ドキッ♡上限なし・恐怖の赤スパ祭り!【十人目】
「あ、あなたはあのときの……!?」
海イベントのときに大量注文で困らされてしまった人が目の前にいた。
九尾狐ちゃんを連れていることから間違いない!
「要求はこうです」
彼女の手には、首枷に手枷足枷、ついでに口枷……と、黒を基調としたどう見てもアブノーマルな感じの拘束グッズが乗せられていた。さすがに身の危険を感じたので後ずさると、ユウマが前に出てこちらを見てくる。その目を見てなんとなく意思疎通を測ることができたので、私は素早くリリィを裏に連れていく。
「お客さん、僕と交渉しませんか」
「へえ?」
めちゃくちゃ冷たい二人の声が聞こえて、どこからかゴングの鳴る音がした気がした。
「ケイカ、条件の緩和ができたからもうこっちに来てもいいよ」
「本当ですか?」
ゆっくりと私だけが顔を出すと、ツンと不機嫌そうな顔をした女の人と、めちゃくちゃ疲れた顔をしたユウマがそこにいた。対応丸投げしちゃってごめんね……あとでさすがに謝ってお礼をしよう。
「この狐耳カチューシャと耳当てをつけて一緒の写真を撮ればいいって」
「その代わり、当初予定していた金額は差し上げませんからね」
「だからそれでいいですって」
密かに冷戦状態が続いているらしき二人に近づいて、恐る恐る狐耳カチューシャと耳当てをつける。すると、驚くほどに周囲からの音が消えた。自分でなにか喋っても聞こえないレベルだ。
リアルならともかく、ゲーム内では別に音が空気を震わせて耳に届いているわけではなく、単純に見る、聞く機能があってそれを利用している状態なので音を封じることを目的にした道具をつけると本当に何も聴こえなくなる。あまりにも静かすぎてちょっとした恐怖に駆られそうになったけど、途中からユウマとリリィが手を握ってくれたので心を落ち着かせることができた。他の子達も集まって、なにも聞こえない中写真撮影をされる。OKサインが出て耳当てから解放されると、ルナテミスさんとストッキンさんがこちらにやってきて心配の声をかけてくれた。
「い、今ならストッキンさんの趣味の服着てもダメージ少なそうです……さっきのに比べれば……」
「え!? 本当ですか!?」
「喜ぶんじゃないにゃ変態」
ルナテミスさんのツッコミがストッキンさんの腰に入った。
残りの料金対応はユウマが代わりにしてくれて、早々に立ち去っていった彼女に緊張して息を詰めていたのを吐き出していく。びっくりしたぁ〜! 絵とかで拘束具のやつを見るのはいいんだけど、自分が……ってなるとやっぱり抵抗感があったから、対応をしてくれて本当に助かった。えっちなのが悪いとは言わないけど、神獣郷は健全なゲームなのであれは大丈夫なのかどうなのか……微妙なところだ。もうちょいこう……手心とか加えてもらえると助かるんだけど。
そうして、どっと精神的に疲れた私はいったんバックヤードで休むことにしたのだった。
「無理しなくていいからね」
「すみません……」
ユウマに手を振って裏へ。心配してついてきてくれたルナテミスさんと手を繋がせてもらって、よしよしと撫でられながら休憩をする。アカツキをぎゅっと抱きしめて、他の子達が身を寄せ合ってくれたものだからあったかくて思わず笑顔になる。
「おこちゃまはホットミルク飲むといいにゃ」
「あ、ありがとうございます」
彼女がボックスから取り出したホットミルクにふうふうしながら口をつける。
世の中の配信者って、いろんな人を相手にするから大変なんだなぁ……と、改めて実感する出来事であった。
本編は短めですが、なんと実は【神獣郷ライブラリ】挿絵・設定・番外・短編ギャラリーのほうに四本もハロウィン記念の短編ssがアップされております!!
作者ページから飛んでそちらも合わせて読んでみてくださいね!!
①配信者達のハッピーハロウィン(ケイカとサタソ様)
②ユウマとパートナー達の暗がりハロウィンパーティ(ユウマ)
③神獣郷ヴィランズのたわむれ(リンデと陛下※陛下の容姿初出し)
④アインと始まりの演舞(アインとパートナー達)




