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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『秩序の獣は月見て吠える』

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太陽の神獣


「ふう、親切な旅人さん。美味しいクッキーをどうもありがとう! もう少しなにかない? ボク、とってもお腹が空いてるんだもんね!」


 ユウマやリリィと目を合わせる。笑っていない。大丈夫、笑ってはダメだと分かっているから、太陽の神獣様の行いに笑っているように見えないよう、愛想良い感じの笑みを浮かべて「それではどうでしょう? ここでお茶会をするというのは」と提案をする。嘲笑しなければ問題ないはずなので、これはセーフ……だよね? 


 唐突に笑ってはいけない神獣郷オンラインが始まったのに、すぐに対応できてる私すごくないか? ユウマ達が笑ってないのも大正解だからみんな偉い! 動画作るときは思いっきり爆笑しよ。


 にしてもこの神獣様、すごいこう……幼い感じの喋りかたをしてるなあ。属性盛り過ぎるのもいい加減に……いや、メインストーリーの光と闇の片方って考えるとこんなものなのだろうか? ものすごく失礼だけど、ホウオウさんのほうがよほど太陽の神獣っぽいっていうか……いや、やめておこう。


 こんな感じの太陽の神獣が世界を憂いて隠れてしまったり、闇堕ちせずに人とケモノの絆にもう一度光明を見出して認めてくれたと思うとなんか……なんかすごいエモい気がするし。


 あっ、でも伝承と口調全然違うのはあれかな。アインさんとホウオウさんも言ってたし、なんか綺麗な感じにまとめられてるのであって、過程も結果も同じだけど細かいところは大衆受けのためにそれっぽくしてある……みたいな? 

 まあ、歴史とか伝説ってそういうところあるよね。


「お茶会かあ、それはいい考えだね! それじゃあさっそくいい感じの広場にしよう!」


 太陽の神獣がウサギさんの指をパチンと鳴らすと、周囲のひまわり達がスライドしたように動いてちょっとした広場が出来上がる。より大きなひまわりがさらに大きくなり、日除けの傘のように頭上から垂れ下がる。見つめる先である太陽の神獣が地面にいるからこそできることだろう。他にも生い茂ったクローバーの下草がにょきっと伸びて椅子やテーブルを作り出す。クローバーそのままの見た目でできた家具はとっても素敵で、特に植物竜であるプラちゃんが大喜びした。


「ほら、キミもクローバーの椅子に座って座って! あっ、お茶会の道具はないなあ……なにか見た目が変わっても問題のない道具はない?」

「ティーセットならこちらで持っていますよ」


 プラちゃんがなんだかクローバーの家具に対抗意識を燃やしたらしい。私の腰の下あたりに自身の尻尾をくるくる巻いて差し出してツンツンしてくる。座ってあげるから待って。

 可愛いから欲しいなあ……こんな感じの自然を前面に押し出した家具。庭の果樹園の中とかに設置したい。いや、いっそここと同じようなひまわり畑を作るか? 庭も大きいし、いろんなところにいろんなお花を育てるのもいいなあ。


「ケイカ、予算はちゃんとレキに相談しておくんだよ」

「どうして分かったんですか!?」

「分かるよ……それくらい」


 小声で注意され、思わずびっくりしたけど、すごい呆れた顔をされた。私ってそんなに分かりやすい……? 

 予備のティーセットを大きなクローバーが何枚も横に広がってできているテーブルに置く。すると、太陽の神獣が楽しげに歌いながら手先を向ける。くるくると魔法でもかけるようにしてティーセットを光が囲むと、次にそこにあったのはひまわりに囲まれたウサギ柄のティーセットだった。


「み、見たことないデザインのティーセット……」


 驚いて呟く。課金の欄にある家具とか道具ショップにもなかったはず。

 リリィに視線を向けると、「この柄は畏れ多いので通常では流通していないはずです」とのお言葉。つまり? 


「げ、限定品……!?」


 戦慄した。

 まさかこのシナリオを進めないと手に入らないタイプの限定品!? 

 多分シナリオ自体は追憶機能とか、もしくは太陽の神獣に認められるようなプレイヤーだと判断されたらちゃんと発生するタイプなんだろうし、手に入れようとすれば手に入れられると思うんだけど、まさかここに来て限定品が手に入っちゃうとは……。


「おまけにこれもつけちゃう!」


 もう一度太陽の神獣が手を振り、底を見てごらん! と言われたので持ち上げる。ティーカップの底にはニワトリの可愛らしいマークがついていた。紅茶を飲み干したときに対面する底だ。そこに、鮮やかなニワトリの姿が……ってこれ、アカツキの初期の姿じゃないですか。顔を上げると、太陽の神獣はドヤ顔をして「どう?」と感想を求めてくる。いや、こんなの。こんなの。


「サプライズすぎます〜!」


 泣いて喜んだ。

 涙は出ないけど、感極まってカップを手にくるくるしながらアカツキを呼び、彼を片手で腕の中に引き込んで抱きしめてさらにまわる。


「カァ!! ガァァ!!」

「アカツキだぁぁぁぁ!!」

「ぴぃ!? ぷぅ、ぷぅ、ぴひゅ、るるるるぅ!!」

「きゅ! きゅあっ、きゅあっ、きゅるる! ぎぃ!!」

「シュアッ、シャア!! シュルルル!!」


 と、そんな感じで喜んでいたら、まずはザクロが抗議するように一個のカップを壊さないように手に持って声をあげた。その途端、プラちゃん、シズクと次々と鳴き声をあげてなにかを訴えていく。えっ、まさか自分たちのもの作ってほしい嘆願? いや、確かに私もほしいけどさ。それするとホームで待ってる子達が嫉妬しちゃうのでは……。


「ぷっ、ぷぅ」

「えっ、こっとん? あなたも?」


 リリィが腕の中に抱えたこっとんを見て驚いている。ユウマのほうでも次々パートナー達が声を上げていて、君達太陽の神獣相手によくそんな元気に自己主張できるね!? とびっくりした。パートナーのこと好きすぎじゃん……尊い。


「ふふっ、みんなキミたちのことが好きみたい! でもお手紙渡した子だけって決めてるからね、そっちの子たちはやってあげよう。でもまだの子は今はが

 ・ま・ん! お手紙を恥ずかしがらずに渡してからボクのところへもう一回おいで!」


 そう言って太陽の神獣はシズクやユウマのパートナー一匹、リリィのこっとんにひとつずつカップに術をかけて渡す。

 残念そうにしているザクロ達も、彼の言葉で納得したのか頷いている。これは……今後も会いに来ていいってことだよね? 絆の証みたいな感じでグッズ渡してくれるイベントも兼ねているのかもしれない。純粋に嬉しくて、お礼を言って頭を下げる。


 精神的に幼い感じの雰囲気だからってただ無邪気ってわけじゃなくて、こうして尊敬できるところを見せてくれて、なんだかすごく心があたたかくなった気がする。


 それからは私が気合を入れてケーキを作ったり、コーンスープを作ってみたりして甘めの食事を出した。紅茶には砂糖を四つ! アインさんとホウオウさんの会話、ちゃんと覚えてるよ! しっかり好みの味にできていたみたいで彼も大満足の顔をしていた。めちゃめちゃ大喰らいなようで、リリィの持ってきた商品も一緒に提供する。


 私とユウマが料理を作っている間に、一度リリィがこっとんを抱いたまま彼に話しかけに行っているのを見た。なにを話しているのか、なんとなくは想像がつく。こっとんのことだろう。大きなウサギのもこもこした手で彼女が撫でられ、肩を震わせているのが少し遠くても分かった。直接会話は聞けなかったけど、きっと良い結果になったんだろうと思う。


 ほら、言ったでしょう。

 君達はもうとっくに許されてるんだよ。


 でも、私はなにも聞かない。

 どんな会話があったのか、根掘り葉掘り聞くこともきっとできるし、リリィは教えてくれるだろうけど、こっちから聞きはしない。それは彼女達の大事な思い出になるだろうから。


 ま、ストーリーが映像で追加されてくれたりしたらそのときは見るんだけどね。なんか、不躾に聞きにいくのだけは違うなって感じたからそうしないだけ。気になりはしている。


 しばらく泣いているだろう彼女達に気づかないふりをして料理を続行する。

 ユウマも簡単な料理は手伝ってくれるので、フレンドとの共同で料理を作る機能を使ってリリィが落ち着くまでいくつもご馳走を作った。


 そのほとんどは太陽の神獣のお腹の中に消えていくことになったけど、いつのまにかテーブルの前の椅子に座っていたおいぬ様にも三割くらい食べられてたよね。本当にいつここに来たのか分からないってくらい、振り返ったらいた……みたいな。


「やあ、友達!」

「ご機嫌麗しゅう、太陽の」


 白くなった蝶々が太陽の神獣の鼻先に溜まると、彼が目を細めてなにやら言葉をかけて花びらに変わっていく。あれが浄化された魂が次の生に還るところ……なのかなあ。


「ふふっ、たくさん歓迎してくれてありがとう! それでキミたちはボクへはなにかの用で来たのかな?」


 彼の瞳がこちらを射抜くように見つめる。

 まさか、太陽の塔へ登らずに本題に入ることになるだなんて思っていなかった私は盛大に紅茶をこぼした。


 現実で同じようなことがあったら絶対むせてるよこれ。

キャラクターデザイン・原案のくら桐さんが非公式でケイカのアオザイ風衣装を描いてくださいました!!

心の中にストッキンさんを宿して描いたとおっしゃっていた通り、大変おみ足が良すぎるイラストです!!ぜひ皆さんも見てください!!

https://x.com/kurakiri221/status/1760674031492337988?s=46&t=4DXPdpWA9SviWd7D3yBvxg

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[一言] ほぼ公式な非公式のイラスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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