猫虐待(歓待)コピペPart2
ええと、コピペっぽくするとするならこうか?
「てれれれっれ、てれれれっれ、はい、ユウマはBGM担当」
「は!?」
無茶振りしてから撫で回していたリチョウのそばに水遊び用の簡易温水プールセットを設置。テントのようにホーム以外で生活をする想定も当然されているため、このように温水プール用のセットまであるのだ。まあ今冬だからどちらかというとお風呂セットみたいなものだが、神獣郷の中では常に適温なのであまり季節は関係なくやりたいことだけができる。そう、真冬に海で泳ぐことだってね! 結構な頻度で竜宮城に遊びに行ってるから現実とのギャップで風邪をひきそうだ。
「いや君のそのリズムだと今からこの人が3分で料理されることになるんだけど……」
「いい感じのホラーなBGMでよろしくお願いします」
「ええ……フリー音源なら探すけど」
そこでやってくれるのがユウマ君ってやつなんです。いい人でしょ? みんなもチャンネルはあるけど動画がなにひとつ投稿されないユウマをチャンネル登録してあげて動画投稿圧をかけようね!!
「氷でお風呂場を作ったら完全にいじめなので……いや、いやいやいや、これは虐待ですとも! ねえ、リリィ?」
「え、あ、はい……? お水をかけられるのが苦手な子をお風呂に入れるならそうとられてもおかしくはないと思いますね。こっとんもそれほど得意ではないので、お風呂の際はわたしのお膝のうえで震えながらしがみついています」
「なにそれ気になる……じゃなくって、さあレキ。リチョウ氏を持ち上げてプールに!」
「承知……した」
思わぬところでこっとんちゃん激カワエピソードを浴びて致命傷を受けるところだった。これがメンタルに響いたものがダメージ換算されるクソゲーだったら体力8割は消し飛んでたね。
実況で見たことがあるけれど、バグだらけでストレスまみれのゲームなのにそれがダイレクトにステータスに影響する伝説のクソゲーが存在する。実況で見てる分には楽しいんだけど、シナリオやら挙動やらでストレスを抱くとそれがそのままダメージになって体力が削れるので、究極の対抗策は心を無にすることだったそうな。だからあのゲームは『悟りを開きたい人向け』などと揶揄されている。クリア者は人間卒業ならぬ、涅槃入りとか解脱済みとかのタグがつくことになる。
閑話休題。
「おお、おお!? 我を雑に巻き巻きして持ち上げるとはなにごとか!?」
「はい、まずは汚い虎を発見したので他人の目に晒してやりながら、嫌がるのをそのままにお湯攻めをします」
温水にザバっと浸けられたリチョウ氏の前に立ち、バケツでお湯をすくってかけていく。最初は雑だとか、我を誰だと思っているだとか、いろいろと文句を言っていた彼はしばらくお湯をかけて毛に馴染ませていると静かになっていった。仏頂面で無言である。洗っている間も常に二本のツタで拘束されているため、身動きは取れないだろう。ツタの下辺りを洗いたいときは一本ずつ場所を変えてもらっている。そうして毛がお湯を弾かないようにしながらじっくり全身マッサージの真似事をしながら馴染ませて、お次にシャンプーを取り出す。
「十分お湯攻めしたあとは薬品をこれでもかとかけてゴシゴシします。不本意ながら泡だらけになってしまったお顔を晒してやりましょうね」
すいっと操作してカメラを向ける。
おっとこれは。
『すでに敗北の味がしてる』
『陥落早すぎ!!』
『口元緩んでますよ神の使い(自称)さん』
『チョッッッッッロ』
『プライドないの?』
『女騎士もののエロ同人で見たことある顔』
『うわああ急に解像度を爆上げするなやめろ!!!』
『それで解像度が上がるお前いずなに?』
目の前で映像見てるのに解像度もなにもないでしょうに。
「それから、めちゃくちゃ薬品で汚染したあとにまたお湯攻めです。いや〜なんてひどい所業でしょう! びっくりするくらいひどいことをしていて涙が出てきちゃいそうですよ。あ、見てください! 毛の中に虫!」
「ふぉ……は!? そんなものいるはずがなかろう! 我は聖獣なるぞ!」
「と、こうして寝落ちしそうだったところを無理矢理起こします」
「貴様!!」
この世界にノミがいるかどうかはともかくとして、汚くしていると野良の聖獣なら虫が入り込むことがあるのかもしれない。虫の聖獣もいることだし、小さな虫自体もフレーバーとしては存在するのかな。
私達が不快になりそうなことはゲームだから認知されないだけで、この世界に『生きていると定義されている』存在にはもっと解像度の高い世界が、ちゃんとその目に映っているのかもしれない。
ゲームの中とは、かくも人の好むいいとこどりをした世界であるべきだ。だからこの神獣郷にはフィルター機能がいくつかあるのだろう。まったく無くしてしまったほうが楽だろうに、そうしない配慮はありがたい。
とはいえ、通常の虫まで全て可視化されることはないだろうけれど。
でかい虎を洗うのに随分と時間がかかったが、真っ白な毛並みがさらにピカピカになった。宝石も傷つけないように軽く柔らかい布で磨いて、全身の泡を落としたらその後は、プールからシズクの水流操作で水を抜いてアカツキの出番だ。
なんとなく虎をあわれんでいるような視線を向けたあと、アカツキが羽ばたき温風を発生させる。そう、今度は全身にくまなく熱風を浴びせてふあっふあのころっころにしてしまうターンである。ワイルドで知的な研究者気取りの彼にはいい香りのぬいぐるみめいた触り心地にされてしまうのは堪えるだろう。猫科は自分で毛繕いをしたあと人間に撫でられると毛繕いし直す場合があるとも聞いたことがあるし、他人に勝手な毛繕いをされるのは立派な虐待である!
えっ、ジン? ……これは虐待と言い張ってるだけの歓待なので……。
「はい、仕上がったら今度は私じゃとてもは食べられないカリカリの肉を与えます。そして同じく私では恐ろしく一ヶ月先さえ飲めないような白い液体もです」
『白い……液体?』
『ステイ』
『音声素材にされるところまで見えた』
「……あのね、過激すぎるものは僕が検閲するから覚えておいて」
『あっハイ』
『後方彼氏面がよぉ』
『事務所通せってことですね分かりました』
『ユウマきゅん=事務所ってこと!?』
『残当』
『どっちかというと保護者面』
『ケイカちゃんの裏で本当にフリーBGM探してきて真顔で流しはじめるオモロイ場面絶対切り抜かれてるよ』
なんか面白そうな話をしているけれど、それはともかくとして……私じゃとても食べられないような量のドデカいお肉を丸ごとカリッとベーコンにしたものがこちらになります。それから、これは希少種のウシ聖獣からしか手に入らないためとんでもないお値段まで高騰して、一ヶ月先まで販売予約が埋まっているミルクです。なんとこれを贅沢に大きな深皿にたっぷりと注ぎます。泣いてなんかないです。私は一ヶ月後に予約が取れましたけど、これはリリィが持ってきたやつです。いい菓子にしちゃうともったいないけどどうしよう……一回は生で飲んでみたほうがいいのかな……みたいな相談を受けていたところでした。これを虐待と言い張る以上、私達では恐れ多くも飲めないようなものが必要だったんですね。だって相手は自称魔王という神の使いですからね。高級品を使わざるを得ない。
「身を切る思いですが、私は一ヶ月後に飲めますので……そのときはリリィも呼びますね」
「はい、お呼ばれ楽しみです! その間に覚悟しておかないといけませんわね」
なんとこれ、リアルの高級なタイプの牛乳らしくて……しかも味覚制限がほとんどかかっていないらしいのでかなり美味しいらしい。
あまりにも美味しくてもっと飲みたいと思ってしまうため、飲むのにも事前の覚悟が必要なのだ。私なんかはリアルでスポンサー元からお買い求めすればいいだけなんだけど……普通にリアルでも高いほうの牛乳だから……。
なお、猫科なのに猫ミルクじゃなくていいのか問題は神獣郷というゲームの中なので大丈夫です。現実で猫を拾ったんだったらちゃんと猫用のミルクとかを買おうね!!
「ふんっ、宮廷料理をいただいたことのある我を満足させるような食事など……………………」
ひとくち、ベーコンを口に入れた途端無言になった。
ミルクもひと舐めして止まらなくなっている。
なんというか……チョロすぎる。大丈夫か? この人。
さて、あとはなにをやってやろうか……そう考えているうちに、いっそう月光が強くなった気がした。
「ん?」
そして、私達の頭上に月光を遮るような大きな影がさす。
「なかなか帰って来ないと思えば……心配しましたよ、リチョウ。なにをなさっているのですか?」
ひどく困惑したような、とても美しい女性の声がした。
「ふぉ……おふぁ!? まっ、魔王様!! こ、これは違うのです我は断じて人間との馴れ合いなど……!!
リチョウ氏さぁ。
あとがき
いただいた感想で過去一笑いました。ありがとうございます。
◇
>『#魔王を呼び出す方法 リチョウの前でケイカちゃんが全力で「月に代わってお仕置きよ!!!」とポーズ付きで叫ぶ』
>好きだけど!! それをノリノリでやれるのはもうちょっと徹夜とかして正気を飛ばしてる状態じゃないと無理かな。選ばれませんように……。
>若干そんな思いが脳裏に過ったが、私は速やかに正気を打ち捨てることにするのだった。
なんだよ……今ならいけんじゃねえか。
◇
と、いうわけで後日談ショートショートです。巻末おまけ気分で。あとで神獣郷ライブラリにも載せますが、ひとまず面白い感想をいただけた感謝の印として。
・ケイカが月に代わってお仕置きよ! をやる場合確定でユウマが巻き込まれるの巻。
「ショートで動画をあげます。ユウマは隣でポーズだけやってください。大丈夫です。映らないようにするので。私の心の安寧のために隣で一緒にやってくれるだけでいいんです」
「しつこいなあ……まあ、でもその条件ならいいけど」
必死の説得だった。まさか私も本当にやることになるとは思ってなくて、けれども一人でやるほど羞恥心は捨てきれず……結果、遊びに来たユウマにお願いをして撮影に挑んだのだ。撮影は妹達がやってくれたのだが、それが一番ユウマに堪えただろうことは想像に難くない。
なお、後日しっかり二人とも映ってるのをアップして鬼電されました。
「申し訳ございませんでした」
「やる気はしたけどさぁ……」
綺麗に土下座を決めた私に呆れた顔を向けているだろうユウマは、それでも大きなため息を吐いて「それでも協力したのは僕だしね」と言葉を落とす。
予測していても、それでもやってくれるんだ……とは思ったが、墓穴を掘りかねないので黙っていると、ユウマは「顔あげなよ」と言ってくる。
怒った顔をしていないかちょっと怖かったが、意を決して顔を上げると、別にそんなことはなく、いつもの目が半分くらい死んでいるユウマの顔がそこにある。
「で、主犯は?」
「次女の飛鳥です!」
お姉ちゃんだけど妹を売ることもある。
人間というのはこのうえなく卑怯な生き物なので、私も実際聖人君子などではない。妹のために命かけるのは創作の中だけで十分だ。




