ドキッ♡上限なし・恐怖の赤スパ祭り!【十一〜十五人目】
若干お客さんに警戒するようになってしまってから数分。
それでもお客さんは次々とやってくる。
次にやってきたお客さんはなんと、ちょっとラフめの執事服にモノクルをつけた高身長お姉様だった!
思わずはわっ、顔がいい! と叫びそうになって口元を抑える。いや、顔がいい!! クソデカテロップが画面に出てしまっためちゃくちゃ恥ずかしい思いをしていたら、お姉さんが爽やかに笑いながら「造形頑張ったからそう言ってもらえると嬉しいね」なんて声をかけてくる。みっ、見られてる〜!? 恥ずか死ぬよこんなの。しかもお姉さんめちゃくちゃ声もいいな!? これは女子校で王子様やってるタイプだ! 間違いない!
「ブランという。皆さんでうちの子に乗った写真を撮らせてほしい」
「はっ、はい! えっと、パートナーさんはどちらに?」
「お店の中は窮屈だからね。あまり縮小はさせていないんだ。外にいるから、少しだけお時間をもらってもいいかな?」
「ふおおお、よ、喜んで!?」
紳士的に手を差し出されて思わず乗せちゃったけど!? コメント欄もある意味大盛り上がりである。ボーイッシュ女子いいよね派と、エレヤンが照れてる!? 珍しいな天変地異の前触れか? とか言ってくる奴らで。いやおい、私でも照れることくらいあるわ。それってかなり失礼じゃないですか? ねえ???
「ケイカ、全員指名だって?」
「へ? ああ、はい。そうですね」
思わず見惚れていたら、背中をユウマに小突かれて歩き出す。自然とほどいた手をぷらぷらしていると、ザクロちゃんがドスドスと近づいてきて手を繋ぐ。真似をしたかったらしいのが可愛くて、にっこりと笑いながら鼻先でちょんとキスをする。
そうして、後から来たリリィも合わせて外に出るとそこには大きな双頭のイノシシと、これまた大きな蛇さんがいた。なるほど……さてはブランさんって、でっかくて可愛い。略してでっかわいい好きの民だな? 分かる。
「こっちがパートナーのウルズ。最近神獣封豨になったんだ。それから、こっちが修蛇のウィン。二頭とも私の良きパートナーだよ」
「この子達に乗ってもいいってことですか!?」
「ああ、もちろん。この子達も喜ぶよ」
思わずそわついてしまう。
どちらに乗るにしても、ひとまず挨拶をしておきたくて鼻先に手を差し出すと、ウルズの鼻がもちっと触れて幸せになってしまった。そっと毛並みに触れさせてもらうと、なんとなくしっとりしていて艶々している。僕もとばかりに、私の手とウルズの間に大きな頭を下から差し込んできたウィンもひんやりしっとりしていて、触り心地が良すぎて癖になりそう。どちらも雨属性らしい。夏場に抱きついたら涼しそうだ。
でっかわいい子達の甘え仕草に萌えてると、「ケイカはウルズに乗ってあげて」と言われて頷く。彼女の初期パートナーらしく、中心にドンと立っている上に私が跨って勇ましくキリッとした姿を撮りたいらしい。大きくてなが〜いウィンの上にはリリィとユウマが座って、ウルズの横にブランさんが立っての集合写真だ。
何回か撮影をして、名残惜しく思いつつも下に降りて、最後にもう一度撫でる。渡されたお値段は『39393939ゴールド』……って、え?
「いつも投げられないし、これくらいはね。最近結構貯まってたし」
「ふおおおおあなたもですか!!」
軽くポンと引き渡された金額の表示を見て変な声が出た。さっきの人もそうだったけど、皆さん金額がおかしい。あ〜金銭感覚が狂う音〜!!
「あの、次は僕いいですか?」
皆で店内へ戻ってくると、黒猫フードを被った白い髪の少年が駆け寄ってきた。肩に乗っている黒猫ちゃんの専用ユニーク装備だろうか? フードのほうもちゃんと黒猫ちゃんに合わせてオッドアイになっていて可愛らしい。
「いいですよ〜、ご指名は誰ですか?」
可愛い系の男の子たすかる〜と思いながら尋ねてみれば、彼はキラキラのおめめでユウマを見た。
「ユウマちゃんとあうんちゃんと写真撮らせてください!」
そのとき、仕事に戻ろうとしていたユウマが振り返って彼を二度見した。
「ちゃん!? ふっ、ぐっ、ふふふふふふ。ユウマ〜ご指名ですってよ〜」
「笑わないでくれない? あとで覚えてろよ。はあ〜、あっ、あそこで笑い袋になってる人は気にしないでください。僕も、不快なわけじゃないんで呼びかたはそのままでいいですよ。あうんと一緒のご指名ですね。承知しました。どんな写真にしますか?」
いや〜、ユウマも対応が慣れたものだよね。私の対応も慣れきってるけど。笑いがおさまらなくてひいひい言ってると、彼はそのままご指名してくれた子と一緒に写真を撮り始める。しかも写真は二人でハートポーズをしつつ、二人の前であうんちゃんのしっぽと黒猫ちゃんの尻尾でふんわりとハートを作る可愛らしいポーズだ。いいね、あれ私もほしいな。スクショ送ってくれないかな。
そしてユウマが受け取っていたのは二万という……今までのちょっとおかしい金額から考えるとかなり常識的な金額だった。なぜ!? やっぱり皆さん私の金銭感覚壊しにきてるでしょ!!
和やかに撮影している隣で、ようやく笑いが落ち着いてきた私に声がかけられる。黒髪ツインテールのいわゆる地雷系女子ってやつだった。衣装が可愛いすぎるが!? っというか、腕に抱えてる小さなキッチョウが可愛すぎる。
「この子〜、ボスのキッチョウじゃなくって野生の子だったからまだ子供なんですよ〜! 可愛くないですか?」
「ぎゃんかわです」
語彙力!
「ポーズ指定はですねぇ、3人でおーっきなハート作りたいです!」
「分かりました。とびっきりのを作りましょう! みんなはハートの中に入るようにして……」
いい感じのハートができて大満足である。
しかも一枚1000円で! って言ってくれたので私のメンタルにも優しいお値段だ。嬉しい……。
「んじゃ、いちダースくらい買わせていただくので一万二千で」
「結局!?」
不意打ちを喰らった私に彼女はくすくす笑って挨拶をしてから帰っていった。
それから、以前イベントで出会ったチャイナ服でお団子の子にも会って、あれからどうしてましたか〜? ってお話をできたのでとっても楽しかった! メガネが前と違うものに変わってたので言及したら驚かれてたな〜。さすがに親交がある人は覚えてるぞ! 以前会ったパンダちゃんはどうやら神獣になったようで、おっきなパンダに抱きしめられて幸せすぎて死ぬかと思った。
「ケイカちゃんとユウマ君でハートポーズしていただきたいです!」
「はーい、ユウマ〜! ご指名ですよ〜」
「はいはい、注文は?」
「ハートポーズだって!」
「りょーかい」
うっきうきでハート作ろうとしたらユウマのほうがグッドポーズをして、私だけなんか気合い入れたみたいになった。わざとじゃなくて自然にこうなることってある!?
「ちょっとユウマ!!」
「いいでしょ別に。内容の是非はお客さんにジャッジしてもらうのが一番だろ」
「お二人のやりとりが美味しいのでおっけーです!」
「ええ……やり直しを要求します! やり直しを! 要求します!!」
「やだ。僕次も指名あるから……じゃ」
「ユウマ!!」
「助かる〜」
結局ユウマには逃げられたけど、お値段が1500円と大変胃に優しい感じだったので助かった。
「あの〜……」
「あっ、はい! ご指名ですか?」
今度は書生服姿の女性だった。深い紺のポニーテールに黒縁メガネで、深めの青の書生服と合わせて落ち着いたスタイルが大人だ! こうしていろんなプレイヤーと出会うと自分とは違ったファッションの人がいろいろと見られてとてま楽しい。
「はい。よろしくお願いします。えっと、私あれがやりたいです……みんなに囲まれた状態で、ハートポーズ取ろうとして失敗するやつ……」
「うっ……わっ、私はいいですけど、それでいいんですか!?」
「お願いします〜」
ちょっと照れながら指先をちょんちょんと合わせてお願いされたことに、本当にそれでいいの!? と思わず聞き返しちゃったけど、それでいいらしい。地味にさっきの出来事で私にもダメージが入ってるけど、この人は悪くないんで……。
「ところでその子って!」
「あっ、はい! オボロちゃんと同じ系統です〜まだまだ始めたばかりですけど」
彼女の連れているパートナーがスノウホワイト・ウルフだったので、なんだか懐かしくなっちゃった。グレイウルフから進化したばかりなのかな? それとも少し経った頃だろうか? 私のときは結構早めに進化の機会があったから、本当に懐かしい姿でにっこりしちゃう。
「オボロおいで〜」
「えっ、そんな! こんな可愛い場面を見てしまっていいんですか!?」
オボロと彼女のパートナーが鼻キスをして交流を深めている。先輩と後輩って感じの接しかただし、彼女のパートナーもオボロのファンなのか興奮しきって尻尾をぶんぶん千切れんばかりに振っていて可愛すぎる。そしてプレイヤー本人もめちゃくちゃ喜んでいて可愛すぎる!!
「それじゃあ撮りましょっか〜。私がグッドのほうやればいいんですよね?」
「はい! よろしくお願いします! 私ハート作るんで……」
みんながわらわらと集まって私達を中心に思い思いのポーズを取る。そして私がグッドポーズをして、彼女がハートポーズをして撮影終了。何度も頭を下げながら「装備新調したばかりで……少なくてすいません!」なんて言いながら渡されたのは3000ゴールド。
思わず両腕を取ってぶんぶん振りながら「ありがとう!!」なんて縋りついてしまった。だって、これだけ常識的な額ってなかなかなくって……。相手の子が「ひえええ推しに手ぇ握られてる〜」って慌ててたのもまた可愛くてサービスいっぱいしちゃったよね。お前らも彼女の健気な感じを見習ってくださいよ! なんて配信画面に言ったら、同じ額のスパチャがすごい数来た。やめろ。や 違う! そうじゃない!! 違うんだよそういうことじゃないんだよ!! 私を札束で殴るのをやめてって言ってるんですよ!! 本当に恐怖のスパチャ祭りで私は怖いよ!!
そんなこんなで、ゲーム内と配信内で同時に行われた恐怖の赤スパ祭りは続き……アルバイトイベントが終わるまでずっと私をビビらせるのだった。
合計金額を見たくない……見たくない。
「新しい装備買おっかな……」
のんきにつぶやくユウマに睨みつけると、鼻で笑われた。解せない。
これでノベプラの感想も含めて全員! のはず!!
アルバイトはここまでです!!リクエストありがとうございました〜!!




