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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『秩序の獣は月見て吠える』

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ドキッ♡上限なし・恐怖の赤スパ祭り!【一人目】


 カラン、カランと軽やかな来客の音が響く。

 そして、二人が競うように「いらっしゃいませ!」の声をかければ、やってきたプレイヤーの一人は周囲を見渡しながら嬉しそうに微笑を浮かべた。


 いつもよりずっと豪華なお店の中、お店に並ぶ商品達も新たなラインナップばかりだ。食紅を混ぜて作った白と赤の翼型のジャムパンはアカツキの翼を模していて、クランベリージャムを詰めて甘酸っぱい風味を楽しむことができる。赤色繋がりでアカツキのクランベリージャムパンとイチゴジャムパンの2種類が存在する。

 真っ白なおててにチョコペンでピンクの肉球が描かれているアイシングクッキーはオボロがモチーフだし、色違いで三毛猫柄のジンモチーフのクッキーもある。


 オボロのおててに関しては白いパンの上部に穴を開け、ピンクの桃ピューレで埋めることで肉球を再現しているものもある。こちらも中身がカスタードになっているものと、フローズンフルーツが詰まったものの2種類がある。


 シズクのモチーフになったパンはないけれど、代わりにシズクの尻尾を模した金色のチューブアイスと瓶ラムネが販売されている。彼女を模して容器を作成するのはたいへん楽しかったので、今後自分の屋敷でも容器だけ販売するのもいいかもしれないなどと思っているくらいだ。冷たいチューブアイスの味は何種類かあるけれど、金色の見た目に近いものはやはりオレンジとレモンだろうか。他の味も美味しいが、アイスの色でやはり尻尾の色も変わってしまうので、他の色のやつはお客さんが自分のパートナーと同じ色あいを選んで、己のパートナーモチーフの商品として楽しめるようにしてあるつもりだ。


 ちょっと甘さ控えめの紅茶ケーキにはレキをモチーフにして、木の葉のような形のチョコが上に乗っかっている。ケーキの周りにレキの背中で見られる春夏秋冬の花々のどれかがランダムで飾り付けになっている。ランダム商法ってやつはそんなに好かないけれど、こればっかりは仕方ない。春夏秋冬全ての花を乗せてしまうとごちゃごちゃした印象になってしまうので。

 注文でどれにするかを選ぶこともできるが、最初は必ずランダムだ。そもそも飾り付けが複数存在するなんてメニューには書いてないからね。あくまで飾りだし。選ぶことができるのは、飾り付けの種類が複数存在することに気がついたお客さんだけだ。


 それから、プラちゃんの美しい花のような尻尾を再現する努力をしたパイもある! 薄切りしたリンゴを花びらに見立てて一輪の大きなお花のようにしたアップルパイは、注文すればすぐに焼きたてでサクッとした食感が楽しめるものが出てくる。こういうところはゲームの中だから、いつでも焼きたてのものがお客さんに出せていいよね。


 シャークくんをモチーフにしたパンもちゃんとある。ココアパウダーを使って黒色をつけた白黒のシャチ型パンだ。中身は黒胡麻ペーストとココア、それから餡子の3種類が選べるようになっている。


 もちろん、ザクロちゃんのモチーフの商品もある。ザクロの名前の通り柘榴がゴロゴロと入ったタルトと柘榴ジュース。タルトのほうは焼き上がった後にもぼわっと目の前で炎で一瞬だけ包み込むパフォーマンスつきだ。一瞬なので焼けこげることもないが、熱々で食べられるし……なにより、ザクロちゃんっぽい演出にこだわった。宝石のようにキラキラとした柘榴の実は少し酸味の強い甘酸っぱさがあるため、付け合わせにクリームがついている。タルトの甘さを自分で調整して食べられるようになっているのだ。


 私自身をモチーフにしているのは赤と白のコントラストが鮮やかなイチゴパフェだ。羽根のような形の、ピンクに近い赤色をしたチョコの飾りがついているのが特徴的だね。大きさはそれほどじゃないけど、これも売れ行きがいい。


 まあ当然か、私目当てに来る人も多いからね! 嬉しくって思わずにやけちゃいそうである。ほっぺたに手を当てて照れつつ、写真撮影などに応じて稼ぎがどんどん増えていくさまは高笑いしたくなるほどの光景だ。こうして、目に見えてファンだよって言ってくれる人がたくさんいるのが幸せで仕方ない。


 こんな風に、みんなをモチーフにした商品が盛りだくさん。もちろん、ユウマのほうもゴリ押しして彼のパートナー達モチーフの商品をリリィに作ってもらっている。彼は、私みたいに有名なわけでもないし、グッズみたいなのはやらなくていいって言ってたけど、普通にユウマ自身も知名度あるほうだと思うんだよね。確かに私ほどではないけれど! 


 ある意味、リリィのお店で私達のコラボグッズ商品が販売されているようなものだ。コラボカフェ化しているとも言う。だからだろうか、この場でバイトしているアカツキ達4匹は全員自分の商品を買ってもらおうと勢力的に営業をしている。言葉は違くとも、なんとなく商品の売り出しをしてきているのは分かる程度の身振り手振りの営業だ。その姿が可愛らしくて、プレイヤーの共存者だけでなくNPCまでしっかりと魅了して商品を買ってもらっている。


 リリィ自身も、売れ行きがますます良くなってにっこにこの笑顔でくるくるとレジからホールから、全部のことをひととおりこなしながら働いてまわっていた。すごすぎる。女店主としての器は本当にでっかいと思うよ私は。疲れた顔ひとつ見せないんだもの。忙しいからバイトに入ったのに、ますます忙しくしちゃってちょっとごめんね! って思っていたけれど、本人は売れ行きが良くなればなるほどすごい楽しそうになっていくので、大丈夫そうだ。



「いらっしゃいませ〜」


 そうしていくらかプレイヤーをさばいていた頃のことだった。

 どこか、見覚えのある妖精の羽根を背中につけた女性がキラキラの笑顔でお店に入ってくる。妖精さんのような羽根に合わせてあるのか、ドレスも可愛いらしくふわふわで、けれど腰に銀のレイピアを差しているため、どこか妖精族の美しきお姫様! って感じもする。大人の女性の姿だからか、戦えるお姫様感があるよね。RPGの味方になるキャラ感というか……。


 うん、やっぱり見覚えある気がするな? と思って一瞬考える。


 妖精の羽根……そういえば、どこで売っているのか気になっていたんだっけ。結局調べてすらいない。


 えーっと、あっ! そうか! 


「こ、こんにちは!」


 妖精さんのほうから挨拶をしてきてもらったので、私もとことことそちらに向かう。彼女は私の姿を見るとそれだけでパッと花を散らしたみたいに笑顔になり、可愛い! というつぶやきをこぼした。可愛いと言ってもらえるのはとても嬉しい。そうそう、思い出したんだった。


「こんにちは! いらっしゃいませ、リブレさんですよね? コロッケの抽選会以来の……」

「え!?」


 驚かれて、あれ? 違ったっけ? と一瞬不安になる。もし違ったのなら大変失礼なことをしたことになるからだ。そんなに人を覚えるのは得意じゃないが、さすがに一度ファンサした相手くらいは覚えている……と思いたかったが、自分の記憶力に信用がおけない。内心だらだらと汗をかくように緊張していたが、やがて彼女が「覚えていてくださったんですか……?」と言ったので、ひと安心である。


 彼女の肩に乗った水色のハムスターもびっくりしたように大袈裟なリアクションをしている。その姿がやっぱりシンクロしているみたいで可愛らしかった。


「プリガー、やった! やったね! 覚えててもらえた! 嬉しい〜!」

「チッ! ヂヂッ!」


 プリガーの小さなおててをとって二人で喜んでいる姿が本当に可愛らしい。癒し系だ……と、心の中で拝みつつ、注文を受ける。二人はメニュー表を見ながら目をキラキラさせてあれこれ頼んでくれたが、お気に入りはアカツキの翼を模したジャムパンのようだ。ファンらしく、全部頼まなきゃ! でもこの場で食べすぎるのは……と迷っているのが大変微笑ましい。そうだよね、推しのグッズは全部揃えたくなるよね、分かる分かる! 


 その、『人の推しに自分がなれている』という事実がとても嬉しかった。そりゃこちらもニッコニコで対応しちゃうよね。ファンには喜んでほしいもの。


 結局全種類を頼みつつ、そのうち半分ほどはお土産としてアイテム化させて仕舞うことにしましたようだ。その場でのパフォーマンスがあるザクロのタルトと、アカツキのジャムパンと、そしてリリィのこっとんモチーフのパンは食べていくことにしたみたい。注文した品物を置いて、目をキラキラさせる姿を見ていると自己肯定感爆上がりって感じで、たまにはこうしてバイトするのもいいな〜なんて気分にもなってきた。リリィが良ければだけど、こうしてたまにコラボカフェみたいなのをさせてもらうっていうのもいいかもしれない。


「あ、あとそれから! 撮影、お願いしてもいいでしょうか?」

「はーい! 撮影についての説明はもう分かっていますよね。どんな風にしますか?」

「ケイカさんと、アカツキくんと、それからリリィさんと一緒に撮りたいです!」

「ポーズとかは指定ありますか?」

「えっと、そこまでは思いつかないので、お任せでお願いします!」

「承知しました。チェキ一枚入りま〜す! アカツキ、リリィ、ご指名だからおいでおいで〜」


 私が声をかけると、パタパタとウサギさんみたいに駆けてきたリリィが「私もいいんですか?」と首を傾げている。彼女はどうやら自分の人気っぷりの自覚がそんなにないようだ。君も十分魅力的な女の子だよ! なんて言うのはちょっと恥ずかしいのでとてもじゃないが口に出せないけど……だってほら、口説いてるみたいになっちゃうし。


 リブレさんと、肩に乗ったプリガーを私とリリィで囲んで、肩に片手を置く。アカツキは積極的に彼女の腕におさまりに行ったので、そのままリブレさんに抱きかかえてもらうことにした。彼女には、リリィと一緒に肩へ片手を置いてもう片方の外側の手はピース。なるべく近づいて密着するように、親しい友人と写真を撮るように真ん中に寄ってポーズをとれば、彼女は随分と緊張しているみたいではわわとなりながらもぎこちないピースをする。


 緊張したままの撮影だと忍びないので……ということで指先でザクロに指示を出せば、ザクロが私の扇子を使って私達の目線の先で踊り始める。それを見て、可愛い〜! と笑い出したリブレさんのタイミングを見ながら私のほうのカメラ機能でシャッターをきった。いい感じ! 


 写真アイテム化をして渡すと、わざわざ緊張をほぐすためにあんなことをしてくれたのかと感動したみたいで、握手する手をぶんぶん振られた。随分と可愛らしいかただなぁ……と思いつつ、写真と交換する形で料金もとい、スパチャ? いや、この場合はチップか? を払ってもらう。


「なにからなにまでありがとうございました!」

「いいえ〜、こちらこそ楽しんでいただけて嬉しく……5000ゴールド!?」

「もっと上乗せしたかったんですけど、あんまり多すぎてもよくないかなと思って……これだけですみません」

「いやっ、逆ですけど!? 多くない!? 写真一枚撮るだけで!?」

「……? ケイカさん達と撮影できて、しかも記念写真までもらえるのにそれだけでは少ないと思いますけど」


 私が慌てていると、不思議そうに首を傾げられておかしいのは私だけ!? となってくる。NPCとの撮影に応じていたユウマは、「いつもそれ以上のスパチャもらってるんじゃん」と呆れたように言っているが、現金で渡されるのとスパチャで表示が出るだけなのとでは結構感覚的に違うのだ。


「そ、それじゃあこのあともごゆっくりお楽しみくださいね〜」

「はい! ありがとうございました!」


 丁寧にお辞儀をしてから席に戻った彼女を見送り、私は一人戦慄していた。

 あれ、もしかして私、結構な課金をされる感じですか!? 


 ふつふつと湧いてくる「そういえば金額の上限は決めてないよね」という不安を感じながらも、いやいやさすがに常識的な課金額くらいしか出さないよねと自分に言い聞かせてくるくる働く。


 カランカラン。


 次のお客さんが来店した音に反応して振り返る。


「いらっしゃいませ! リリィのコテージ・フルールへようこそ!」


 ――まさかその不安が実現するなんてことを思わずに。


ということで、記念すべき一人目はコロッケ定食抽選会の際にもご参加いたらだいたリブレ&プリガーコンビでした!


このような形で、今後も次々と企画参加者の皆さんにご来店していただいていく感じになります!また次回をお楽しみに♪

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― 新着の感想 ―
[一言] 怯えろぉ!震えろぉ!上限を決めなかった己の浅はかさを恨みながら───スパチャを受けルルォ!!
[一言] 登場させていただいてありがとうございます! 現実だと万単位でスパチャする人がいるからね5000はたまになら常識の範囲内だと思う…? うちの子たちが楽しそうでとても嬉しいです! これからも…
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