。
同じくリザルト画面を見始めたパーティメンバーは歓声を上げた。多分皆一緒かな? キャンディが三万。キャメレオン単体で五千程度と考えるとありえないくらいに美味しい敵だったということだ。あれ一体倒すだけで、なにもしなくてもある程度はランキングを駆け上がることができるだろう。
確か初日は一日中やって一万とちょっとだったか。すっごい美味しい。
一時間を無駄な時間として過ごさなければ合体してキメラにはならないので、その間に同じくらい稼げるような上位勢なら、こんなことに時間を無駄にしていなくてもランキングを上がれるだろうが、一か八かの賭けに出ようとする場合に狙うのは結構いいかもしれないね。
「最初にも言いましたが、動画はアップしても大丈夫でしょうか? さすがに動き回っているので加工するとなると、すごく大変なのですが」
撮ってから気づいた。許可をとっているとはいえ、顔丸出しはさすがにどうかも思って。私は配信者だからいいけれど、この人達はファンとはいえフレンドというわけでもないし。
顔を加工するにしても動き回りすぎて私の編集技術では不可能だ。
「構いません!」
「俺も。むしろ光栄っす」
「私もー! はあ、垂れ目で困った笑顔が素敵です可愛いです。ウインクお願いします!」
「え、あ、はい? こ、こうです?」
まさか、まさかのファンサ要求だった。
頑張ってウインクを決めてみる。全力でサムズアップされた。これでいいらしい。まさか、まさかだよ。
「お役に立ててなによりです。それでは、イベント最後まで楽しみましょうね」
「はい! いい思い出になりました!」
「ありがとうございました!」
「あ、あの、もう行っちゃうんですか……?」
子犬のような顔でしょぼんと落ち込む女の子。
自分よりも背の低めのその子に合わせ、少し前屈みになって笑いかける。
「お誘いありがとうございます。私はイベント終了までソロでいようと決めていまして。もちろん、危ないところを見かけたら手助けしちゃいますが……一緒に行けなくてごめんなさい」
「い、いえこちらこそ、わがまま言ってすみませんでした!」
勝手に撫でるのはどうかと思うので、顔を覗き込むようにして、近くなりすぎず、遠すぎずの位置で微笑む。それだけでもいっぱいいっぱいになってしまったらしい女の子。はあ〜小動物かな? 可愛すぎない? 本当にごめんね!
尊い可愛いの文字に心を埋め尽くされつつ、顔には出さないようにしてお別れする。そうしたら次はアカツキ達へのご褒美タイムだ。
「待っていましたよね。ぎゅーってしましょう」
「くー!」
「うぉん!」
「しゅるぅ」
「うにゃーん!」
「わっ!?」
言った途端にオボロが飛びかかってきて後ろ向きに倒れる。
草原の草が頬を撫でる感触がくすぐったい。そして上からアカツキやジン、まさかまさかのシズクまで仰向けになった私の上にのしかかって甘えてきた!
……え、なにこれ天国?
「はわ……幸せ……ですぅ」
編集するときに動画の録画ボタンを切り忘れていたことに気付き、私は死んだ目でおまけ動画を作った。確実に数字が取れるものは利用する。たとえ、そう、恥ずかしくても。
Twitterのアンケートにご協力ありがとうございました!
ニワトリカラーで決定でしたね!
絵師様との相談もあり、緋色一色も主人公らしいということで、「とある設定」をこのあと出して製作係のストッキンさんに頑張ってもらいます。
せっかく可愛く描いてもらったデザインですから、反映したいよね!
自分が読みたい・エモいと思う話と設定を今後も考えつつ頑張ります!




