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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『秩序の獣は月見て吠える』

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ドキッ♡上限なし・恐怖の赤スパ祭り!【六人目】


 順調にバイトが進んで慣れてきた頃、以前コロッケ抽選の際に見たことのあるパーカー青年が来店したことに気がついた。


 自分のパートナーに呪いをかけられるというキャラの濃いやり取りをしていた人だったため、さすがの私でも覚えている。あっ、と思ってパタパタと駆け寄る。以前は猫ちゃんしか連れていなかったように思えるけど、今日はどうやら違うらしい。半歩後ろにメイド服を纏った、どう見ても人間にしか見えない女の子を侍らせているけど……ああいう感じ、見たことあるな。


「いらっしゃいませ〜! ええっと、以前お会いしましたよね? はい、お席はあちらが空いてます。その子と一緒にどうぞ!」


 さては天邪鬼かな? とあたりをつけて挨拶をする。

 すると、俯いてパーカーのフードで隠れていた顔が上げられて目が合った。深い蒼色の目が細められて、ちょっと物静かな喜びを表しているように見える。

 自惚れじゃなければ、私が気づいて駆け寄ってからだろうか? 


「ありがとうございます。ほら、ニアも挨拶しよ。照れてないでほら」

「呪いを解除いたします、ジャックFS様。ニア様は覚えていただいたことを喜んでいらっしゃいます」


 今流れるようにニアって名前の猫ちゃんが呪いをかけたな。パートナーのとんでもない行いを笑って受け流しながら、彼はそのぷくっと膨らんだ頬を撫でている。そうしていたら、半歩後ろにいたメイド服姿の子が随分と流暢に喋って呪いを解除し、ニアちゃんの翻訳までしてみせた。


 人間の言葉を話せるようになる言語系スキルでもとっているのだろうか? ストッキンさんが連れて行ったアリスちゃんもだいぶ喋れるようになったはずだけど、この子は特に流暢だ。人間かと勘違いするほどに。自分の見立てにちょっと不安になって、思わずじっと見つめてしまう。すると、彼は笑って「上手でしょう? あなたの見立て通り、彼女は天邪鬼です。いっぱい頑張ったんですよ。ね? クロエ」と褒める言葉をかけてあげていた。


「にゃあ……」


 即座に、さっきよりも強い呪いスキルが二人に降りかかったのが見えたけど、二人とも一回受けてダメージを食らってからそれを解除している。流れるように何度も呪いが飛んでいくものだから、ニアちゃんはかなり嫉妬深い性格らしい。ここまでくるとすごい束縛彼女みたいだ……! とか思っちゃうけど、そこがきっと可愛いんだろうなとも理解できる。私だって、パートナーのみんなが自分をそれだけ想ってくれているなら嬉しいからね。まあ、呪いを解除するための費用がすごそうだけど。ああ、だから天邪鬼の彼女はそれ専用のスキル構成になってるとかなのかな。納得。


「ニア様。ご注文はいかがいたしましょうか?」

「んにゃ、にゃあう」


 そして、当たり前のようにパートナーのジャックさんよりも先にニアちゃんの注文を聞いてあげている。なんというか、一見した主従関係とは全く違って面白い。これが世に聞く、お猫様としもべってやつなのだろうか。猫を飼っている人の数割はこうしてお猫様をなによりも優先するしもべになりたがる人がいるって聞くけど、実際に目にすると普通に引くな。


『ケイカちゃんのもふもふ狂いっぷりもドン引きものなんだが?』

『自分のことは棚に上げてなに言ってるんだ』

『おっと棚上げかな???』

『ケイカさんにドン引きしてる俺らの気持ちやっと分かったの? 遅くない?』

『お ま い う』


 心の中でのぼやきが普通にテロップで流れていたらしい。

 総ツッコミが入って、接客をしながらも口元が引きつる。えっ、そんなに? そんなに私のもふもふ愛ってドン引きものなの? そんなに? 

 多少のショックを受けつつ、席に案内して食べるものを食べてもらっておいている間に他の人から呼ばれて写真撮影に赴く。


 女性客からの要望で肩を組みながらピースで写真を撮る。

 ザクロちゃんがその後ろから抱きしめるように私たち二人を腕翼で取り囲むショットだ。彼女はどうやらまだ初心者のようで、連れているドラゴンは(たつ)の初期聖獣らしい。四つ足のちっちゃいドラゴンで、プライドは高そうだけど大きなザクロちゃんを見上げて憧れの視線を送っていた。可愛いね。


 配置的には私たち。後ろにザクロちゃん。私たちの前、ど真ん中にミニドラゴン君って感じだった。チップとして三万ゴールドを押し付けられて、さすがに遠慮したものの結局現金をアイテム化させて服の中にねじ込んでくるという力技をされてしまい敗北した。


 お金の取り引きは基本メニューで電子的に行われるものなんだけど、こうして現金をアイテム化することもいつのまにかできるようになっていた。お金の取り引きを覚えるためにも、電子的なやりとりより物質があったほうが分かりやすいし、お金を使いすぎないようにできて良いだろうとのことだった。子供も遊ぶから、そのためなのかな? 


 私? 私はそんなシステムがあってもお金を溶かしますけどね!! 筋金入りの散財癖を舐めないでいただきたい。


『そんなことでドヤんな』

『そこ誇るところじゃないから』

『開き直らないでいただけます???』


 あ、はい。


 そんなこんなで席に案内した人たちを眺めながら、くるくる働く。

 軽食をとってから写真撮影を行う人ばかりだから、食べ終わった頃が一番呼ばれやすい。もちろん、その前に撮影するって人も多いけど、どうやらニアちゃん御一行様は甘い甘いスイーツを楽しんでから撮影するつもりらしい。


「ケイカ、これ3番テーブル」

「は〜い」


 バックヤードに提供する食品……という名のアイテムを取りに行っていたユウマが戻ってきたので受け取った商品を手に移動した……のだけど。


「いないと思ったら、裏にいたんだ? ユウマ……! PKサーバーでキルされた恨み、ここで晴らす! 勝負だユウマ……!! ニア、クロエ、準備!」

「なうん」

「はい、手筈通りに」


 なになになに!? 

 いや、ここ無し鯖だからPK返しとかはできないよね!? どういうこと!? 


「ちょっとユウマ、なにやらかしたんですか」


 小声で小突いて問えば、ユウマは少し考えてから「ああ」と淡白に反応する。彼曰く、「有名なPKを襲撃したときに、襲われてたあの人を巻き込んでやっちゃったかもしれないな」とのことだ。


「やっちゃったかもしれないなじゃないですが!? つまり助けるつもりが事故でキルしちゃったってことですよね。ちゃんと説明しました!?」

「複数犯を追いかけてたときだから、そっちを優先して移動したけど」

「説明なし!? それは怒りますって! ちゃんと謝って!! リリィの店で物騒なことは起こさないでほし――」


 いやでも、PKはできないはずだが……と思ったときである。

 天邪鬼のクロエちゃんが、真顔でその場にアイテムを広げた。


「はえ???」


 それは、どう見てもツイスターゲームのそれだった。

 ゲーム自体が古すぎて、もはや罰ゲームとかにしか使われなくなったものだけど、確かに存在自体はある。リアルじゃ化石レベルのアイテムだけど、そりゃあゲーム内ならあってもおかしくない。


 そして。


「こちらもございます。好きなほうをお選びください」


 クロエちゃんがもう一個出したのは、人生ゲーム。


「人生ゲームのほうで頼む」

「かしこまりました」


 真顔で選ぶユウマにもついていけない。

 なに? なにが起こってるの? なんで人生ゲーム? 


「そりゃあ、男同士でツイスターゲームとやらは辛いだろ」

「いやそれはそうかもしれないですけどぉ」


 なに当たり前のことを聞いてるんだって顔してこっちを見ないでほしい。

 私はなにを見せられるんだ??? 


 こうして、視聴者も大困惑の雪辱戦が始まった。


 なお、ユウマはカジノで培った卑怯な手をこれでもかと使って勝ちました。ジャックさんのほうもニアちゃんからどんどこ呪いが飛んできてたけど、それはユウマのガルムに全部食われていたので相殺されている。


 正直なところ、私はドン引きだ。


「今日のドン引き王選手権優勝は〜?」


『あの二人』

『間違いなくあの二人で同率一位』

『俺たちはなにを見せられてるんだ』

『場外戦のほうが激しいの草』

『あの二人がもうNo. 1だよ……』

『これは優勝』

『ワンツーフィニッシュどころか同率一位』

『あいつら』

『なに、この、なに???』


 ほぼ満場一致であの二人でした。


「くっ、仕方ないな。写真撮影にはケイカさんと、ユウマ。二人をそれぞれ一回ずつで指名する」

「その流れでユウマ指名するんですか!?」


 思わず突っ込んだ私、悪くないと思うんだ。

誕生祭のときにssを書いていただいたので、そちらにちょろっとだけ沿った形で書いてみました。いかがでしょうか?楽しんでいただけていたら幸いです!

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― 新着の感想 ―
[一言] この流れは流石に草なんだわ
[良い点] 公開処刑を貰いました ありがとうございます 次回も楽しみにして待ってます [一言] 次回「ユウマ 死す」デュエルスタンバイ!
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